口腔咽頭の臨床 第2版

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簡潔な解説と豊富なカラー写真・イラストにより、臨床にすぐに役立つ書とするという初版からの基本方針を踏襲しつつ、第2版では「いびきと睡眠時無呼吸症候群」「摂食嚥下障害」「構音障害」「腫瘍」が新たに章として独立。また初版発行以降の新しい知見が数多く盛り込まれた。耳鼻咽喉科医のみならず、口腔・咽頭領域に関心を持つ他科の医師や歯科医師にとっても有用なテキスト。
編集 日本口腔・咽頭科学会
発行 2009年05月判型:A4頁:224
ISBN 978-4-260-00757-3
定価 16,500円 (本体15,000円+税)
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第2版 序

 口腔・咽頭領域は古くから耳鼻咽喉科の重要な領域ですが,この領域を独立して研究する学会はありませんでした.しかし,高齢化が進むとともに口腔・咽頭領域の障害はますます増加することが予測され,また内科,皮膚科,小児科,歯科など各科との境界領域の問題もあり,1987年に日本耳鼻咽喉科学会の関連学会として日本口腔・咽頭科学会が発足しました.その発足10年目を機に同学会の編集による『口腔咽頭の臨床』の初版が1998年に発刊されました.
 その後10年がたちましたが,文字どおり医学は日進月歩で,この短い10年という間にも,私どもの口腔・咽頭領域の学問は着実に進歩し,また社会の私どもへのニーズも変わってまいりました.そこで本学会の企画委員会が中心となり『口腔咽頭の臨床』の改訂を企画し,このたび第2版を発行することとなりました.
 口腔・咽頭は生命維持の根源である「息をする」「食べる」に極めて深く関与し,また人間が人間らしく生きるためのコミュニケーションにも大切であるという認識が,この10年で強まってきています.さらに,高齢化により同領域の腫瘍性疾患も増加しています.そこで第2版では,それらの重要性を反映させ「いびきと睡眠時無呼吸症候群」,「摂食嚥下障害」,「構音障害」,「腫瘍」を新たに章として独立させました.
 編集に際しては,簡潔な解説と豊富なカラー写真・イラストによって臨床にすぐに役立つものとするという初版からの基本方針を踏襲しつつ,初版発行以降の新しい知見を盛り込むことを心がけました.幸い,各分野のエキスパートの方々に執筆をお願いしたところ快くお引き受けいただき,内容の充実した原稿をお寄せいただきました.ここに改めて深く御礼申し上げます.
 本書は耳鼻咽喉科医にとってはもちろんのこと,他科の医師や歯科医師にとっても有用なテキストとなることと思います.また,今後もさらにより良いテキストとしていくために,お気づきの点や不足している点についてご指摘をいただければ幸いです.

 2009年2月
 日本口腔・咽頭科学会理事長 山下 敏夫

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基礎編
第1章 発生と解剖
 1.口腔
 2.唾液腺
 3.咽頭
 4.扁桃
 5.周辺領域
第2章 機能と検査法
 1.口腔
 2.唾液腺
 3.咽頭
 4.扁桃

臨床編
第3章 口腔疾患
 1.舌小帯短縮症
 2.口内炎
 3.舌炎
 4.口腔潰瘍性病変
 5.HIV感染,AIDSの口腔粘膜病変
 6.口腔底膿瘍
 7.過長茎状突起症(Eagle症候群)
 8.舌痛症
 9.口臭症
 10.口内乾燥症
 11.味覚障害
 12.舌・軟口蓋麻痺
 13.歯に関連する歯肉・歯槽の疾患
第4章 唾液腺疾患
 1.耳下腺炎
 2.顎下腺炎
 3.唾石症
 4.キュットナー腫瘍
 5.線維素性唾液管炎
 6.シェーグレン症候群とミクリッツ症候群
 7.木村病
 8.唾液腺症
 9.ガマ腫(ラヌラ)
第5章 咽頭疾患
 1.咽頭炎
 2.副咽頭間隙膿瘍
 3.咽後膿瘍
 4.口腔・咽頭の難治性潰瘍
 5.咽喉頭異常感症
 6.舌咽神経痛
 7.異物
 8.咽頭の狭窄・閉鎖症
第6章 扁桃疾患
 1.アデノイド増殖症
 2.口蓋扁桃肥大
 3.急性扁桃炎
 4.慢性扁桃炎,反復性扁桃炎
 5.急性(咽頭)扁桃炎と鑑別する疾患
 6.扁桃周囲炎,扁桃周囲膿瘍
 7.扁桃病巣感染症
第7章 いびきと睡眠時無呼吸症候群
 1.成人
 2.小児
第8章 摂食嚥下障害
 1.嚥下の仕組み
 2.嚥下障害の検査と診断
 3.嚥下障害のリハビリテーション
 4.嚥下障害の手術
第9章 構音障害
 1.構音の仕組み
 2.構音障害の検査と診断
 3.構音障害のリハビリテーション
 4.構音障害の手術
第10章 腫瘍
 1.画像診断
 2.口腔(口唇・口蓋・歯肉・臼後部)の腫瘍
 3.舌良性腫瘍
 4.舌・口腔底癌
 5.耳下腺腫瘍
 6.顎下腺・舌下腺腫瘍
 7.副咽頭間隙の腫瘍
 8.上咽頭癌
 9.中咽頭癌
 10.下咽頭癌
 11.悪性リンパ腫
第11章 その他の疾患,周辺疾患
 1.唇裂・口蓋裂と耳鼻咽喉科
 2.顎関節症
 3.下顎骨骨折
 4.上顎骨骨折

和文索引
欧文索引

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見て把握するのに大変有用なテキスト
書評者: 北原 光夫 (慶應義塾大学病院 病院経営業務担当執行役員)
 日本口腔・咽頭科学会によって編集された『口腔咽頭の臨床 第2版』がこのたび出版された。初版は1998年に出版されたので,約10年ぶりの改訂となる。

 本書の第一の特徴として,まず見開き2頁を基本構成としており,左頁に解説が,右頁に写真や図表が配置されていることが挙げられる。

 また内科医として,また感染症専門医としてこのテキストを見ていくと,本書に掲載されている写真は執筆者の秘蔵のものであろうが,鮮明さから,また病変の現れ方から理解しやすい内容となっており,まさに見て把握するには大変参考になるテキストである。

 本書は基礎編と臨床編の2つに大きく分けられており,臨床編は3~11章にわたっている。臨床編の中を詳しく見ていくと,最近社会的な問題にもなっている「いびきと睡眠時無呼吸症候群」と「摂食嚥下障害」を新たな章としたことはこのテキストの利用価値を高めている。内科医としては耳鼻咽喉科領域からの睡眠時無呼吸に対するアプローチを知ることができるし,また高齢者をケアしている医師あるいは看護師にとって「摂食嚥下障害」で書かれている内容は大変有意義である。

 さらに最近の癌治療の進歩を踏まえ,本書では「腫瘍」の章も新たに設けられている。血液・腫瘍学の専門医にとって,本書はリンパ腫とその他の腫瘍との鑑別を行っていく上で大変便利な内容となっている。

 口腔と咽頭の分野において日常診療でよく遭遇するのは,当然のことながら感染症と炎症性病変である。また,内科的疾患が口腔咽頭に現れることがしばしばあり,診断に苦慮することがあるので,口内炎の項目が充実されているのは本書の使いやすさを一層特徴付けている。

 咽頭扁桃の感染症の充実も嬉しい。ことに本書では,内科医があまり見慣れない副咽頭間隙膿瘍,咽後膿瘍,扁桃周囲炎,扁桃周囲膿瘍についてまで言及されている。

 本書は将来さらに改訂されていくであろうが,その際には本書で挙げられている疾患の頻度が大まかでよいので記載されているとありがたい。また,内科医にとって必要なサルコイドーシス,レミエール(Lemierre)症候群などの解説も加えていただきたいと思う。

 いずれにせよ,本書は内科医,感染症医,腫瘍学医にとって有用な参考書である。また,開業を実践している医師にも使いやすいガイドブックである。
現時点で入手できる最高水準のテキスト
書評者: 高坂 知節 (東北文化学園大学長・耳鼻咽喉科学)
 この度,医学書院から第2版が刊行された『口腔咽頭の臨床』を手にして直感的に思ったことは,B5判からA4版に紙面が拡大するのに合わせて,内容が「小結クラス」から「大関クラス」へとレベルアップしたということであった。

 初版から10年を経過して,口腔咽頭科学を取り巻く社会的状況が大きく変化したことにも細心の注意を払いつつ,「いびきと睡眠時無呼吸症候群」,「摂食嚥下障害」,「構音障害」,「腫瘍」のテーマについて新しい章立てを行って十分に解説したことは,誠に的を射た編集方針であった。

 本書は初版当時から,いわゆる教科書の殻を破り,カラー写真とイラストを随所に盛り込んで読者の理解を助ける方針をとっていたが,この方針が見事に踏襲されるとともに,写真印刷技術の進歩により,極めて精緻なカラー写真が多数掲載されている。特に口腔咽頭粘膜の病態は,光が十分届かない狭くて深い領域のものであり,撮影技術にも高度なテクニックが求められるが,それらの困難を見事に克服している点が第2版の特徴の一つであろう。

 さらに,分担執筆の教科書にもかかわらず,執筆内容に統一感が維持されている点が第二の特徴として挙げられる。全編を通じて,疾患の定義,症状と所見,診断,鑑別診断,治療,予後と一貫した順序立てをもって記載されている。

 また,分担執筆者の範囲は,医育機関の教授や准教授・講師に限定せずに,一般病院やプライベートオフィスの第一線で臨床に当たっている専門医が14名も参加しているのが第三の特徴であろう。口腔咽頭疾患のかなりのものが大学病院以外の外来で診療されている現状を把握した見事な人選と考える。

 以上述べてきたように,第2版は初版の良き伝統を引き継ぐとともに,時代の変遷に合わせて追加すべきところはしっかりと補われているために,まれにみる完成度を備えた教科書として仕上がっている。もちろん,向後10年を見据えてさらなる進化が期待できるが,現時点では入手できる最高水準のテキストといえよう。かつて初版の執筆を担当した一人として同慶の至りである。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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