はしがき
今回の改訂では,本書を「第1部 看護技術概論」「第2部 16領域の看護技術」の2部構成とした。第1部では看護技術の4つの基本原則とその優先順位について説明を試み,第2部では看護技術を16の領域に分けて説明している。
この16領域の区分は,「新人看護職員の臨床実践能力の向上に関する検討会」(厚生労働省)が発表した「新人看護職員研修到達目標」の「看護技術についての到達目標」,および「看護基礎教育の充実に関する検討会」(厚生労働省)により発表された「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」の「看護師教育の技術項目と卒業時の到達度(案)」で示されている,13領域の看護技術に準拠したものである。
本書では,上記の13領域をそれぞれ13の章とし,さらに,そこには含まれないものの看護師が行う技術として「死の看取りの技術」,「侵襲的処置の介助の技術」について,それぞれ章を加えた。また「看護基礎教育の充実に関する検討会報告書」のなかに,基礎看護学における学習の留意点として,「コミュニケーション,フィジカルアセスメントを強化する内容とする」という一文が含まれていることをふまえ,あらたに「患者・家族とのコミュニケーション」の章をたてた。
このことに代表されるように,本書を「学内の実習室で行われている基礎看護技術」と「臨床で実践されている基礎看護技術」とのかけ橋とすることを,目次の企画の段階から最終校正までのすべての段階においてつねに頭におきながら,精一杯のくふうを重ねてきたつもりである。改訂にあたっては,それぞれの技術についてできるだけ最新の方法を紹介し,その根拠を示すように心がけた。
とはいうものの,限られた紙面でもあり,まだ実際の臨床現場での看護実践をほとんど知らない初学者向けの教科書としての本書の特徴も加味しなければならず,実際の臨床現場で行われている技術上のくふうや,看護の対象となる一人ひとりの患者や家族に合わせたくふうについてまでは,十分にふれることができているとはいいがたい。また,看護の対象は個人や家族だけではなく,地域やグループといったコミュニティにも及ぶということは,われわれ著者も十分に理解はしているが,その実際の介入技術の基本に関しては,本書本版では全く言及できていない。
しかしながら,ここではっきりと述べておきたいことは,なにも看護技術に限らず,「技術」と名のつくもののすべてが,社会や時代の要請をはじめ,関連する技術や道具の発展,あるいは信頼性や妥当性のあるきっちりとした研究の成果によって得られた最新のエビデンスの確立といったものを要因として,日ごとにどんどんと変化していくという特性をもつものだということである。学生諸子には,そのことを自分のなかでつねに肝に銘じつつ,本書を入り口として,問題意識をもった積極的な学びをぜひ行ってほしい。
本書を通じて,みずから問題意識を発見し,そのことを看護の対象となる人々のために探求し続ける姿勢をこそもっともたいせつにする学生たちを育てたいと願っている。
そのことを誰も知らなかったり評価してくれないような状況にあったとしても,決して手を抜かずに,自分のケアする対象者に必要な技術に関して問題意識をもち続け,そのことに関する最新の情報をあらゆる手段をもって収集し,その成果を自分の実践のくふうのなかにいかしていく姿勢がとてもたいせつである。このような姿勢や能力のことを,「self-directed learning(セルフ・ディレクティッド・ラーニング)」とよぶが,本書では,そのことを総論のなかでも,また16章ある各論のすべてのなかでも,くり返し言葉や伝えかたをかえて,強調して述べた。
学生諸子には,このような「看護技術に対する姿勢」こそが,看護師,助産師,その他あらゆる臨床現場における援助者としての将来の自分の成長を助けるということを覚えていてほしい。
そのために,この「基礎看護技術II」という教科書が少しでも役に立つことができるとすれば,今回の改訂にかかわった著者として,また責任編集者として,幸せのきわみである。
とはいえ,本書がまだまだ改善の余地のあることは,責任編集者や編集部はもちろんのこと,各著者も十分に承知している。今後も本書の内容についてお気づきの点があれば,ご指導,ご教示いただければ幸いである。
2008年11月
著者を代表して
藤崎 郁