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専門医をめざす人の精神医学 第2版

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精神科医としてのminimum requirementsを講座担当者会議が示したスタンダードかつ最も信頼に足るテキストの全面改訂版。本邦におけるKaplanを目指し,専門医が修得すべき事項,専門医を志す研修医が学ぶべき内容に重点を置いた。来るべき専門医試験のためにも,全国の精神科専門医・研修医の拠り所として必携の書。
監修 精神医学講座担当者会議
編集 山内 俊雄 / 小島 卓也 / 倉知 正佳
編集協力 広瀬 徹也 / 丹羽 真一 / 神庭 重信
発行 2004年08月判型:B5頁:752
ISBN 978-4-260-11894-1
定価 19,800円 (本体18,000円+税)
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  • 目次
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1 精神医学を学ぶための基本的な知識と態度
2 精神症状とその捉え方
3 診断および治療の進め方
4 症状性を含む器質性精神障害
5 精神作用物質使用による精神および行動の障害
6 てんかん
7 心理・生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
8 統合失調症,統合失調型障害および妄想性障害
9 気分(感情)障害
10 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害
11 成人の人格障害および行動の障害
12 精神遅滞および心理的発達の障害
13 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
14 乳幼児,児童および青年期の精神医学的諸問題
15 コンサルテーション・リエゾン精神医学,サイコオンコロジー
16 精神科救急
17 自殺の問題
18 生物学的治療
19 精神療法
20 社会的治療,社会復帰を援助する治療
和文索引
欧文索引

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精神科専門医が習得すべきminimum requirementを明示
書評者: 山口 成良 (松原病院院長,金沢大名誉教授)
 1998年に西園・山口・岩崎・三好編集の「専門医のための精神医学」第1版が発行されてから6年にして,このたび第2版が刊行された。名前も「専門医をめざす人の精神医学」と改められ,執筆者も第1版の54名から115名と倍増してわが国の精神医学の各分野の第一人者を配している。頁数も索引を除いて521頁から752頁と大部のものとなり,一読するのに約30時間を要した。

 各版の序文にあるように,第1版では精神科医としての専門的知識・技能を体得していただくことを願って「専門医のための」という言葉を使ったが,今回の第2版では専門医として習得すべきminimum requirementsを明示し,精神科研修医の学ぶべき指針を示すようにと意図して編集されたもので,「専門医をめざす人」たちの必携の書として発行されたものである。

 内容は第1版では,従来の教科書のように第1章総論,第2章診断および治療計画,第3章治療,第4章各論としてあったが,第2版では20に章立てしており,1.精神医学を学ぶための基本的な知識と態度,2.精神症状とその捉え方,3.診断および治療の進め方,など精神科専門医をめざす人たちの態度の導入に,250頁という三分の一の紙数を使っているところからも,精神科専門医としての素養をしっかり身につけてほしいという編集者の並々ならぬ意図が切実に感じられる。

 4.症状性を含む器質性精神障害から,13.小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害までは,大体ICD―10の疾患分類に従った各論的記載であり,次いで14.乳幼児,児童および青年期の精神医学的諸問題,15.コンサルテーション・リエゾン精神医学,サイコオンコロジー,16.精神科救急,17.自殺の問題,18.生物学的治療,19.精神療法,20.社会的治療,社会復帰を援助する治療と続き,専門医として習得すべき知識・技能のminimum requirementsを網羅している。

 さらに新しい項目立てとして,精神医学を理解するための神経科学,精神医学を理解するための認知行動科学,脳死判定基準,サイコオンコロジー,成年後見制度,介護保険とケアマネジメントなどがあり,また定型・非定型抗精神病薬,性同一性障害の項では詳しい説明がなされており,精神医学・医療における時代の趨勢を読み取ることができる。

 毎日の忙しい診療の終ったあとで一読するのに通算して1週間以上を要したが,各項は要を得て簡潔に書かれており,理解しやすく,非常に勉強になった。日本精神神経学会でも長年の懸案であった精神科専門医認定試験を行うことになった今日,この第2版が発行されたことは甚だ時宜を得たものであり,専門医をめざす人のみならず,精神科医としての経験の深い方にも,生涯学習のための必読の書としてお奨めしたい。

専門医にも役立つ精神医学のエンサイクロペディア
書評者: 秋元 波留夫 (金沢大名誉教授)
 本書は,1998年,全国の大学で精神医学講座を担当する教授諸君の企画,監修で出版された『専門医のための精神医学』の改訂第2版である。題名が『専門医をめざす人の精神医学』と改められている。日本精神神経学の長年の懸案であった精神科専門医制度がいよいよ2005年から実施されることになり,専門医をめざす人は学会が規定するところの「精神科専門医認定試験」を受験しなければならないことになった。この改訂版はこの画期的ともいうべきわが国の精神科専門医制度の出発にそなえて,精神科専門医として,クライエントから信頼されるに足る人格,診療技能の向上に資するための拠りどころとなるマニュフェストを意図して編纂されたものであり,単なる教科書,手引き書,minimum requirementsではない。

 この本の内容は,1.精神医学を学ぶための基本的な知識と態度,2.精神症状とその捉え方,3.診断および治療の進め方,4.症状性を含む器質性精神障害,5.精神作用物質使用による精神および行動の障害,6.てんかん,7.心理・生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群,8.統合失調症,統合失調型障害および妄想性障害,9.気分(感情)障害,10.神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害,11.成人の人格障害および行動の障害,12.精神遅滞および心理的発達の障害,13.小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害,14.乳幼児,児童および青年期の精神医学的諸問題,15.コンサルテーション・リエゾン精神医学,サイコオンコロジー,16.精神科救急,17.自殺の問題,18.生物学的治療,19.精神療法,20.社会的治療,社会復帰を援助する治療,の20章からなり,752頁の大冊である。執筆者も115人という多数にのぼり,医学生用の教科書とちがって,エンサイクロペディアの観がある。それだけに,精神医学・医療の現状を批判し,未来を展望する主体的な視点に乏しいのがいささか物足りない。しかし,それはこの本の欠点ではない。これまできわめて不備であった精神科卒後臨床研修制度が改善され,2004年度から精神科の研修が必須となり,精神科卒後教育の整備充実が求められているが,この本はそのためにも役立つにちがいない。

 いまわが国で求められているのは,さまざまなスチグマと差別の横溢する社会に生きている精神を病む人たちへの医学的援助者としての自覚をもつ精神科専門医である。日本精神神経学会の専門医制度がそのために役立つようになることを私は期待するが,この「専門医をめざす人の精神医学」は「めざす人」だけではなく,精神科専門医の生涯学習に役立つために,さらに改訂され,版を重ねることを期待したい。

これから専門医をめざす精神科医には全体を熟読してほしい
書評者: 仙波 純一 (放送大学教授)
 いよいよ平成17年から精神科専門医制度がはじまる。医師国家試験以来,資格試験を受けるなどということをしたことがない。長く精神科医をやっていたおかげで,移行措置でよいとのこと。それでもケースレポートを3例提出して,口頭試問を受けなければならない。ケースレポートといっても,毎日の診察に追われて,簡単な退院サマリーを書き上げるので精一杯である。最近はDSMとかICDで診断名をつけなければいけないようで,神経症性うつ病などという病名はなくなったらしい。パニック障害とパニック発作の区別もちょっと曖昧である。しかし,ケースレポートともなればちゃんと正確な知識をもとに書かなければならない。細かい知識でけっこう思い違いをしている可能性もある。それを口頭試問でつつかれてはメンツにかかわる。これはもう一度,医学生に返った(若返った?)つもりで教科書を読み返すしかない。とはいえ,医学生向けの教科書ではいくら何でも簡単すぎる。だてではないが臨床的な知識はひよっこの精神科医の比ではない(はず?)。多少厚くてもいい。これだけ知っていれば専門医としてはまあ合格というレベルの教科書がないものか。

◆求めていた教科書ができた

 これは私と同じように卒後20余年を経た精神科勤務医の独り言である。今回出版された「専門医をめざす人の精神医学 第2版」は,まさしく時宜を得た教科書である。全体のスタイルは精神医学の典型的な教科書になっているが,精神科医としてあまりにも当たり前のことは省略されている。かわりに基礎的な面では,神経科学の最新の所見や,最近よく耳にする「認知行動科学」についての記述が充実している。中身はけっこうむずかしいが,脳の働きもここまでわかってきているのかと感心させられる。臨床面では精神科救急,リエゾン精神医学,電気けいれん療法の実際,各種の精神療法,社会的治療やリハビリテーションについての詳しい記述がある。全体に病気の症状論よりも,治療についての記述に重点が置かれている。これは読者がすでにいちおうの診断学を修得していることが前提となっているためであろう。とくに精神療法の部分はじっくり読むと,忙しい診療の中で忘れがちな医師―患者関係について反省させられること大である。

 執筆者のほとんどは講座担当者で,若手の教授から名誉教授の諸先生まで得意な分野を担当されている。よく読むと,若手の教授は新しい知識を意気込んで書いておられ,大先輩の先生はじっくりと大局的な書き方をされて重厚である。これだけの分担執筆者の記述を調整することになった編集担当の先生方はさぞかし大変であったろう。結果としては記述の詳しさにでこぼこがなく,実に読みやすい。適度なサイズの活字でレイアウトも美しい。いかにも最近の教科書という印象である。

 多少の要望をあげておく。わが国には児童精神科医が少ないとはいえ,もう少し児童精神医学の部分を増やしていただきたい。また,教科書は理想を書くものであるかもしれないが,わが国で慣習的に行われている診断や治療法についての批判的な視点もほしかった。また,辞書代わりにも使える教科書なのであるから,重要な用語には必ず英文を併記してもらい,英文索引を充実してもらいたかった。治療法はできればevidence―basedな記述をお願いしたかった。しかし,これはわが国では時期尚早であるかもしれない。

◆すべての精神科医に推薦したい

 これから専門医をめざす若手の精神科医は,私たちよりもずっとすらすらとこの教科書を読破できるであろう。彼らには全体を熟読してもらいたい。ところで私が個人的に大変感銘を受けた部分は,50ページ余りある「精神医学の基本」である。これを読むと,日常雑然とたまっていた臨床的な知識がすっと整理され,精神医学という太い川に乗って流れていくようなすがすがしい気持ちになれるのである。これからの精神科専門医をめざすすべての精神科医に,老年(?),若手を問わず推薦したい。私もこれから勉強します。

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