PT・OTのための
脳画像のみかたと神経所見
[ハイブリッドCD-ROM付]

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脳血管障害,頭部外傷,頭蓋内腫瘍のなかでも特にPT・OTが遭遇することの多い脳血管障害を重点的に取り上げた自学自習書。学生や若手PT・OTが画像の読影力を養い,脳内の変化と症状の関連を理解することを目的とし,CDによる問題演習方式を採用。今後いっそう重要になるであろう,症状や経過を予測できる力を身に付けるための新しい参考書。
森 惟明 / 鶴見 隆正
発行 2004年04月判型:B5頁:128
ISBN 978-4-260-24424-4
定価 5,280円 (本体4,800円+税)
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  • 目次
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I 脳神経疾患のみかた
 1. 脳神経疾患と画像
 2. 脳画像をみるのに役立つ解剖知識
 3. 脳画像のみかた
 4. 神経所見のつかみかた
II 脳神経疾患と症例
 5. CD-ROMで症例をみるまえに
 6. 脳血管障害(脳卒中)
 7. 頭部外傷(脳外傷)
 8. 頭蓋内腫瘍(脳腫瘍)
 9. その他の神経疾患
III 脳神経疾患の治療と理学・作業療法
 10. 脳神経疾患へのアプローチ
付録〔参考文献/知っておきたい略語・欧文表記〕
索引
付録ハイブリッドCD-ROM操作ガイド

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脳神経疾患を学ぶすべての医療者に役立つ
書評者: 辻下 守弘 (広島県立保健福祉大助教授・理学療法学)
◆臨床的推論の過程で必要になる知識

 理学療法士・作業療法士(PT・OT)は,リハビリテーション医療の専門家として高いレベルのClinical Reasoning(臨床的推論)が求められている。特に,脳卒中を中心とした脳神経疾患は,PT・OTが治療対象とする頻度が最も高く,臨床的推論の過程で脳神経疾患の病態に対する高度な知識を備えておくことが必要となる。本書は,そのような要望に応えて,高名な脳神経外科医でありPT・OT教育にも尽力されてきた森惟明先生と脳神経疾患に対する理学療法のエキスパートである鶴見隆正先生が共同執筆された絶好の教科書である。

◆効果的な学習のための工夫が随所に

 脳神経疾患の病態を理解するためには,CTやMRIによる数多くの脳神経画像とその所見や障害像を照らし合わせて反復学習することが大切である。本書では,50症例という豊富な脳神経画像について,画像所見から症状や障害像までが詳細に解説されている。また,付録のCD―ROMには,本書に掲載されている全症例の画像が収録されており,Q&A形式でそれらを閲覧できるのが特徴である。まずは,本書全体を通読した後に,CD―ROMのQ&A形式を使って復習すれば効果的な反復学習が可能となるであろう。

 さて,本書は,大きく分けると3部構成となっている。

 第1部の「脳神経疾患のみかた」では,脳神経疾患に対する画像診断の歴史からはじまり,画像理解に役立つ脳神経の解剖学と基本的な画像のみかた,そして脳神経疾患の症状について,ポイントを整理してわかりやすく解説されている。

 第2部の「脳神経疾患と症例」が本書の核心であり,脳血管障害,頭部外傷,頭蓋内腫瘍,そしてその他の疾患に分けて書かれている。特に,PT・OTが遭遇する頻度の高い脳血管障害については,脳出血9例,くも膜下出血7例,脳動静脈奇形6例,脳梗塞14例,そしてもやもや病3例の合計39例もの症例が紹介されている。各症例については,鍵となるCTやMRIの画像あるいはMRA(磁気共鳴血管撮影)や脳血管撮影像が掲載され,それらの画像所見,関連事項,医学的治療の内容,そして理学・作業療法のポイントまでが詳しく解説されている。さらに,重症度分類や診断基準については「解説」欄,関連する重要事項については「BOX」欄や「知識の整理Q&A」欄が設けられ,学習を進める上での疑問を本書だけで解決することができる。

 第3部の「脳神経疾患の治療と理学・作業療法」では,主に脳卒中の病期別理学・作業療法アプローチが評価ポイントも含めてコンパクトに整理されていながらも,重要なポイントは網羅されている。

 さらに,各章の冒頭には「知っておきたい基本事項」欄も設けられ,学習すべき重要事項がまとめられているなど,随所に学習を促す工夫が盛り込まれており,著者らのPT・OT教育に対する熱い思いが託された教科書となっている。本書は,PT・OTとその学生だけでなく,すべての医療者に役立つ内容であり,脳神経疾患の学習に活用されることを強く推奨したい。
理学療法士・作業療法士が神経画像に親しみを持って学べる
書評者: 近藤 敏 (広島県立保健福祉大教授・作業療法学)
◆学ぶ側の視点で記述

 本書は,脳神経外科医とセラピストの協働によるものであり,名実ともに理学・作業療法士向けに書かれたもので,CTやMRIを中心とした脳画像のみかたをコンパクトにまとめた書である。言うまでもなく,理学・作業療法士の役割は,神経疾患を直接診断するのではなく,疾患に伴う障害を評価し,理学・作業療法計画を立案することにある。この点について,著者らは理学・作業療法士が日常接する患者の多くは,脳卒中や脳腫瘍など脳の限局性器質性病変による障害を呈しており,画像と神経所見が一致することが多いため,患者の評価と治療計画に画像が大いに役立つとの見解を述べている。

 本書を一読してみて,CTやMRIの画像のみが突出して述べられているわけではなく,神経解剖,脳神経疾患の基本的事項,CTやMRIの画像と神経所見,治療,理学・作業療法のポイントなどが関連づけられて説明されていること,さらにCD―ROMを活用し,症例がQ & A形式で学べるように配慮されており,学ぶ側の視点で書かれているといった特徴があると思われた。

◆神経解剖や画像のみかたの基本的知識を自学自習できる

 著者の森惟明先生は,所々,脳神経外科医としての長年のご経験からCTやMRIがなかった頃の神経疾患診断についてもふれておられ,当時の医師たちの苦労を垣間見ることができる。若い学生さんたちはこのような経緯があって今日に至っていることも知ってほしいと思う。私自身,昭和40年代の半ば,作業療法学科の学生として神経内科の先生より脳卒中の講義を受けたが,脳出血と脳梗塞の鑑別診断が必ずしも容易ではなく,いくつかの所見をもとに判断されていたことを思い出す。無論,CTやMRIについては,一言も聞いたことが無かった。

 症例の大部分は脳卒中,脳外傷,脳腫瘍である。なかでも脳卒中には多くの症例が呈示されている。これらは,誰が見ても異常所見とわかる。しかし,その病変の局在と広がり,およびその種類を判断するためには神経解剖や脳画像のみかた,神経所見のつかみかたの基本的知識が必須である。本書はこれらについて自学自習できる教科書である。著者たちの意図は,理学・作業療法士が,神経画像に親しみをもって,効率的に学んでほしいということにある。本書の最後の10章では,脳神経疾患への基本的アプローチが理学・作業療法を中心にまとめられているが,9章までを振り返りながら読んでみると脳神経疾患がイメージ化され,より実践と結びついてくるのではないかと思われる。

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