そこが知りたい!
クリニカルパス

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日本クリニカルパス学会のHP上で公開されているメーリングリストをもとに,みんながまさに知りたかったパスのあれこれを,ぎゅっと凝縮した1冊。今,パスで悩んでいる多くの医療従事者を,きっとよい方向に導いてくれる先駆者たちの知恵を満載。今後の病院経営を考える管理者,医療行政に携わる研究者も,ぜひ読んでおきたい書。
監修 日本クリニカルパス学会
編集 日本クリニカルパス学会企画委員会
編集委員 山中 英治 / 副島 秀久 / 今田 光一 / 岡田 晋吾
発行 2004年11月判型:B5頁:172
ISBN 978-4-260-12729-5
定価 2,750円 (本体2,500円+税)
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  • 目次
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第1章 クリニカルパスの導入
第2章 クリニカルパスと記録
第3章 クリニカルパスと診療報酬
第4章 クリニカルパスと電子化
第5章 クリニカルパスと入院診療計画書
第6章 クリニカルパスと薬剤
第7章 クリニカルパスの効果
第8章 クリニカルパス委員会の設置
第9章 バリアンス分析とアウトカム設定
第10章 クリニカルパスのフォーマット
第11章 ベンチマークと臨床指標
索引

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クリニカルパスに取り組み,一層発展させるための必読の書
書評者: 大道 久 (日大教授・医療管理学)
 近年,クリニカルパスほど診療の現場で大いに受け入れられ,急速に普及したマネジメント・ツールはないといってよいだろう。専ら医師の指示待ちの医療から,全職種による計画的・組織的診療への移行を促進させた功績はきわめて大きいと言わなければならない。本書は,そのクリニカルパスの検討と普及に主導的に取り組んできた「日本クリニカルパス学会」が,発足当初から運営してきたメーリングリストにおいて,全国の病院からの問い合わせや意見交換の中から,医療の質の向上や合理的な医療を実施する上で重要と思われる問題や課題について編集・整理したものであるという。

 Q and A形式で取りまとめられた内容は,パス導入時の院長のリーダシップの役割からはじまり,医師の積極的関与に向けた対応の仕方や院内意識改革の具体的方策へと進み,全病院的な導入手順,教育・研修の実践と,導入当初の基本的な課題にどう対応するかが,きわめて具体的かつ苦労した経験に基づいた説得力ある文脈で語られている。特に,医師側の抵抗をどのように受け止めて新たな院内体制を構築するか難渋している病院には,大いに役に立つものと思われる。

 本書はパスの作成手順とパス大会など病院としての対応について言及はしているが,パスの事例集ではないので,個々の疾患への適用について検討しようとする場合は別の対応が必要である。しかし,本書はパスの導入に伴う医師・看護師等が記載する診療録をはじめとする医療記録のあり方を解説し,より合理的な記録方式や電子カルテへの発展の方向を示しているという意味でむしろ意義が大きいと言える。また,パスの電子化にも紙面を割き,診療報酬や入院診療計画書との関係にも明確な方向を示しており,改めてパスの医療における波及効果が大きいことをうかがい知ることができる。そして,バリアンス分析とアウトカムの設定,ベンチマークと臨床指標など,医療の質評価としてのツールの有用性を示し,クリニカルパスの今後の発展の方向も示唆している。

 さまざまな制度改革や医療費抑制で,診療の現場においては有効で合理的なマネジメント手法は必須となっている。クリニカルパスの有効性は誰もが認めるところであり,いまやなりゆき任せの診療手順は,医療経営の観点のみならず受療者の立場からも容認できない状況となりつつある。本書は,これからクリニカルパスを導入しようとする病院のみならず,さまざまな取り組みの経験を踏まえて一層の発展を期するための必読の書といえるだろう。

DPCに対応した医療にパスは必須とも言える
書評者: 藤村 重文 (東北厚生年金病院院長/第5回日本クリニカルパス学会学術集会会長)
 第5回日本クリニカルパス学会学術集会が平成16年11月19日(金),20日(土)の2日間にわたって仙台市で開催され,2,737名が参会した。現在の本学会の役割を象徴しているかのようにいずれの会場でも活発に意見交換などがされ,参加者の多くを占める若い人々の熱気で溢れていた。会場の仙台国際センターの一角に設けられた書籍展示コーナーには医学書やパス関係の新刊書などが多く展示され,そこもたくさんの人々で混み合っていた。私もそこで日野原重明先生の著書の一つ,「60歳からの旅は人生の栄養剤」とともに日本クリニカルパス学会企画委員会編集の「そこが知りたい!クリニカルパス」を購入した。以下,本書についての私の所感を述べたい。

 日本クリニカルパス学会はご承知のように,患者ケアの質的向上や医療の効率化と安全性を基本理念とするクリニカルパスの普及をはかることを主旨として設立された。年に一度開催される全国規模の学術集会は回を重ねるごとに参会者数が年々右肩上がりに増加しており,パスに対する関心と学術集会から得られる成果が医療関係者にとって如何に大きいものであるかが窺われる。言うまでもなく,今日のわが国の保険医療において最も重要なことは,ひとつに患者の信頼を得ながら質の高い安全な医療を提供することであり,同時に高い満足度とともに効率性が要求されている。

 わが国の現在の医療状況の中で最も必要な実際的課題のひとつが,DPCに対応した医療を提供することであるが,それにはパスが必須ともいえよう。パスは医療の質をより向上させるためのひとつのツールである。DPCばかりでなく,チーム医療,インフォームドコンセント,医療の効率化や標準化,医療ミスの防止などに貢献し,医療の経験とEBMを加味してチームで作成されるものである。パスはそれぞれの病院において色々な特有な条件をも加味して,最も効果的なものを作ることが必要である。

 本書はパスに関する理論と実践に広い知識と多くの経験を有する編者の方々によって作成されている。パスをこれから作るという場合ばかりでなく,現在パスを使用していながら,なお多くの問題を抱えている場合などにも対応しており,読者の疑問に対する答えがわかりやすく返ってくるように構成されている。

 つまり,本書は病院管理者,医師,看護師,薬剤師,臨床検査技師,放射線技師,リハビリテーション関係者,事務など,すべての医療関係者が関与する必要があるパスについてのノウハウが効率よく網羅されている。医療関係者にとって座右の書のひとつになるであろう。

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