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レジデントのための腎臓病診療マニュアル 第2版

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明らかになっているevidenceを豊富に盛り込み、腎臓を専門としない内科医にとっても実地臨床で役立つ情報が盛り込まれ好評であったマニュアルの待望の改訂版(初版『レジデントのための腎疾患診療マニュアル』より改題)。慢性腎臓病(CKD)の概念を取り込み、内容を全面刷新。レジデント、総合内科専門医を目指す若手医師にとって必要な情報が精選された。さらに使い勝手が向上した腎臓病診療マニュアルの決定版。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 深川 雅史 / 吉田 裕明 / 安田 隆
発行 2012年01月判型:A5頁:536
ISBN 978-4-260-00948-5
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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  • 目次
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2版の序

 この本の初版は,実際の診療に直結する広範な内容を,病態の理解を基本にして,わかりやすく解説することを目的に,長い準備期間の末,2005年に出版された.若い執筆者による,新しい腎臓病および関連領域の教科書として,すべてを網羅しているわけではないが,逆に妙に偏っているわけでもなく,むしろ従来の教科書では扱いが少なかった領域もきちんと取り上げているところが意外と好評で,増刷を重ねることができた.もともと,内科の研修を終え,専門の勉強を始めた後期研修医以降の人たちを主な対象と考えて編集したが,熱心な学生や初期研修医にも広く読まれたようで,とても嬉しく思う.今回,出版から6年が経過したので,内容とレベルを再吟味して改訂することになった.
 改訂にあたっては,入門書としての初版のシンプルさと明快さを失わないことを第一とし,極端に分厚くなることを避け,レイアウトも見やすくなるように努めた.
 さて,読者の中には,タイトルが,「腎疾患」から「腎臓病」にひそかに変わったことに気づいた人もいるかもしれない.この本は,わが国で最初に「慢性腎臓病」という用語を教科書レベルで使った本の一つであった.しかしながら,初版はちょうど過渡期にあたっていたので,本の中でも腎不全の病期分類が複数あるなど,統一が十分ではなかったので,その点は可能な限り改善させたつもりである.
 この本の初版は,同じ時期に米国のテネシー州ナッシュビルで勉強していた深川,吉田,安田の3人が,若手の良い仲間の力を借りて,作り上げたものである.当時は若手だった執筆者も,その多くは,この分野の中堅以上として中心的に活躍する時代になった.そこで,実際の読者の知りたいことからあまり乖離しないように,より若い執筆者にお願いしたのが,この改訂版のもう一つの特徴である.
 近い将来,読者であった若い人たちが,さらに興味をもって,すくすくと成長し,この本の改訂に力を貸してもらえる日が来ることを夢見ている.
 最後に,初版の構想時より粘り強く編集につきあってくださった,医学書院の大橋尚彦氏に,あらためて感謝したい.

 2011年 盛夏遠くMusic Rowを憶いつつ
 深川 雅史,吉田 裕明,安田 隆

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1章 腎尿路疾患患者への一般的アプローチ
 1.エビデンスに基づいたアプローチ
  A 腎臓病の特徴
  B 腎臓病診断のプロセス
  C 臨床研究の活かし方,作り方
  D エビデンスレベルとガイドラインの推奨度
  E 腎臓に関するコンサルトの仕方・答え方
 2.主要症候と鑑別診断への手がかり
  A 蛋白尿
  B 血尿
  C 浮腫
  D 細胞外液量の減少
  E 多尿
  F 乏尿・無尿
  G 腎機能障害
  H 排尿障害
  I 腎尿路に関連する痛み
 3.腎尿路の検査―その選択,実際と解釈
  A 尿一般検査からわかること
  B 血液生化学検査からわかること
  C 尿生化学検査からわかること
  D 腎機能検査からわかること
  E 画像診断からわかること
  F 腎生検からわかること
2章 水電解質・酸塩基平衡異常患者へのアプローチ
 1.水代謝・Na濃度異常の診断と治療
 2.輸液(水電解質輸液)の基本
 3.K濃度異常の診断と治療
 4.酸塩基平衡異常の診断と治療
 5.Ca・P・Mg濃度異常の診断と治療
3章 高血圧患者へのアプローチ
4章 慢性腎臓病(CKD)患者へのアプローチ
 1.CKDのとらえ方
 2.CKDにおける腎障害の発症と進展機序
 3.CKDの症候と合併症
 4.CKDの管理
5章 AKI(Acute Kidney Injury)患者へのアプローチ
6章 血液浄化法の原理と適応
 1.末期腎不全への血液浄化法
 2.腎疾患関連診療における特殊な血液浄化療法
7章 維持透析患者へのアプローチ
8章 腎移植へのアプローチ
9章 糸球体疾患患者へのアプローチ
 1.糸球体疾患を疑うとき,疑ったら
 2.ネフローゼ症候群の診断と治療
 3.慢性腎炎症候群の診断と治療
 4.急速進行性腎炎症候群の診断と治療
 5.急性腎炎症候群の診断と治療
10章 尿細管・間質疾患患者へのアプローチ
 1.尿細管・間質疾患を疑うとき,疑ったら
 2.尿細管機能異常をきたす疾患の診断と治療
 3.尿細管間質性腎炎の診断と治療
11章 腎血管系疾患患者へのアプローチ
 1.腎血管系疾患を疑うとき,疑ったら
 2.動脈硬化に基づく疾患
 3.腎血管内膜障害に基づく疾患
 4.血管炎に基づく疾患
12章 よくみられる二次性腎疾患患者へのアプローチ
 1.はじめに
 2.糖尿病に伴う腎疾患
 3.膠原病に伴う腎疾患
 4.腫瘍性疾患に伴う腎疾患
 5.感染症に伴う腎疾患
 6.薬剤による腎障害
13章 嚢胞性腎疾患患者へのアプローチ
14章 尿路感染症患者へのアプローチ
15章 尿路結石患者へのアプローチ
16章 小児の腎尿路疾患患者へのアプローチ
 1.総論
 2.各論
17章 腎障害をもつ患者の妊娠,出産へのアプローチ
18章 腎機能障害者に対する薬物投与
19章 腎臓病患者の栄養

索引

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腎臓学の専門書として好評だった初版をより充実させた第2版
書評者: 平方 秀樹 (福岡赤十字病院副院長)
 腎臓は体液の恒常性維持を司る唯一の臓器で,腎臓内科学の分野で最も面白いのは,体液バランス(水,ナトリウム,カリウム,細胞外液,酸塩基平衡など)異常を解釈し,その是正治療にあたることで,多くの腎臓専門医の最初の動機となってきた。腎臓内科学の教科書の評価は,この分野をいかに記述しているかで決まる。本書は初版でも非常に好評であった。今回の改訂版でも,最も多くのページ数を費やしている。机上で,現場で繰り返して眼を通して欲しい。この分野を修めることは内科学の基本となる。

 慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease : CKD)の概念が提唱されて10年が経過し,わが国でも広く定着してきた。すなわち,CKDの管理は,慢性腎不全の進行を遅らせて透析導入・腎移植を防ぐことだけでなく,高率に併発する心血管イベントのリスクを軽減することも目標となる。これまで以上に早い時期からCKDに気付き,腎障害だけでなく心血管合併症にも対応してゆくことが重要で,このことが腎臓専門医だけでなく,非専門医や一般の方々に広く啓発されてきた。近年,KDIGO(Kidney Disease : Improving Global Outcomes)は,これまでの分類にタンパク尿(アルブミン尿)の程度を組み入れ,ステージ3を3aと3bに分け,より精密な分類とし,さらには,CKDの原因疾患をも考慮して対処するように改訂した。このKDIGOによる新分類は,CKDの意義の啓発という第一段階を経て,より確実な治療介入を要求する次の段階に進んだことを意味している。このことが本改訂版で強調されている。

 しかしながら,腎機能の表現は複雑化し,非専門医ならずとも混乱している。腎機能を表す指標は何か? 血清クレアチニン値,Cockcroft-Gault式を含めたクレアチニン・クリアランス,eGFR,シスタチンCなど,……。本書でも妊娠と腎,薬剤投与,多発性嚢胞腎などの項では混乱がみてとれる。今後,解決すべき問題であろう。

 次に注目される大きな特徴は糖尿病性腎症の項である。第12章「よくみられる二次性腎疾患患者へのアプローチ」の最初に取り上げられている。そして,アプローチのポイントにいわく,「糖尿病性腎症の治療は,進行を抑制するのみでなく,寛解・退縮を目標とする」。これは素晴らしい! この記述を支えるエビデンスはわが国からも発せられた。腎臓専門医にも,このメッセージの達成が課せられ,それには専門医間の連携が必須で,本書の対象となる若いレジデントも参加しなければならない。

 IgA腎症の項はより充実してきた。最も代表的な糸球体腎炎に対する地道な取り組みの積み重ねが,ようやく標準的治療として集約されてきた。しかし,まだ確固たるエビデンスが必要である。本書がリサーチクエスチョンのきっかけとして役立つのではないかと期待される。

 第2版となる本書では,初版で序盤に「一般的アプローチ」にまとめて収載していた「どういうときに腎尿路疾患を疑うか」は,各論の冒頭にまとめるスタイルに変更され,より理解しやすい内容となった。分量も大きく変更されずに非常に充実した第2版となった。

 筆者が卒業したころには,本書のような日本語で書かれた腎臓学の専門書はなかった。辞書を傍らに,英語の教科書をポツポツと読んだものである。充実した専門書を日本語でなんなく読み進める意義は極めて大きい。本書はさらに版を重ねて進化していって欲しい医学書の一つである。

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