はしがき
発刊にあたって
少子・高齢社会の到来によって,高齢者や障害者の在宅ケアニーズに対応した訪問看護サービスの拡充や人々のセルフケア能力をたかめる教育的なはたらきかけの必要性がさらにたかまっている。
人々が健康で生きがいをもち,安心して生涯を過ごせるために,国は高齢者保健福祉推進10か年計画(ゴールドプラン)を策定し,その施策を推進している。訪問看護ステーションの活動も活発化しているなど,保健・医療・福祉の分野でさまざまな改革の動きがみられ,とくに看護に大きな期待が寄せられている。
このような状況をふまえて,看護基礎教育のカリキュラムが改正され,看護専門分野の7領域の1つとして「在宅看護論」が加えられた。
今後,ますます増加する在宅ケアニーズに対応しうるため,また施設内・施設外を問わず,看護の援助を必要とするすべての人々に対して看護機能を果たすための学びは必須である。
地域看護とは人々の地域社会での生活を基盤として,健康への回復,健康の保持・増進のために必要な看護を,その地域内の保健医療福祉機関に属する看護職がそれぞれの役割を担いつつ協力して推進することである。それは単に施設外での実践活動のみでなく,施設内の看護から継続して行う組織的・計画的に実践されるダイナミックな活動である。
本書では地域保健医療福祉活動の全体像,地域看護の概念枠組み,地域看護の行われる場についての理解を前提として,在宅看護についてまとめた。
まず在宅看護は地域看護の一分野であり,在宅ケアを支える重要なはたらきとして位置づけた。そして在宅看護独自の機能はなにかを研究的に取り組めるよう,また幅広い,かつ緻密な観察力,的確な判断力とその実践に必要な方法・技術を学び,さらに新たに,それらを創造し開拓していくことができるように配慮した。
本書が看護学生の参考書として,地域看護およびその一分野である在宅看護の理解に,そして地域で生活し療養している人々に対する看護を学ぶために活用していただければ幸いである。さらに在宅看護に携わる看護職の方々の看護実践にも役だてればと願っている。
1997年1月
第3版の序
少子・高齢社会の進展とともに,介護保険法の施行・改正や医療法の改正など,地域や在宅で療養者の生活や介護を支えていくための諸制度が制定・整備されてきた。2007年の医療法の改正においては,「医療機能の分化・連携の推進による切れ目のない医療の提供」「在宅医療の充実による患者の生活の質(QOL)の向上」が厚生労働省より掲げられており,在宅看護はますます重要となってきている。
また,看護教育においても2008年にカリキュラムが改正され「在宅看護論」は,あらたに設けられた「統合分野」に位置づけられた。
これらの状況をうけて,このたびの改訂では構成・内容を全面的に見なおし,新カリキュラムの趣旨に即した内容に,また,統合的・発展的に学習できるように全文をあらたに書きおこしている。
この第3版では,構成を大きく2つに分け,第1章から第4章までを総論編,第5・6章を実践編とした。
総論編は,在宅看護を展開するうえで必要な知識を学習するものとした。第1章では,在宅看護の目的と在宅看護における看護師の役割について,事例をあげて考察しながら学習できる内容とした。第2章では,療養者に関する諸データと,家族を理解するために必要な知識を掲げ,在宅看護の対象者について学習できる内容とした。第3章では,在宅看護に関する諸制度の知識をまとめるとともに,他国の在宅看護制度を紹介している。第4章では,在宅看護過程の展開や他職種との連携など,在宅看護を展開していくために必要な知識を学習できる内容とした。
実践編では,在宅で看護を提供するにあたってより実践的な知識をまとめるとともに,在宅看護の流れを学習できる内容とした。第5章では,基礎看護技術を学習済みという前提で,在宅でとくに必要とされる看護技術についてまとめた。第6章では,在宅で看護を提供していく流れを,特徴的な9事例より学ぶものとした。
なお,在宅において看護を必要とする人々についての表現は,「患者」「療養者」「利用者」「対象者」などがあるが,本書では「療養者」を基本とした。
今回の改訂によって,在宅看護に関する学習がより効果的に行われ,その知識とともに在宅で看護を提供することへのイメージを読者にもってもらえるよう望むものである。ご活用いただき,読者諸賢の忌憚のないご意見とご叱正をいただければ幸いである。
2008年12月
著者ら