脳卒中の運動療法
エビデンスに基づく機能回復トレーニング
脳卒中運動療法を豊富な図で解説した待望のテキスト
もっと見る
急速な進歩が見られる脳卒中患者の治療やリハビリテーションに関して,最適な機能回復のためのトレーニングを網羅した待望のテキスト。最新の脳科学の知見を踏まえ,科学的な合理性と最近の臨床研究に基づき,効果的な機能的運動パフォーマンスのトレーニングを豊富な図版をもとにわかりやすく解説した書。
著 | Janet H. Carr / Roberta B. Shepherd |
---|---|
訳 | 潮見 泰蔵 / 齋藤 昭彦 |
発行 | 2004年10月判型:B5頁:264 |
ISBN | 978-4-260-24433-6 |
定価 | 5,280円 (本体4,800円+税) |
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 目次
- 書評
目次
開く
第1部 総論
第1章 脳の再組織化,リハビリテーションの環境,帰結測定
第2部 トレーニングのガイドライン
第2章 バランス
第3章 歩行
第4章 起立動作と着座動作
第5章 リーチングと手の操作
付録
第6章 機能障害と適応
第7章 筋力トレーニングと身体コンディショニング
第8章 まとめ
Reference
索引
第1章 脳の再組織化,リハビリテーションの環境,帰結測定
第2部 トレーニングのガイドライン
第2章 バランス
第3章 歩行
第4章 起立動作と着座動作
第5章 リーチングと手の操作
付録
第6章 機能障害と適応
第7章 筋力トレーニングと身体コンディショニング
第8章 まとめ
Reference
索引
書評
開く
脳血管障害の理学療法にかかわるどの立場の医療者にも有益
書評者: 松田 淳子 (協和会病院リハビリテーション科)
実は,本が出ることを知っただけでわくわくしていた。
著者であるCarr,Shepherdの著書は’91年に『脳卒中の運動訓練プログラム』(横山巌監訳,医学書院)の邦題で日本に紹介されている。具体的な動作課題をとりあげ,課題の分析から日常生活で実践できるようにするまでのアプローチをあくまでも具体的に記したその本は,当時声高に言われだしていた課題指向型アプローチを,そして運動学習のプロセスを具体的に理解させてくれるものだった。「具体的」を羅列したが,当時日本にはそのような本はなかったし,動作分析が大事,運動学習を学ばなければ,といってもそのことを具体的に記してくれた本はなかった中で,その本は斬新だった。
ずっと,新しい本が出たらいいのに(もちろん日本語で)と思っていた。その著者たちの本である。わくわくしないはずがない。
◆あくまでも具体的な記述
本書の特徴は,一言で言えばやはり「具体的」であること。
原書の副題には「Guidelines for Exercise and Training to Optimize Motor Skill」とあるが,脳血管障害者のモータースキルを最適化するための運動課題に対するアプローチのガイドラインが具体的に記されている。特に脳血管障害者が生活のために絶対学ばなければならないいくつかの動作に関しては,正常運動学,観察による脳血管障害者の呈する問題点,アプローチの方法がバイオメカニクスの観点を中心にあくまでも具体的に述べられている。また,脳血管障害をモデルにしていることからパフォーマンスの加齢による変化についても述べられ,noteとcheckという項目ではそれぞれ練習場面で注意することやチェックすることが端的に示されている。経験の少ない理学療法士や学生にとっては日常の臨床や実習で即役立てられる内容である。
さらに本書にはそれぞれの課題のアプローチに対する効果を評価するための方法が示されている。効果を標準化したツールで評価し,蓄積することが課題の脳血管障害の理学療法分野にとっては有益な構成である。
◆臨床家こそが科学と実践の間を埋めることができる
本書のもうひとつの特徴は,その介入方法に徹底して最新の脳科学の知見を含めたエビデンスを求めていることである。著者たちは序文の中で「科学と実践の間のギャップを埋めることは臨床家にとって計り知れない課題」と述べているが,臨床家こそがその課題を埋めていける最高の場にいる,と読後改めて勇気づけられる気がした。
読んでいて違和感のない日本語訳もありがたかった。訳者の方々のご苦労にも感謝したい。
脳血管障害者の理学療法を学んでいる人,すでに脳血管障害を持った人と向き合っている人,脳血管障害者の理学療法の展開に悩んでいる人,どの立場の人が読んでもきっと得るものの多い1冊である。ぜひ手にとって読んでいただきたい。
従来のトレーニング方法の問題点をエビデンスに基づき指摘する
書評者: 岩崎 テル子 (新潟医療福祉大教授・作業療法学科)
◆脳卒中リハビリテーションの現状
“脳卒中の運動療法”。あまりにも聞き慣れたフレーズである。しかし,今,行っている運動療法が機能回復に対してどの程度有効に働いているのか,無駄なことをしているのではないかなど,真剣に悩んだことはあるだろうか。脳卒中後のリハビリテーションは重要だというが,裏付けとなるデータをもって,各トレーニングの有効性を説明できる臨床家はあまりいないのではないかと思う。きちんとしたデータ,エビデンスがないままに,伝統的(古典的?)なモデルにそって一通り,一定期間やってみて,“いまいち回復しなかったなー”などといってはいないだろうか。
本書はそんな悩める臨床家にとって,日々のトレーニングについての深い反省,そして今後のトレーニングについての自信と課題を与えてくれる本である。
◆徹底して裏付けをとる
何しろ,トレーニング方法について徹底して近年の文献・研究からの裏付けをとっている。その豊富な文献の量には驚かされる。具体的には,脳卒中後の重要なアプローチ課題となる“バランス”,“歩行”,“起立動作と着座動作”,“リーチングと手の操作”への介入方法を主な内容とする。各項目について,生体力学的記述(これを読むだけでも,十分,各動作の捉え方に役立つ),加齢による変化(対象となる患者は高齢者が多いので重要である),運動パフォーマンスの分析(各動作の観察のポイント,問題点の捉え方が分かりやすい),トレーニングのためのガイドライン(具体的方法,強度,処方量),そして,トレーニングの有効性を検証するにあたり重要な測定方法について述べられている。
さらに,本書は付録として機能障害と適応(良い適応と不良な適応!),筋力トレーニングと身体コンディショニングについても述べている。その中では,脳卒中後の痙性や筋力強化の捉え方について明確に述べており,従来のリハビリテーション介入方法の問題点をエビデンスに基づき投げかけている。
最後に,本書は,機能回復というリハビリテーションの一面だけではなく,トレーニング,ひいては自分の健康やQOLに対する患者のモチベーションの引き出し方や,トレーニングによってもたらされた改善の退院後の継続についてもヒントを与えてくれるものであることをお伝えする。
書評者: 松田 淳子 (協和会病院リハビリテーション科)
実は,本が出ることを知っただけでわくわくしていた。
著者であるCarr,Shepherdの著書は’91年に『脳卒中の運動訓練プログラム』(横山巌監訳,医学書院)の邦題で日本に紹介されている。具体的な動作課題をとりあげ,課題の分析から日常生活で実践できるようにするまでのアプローチをあくまでも具体的に記したその本は,当時声高に言われだしていた課題指向型アプローチを,そして運動学習のプロセスを具体的に理解させてくれるものだった。「具体的」を羅列したが,当時日本にはそのような本はなかったし,動作分析が大事,運動学習を学ばなければ,といってもそのことを具体的に記してくれた本はなかった中で,その本は斬新だった。
ずっと,新しい本が出たらいいのに(もちろん日本語で)と思っていた。その著者たちの本である。わくわくしないはずがない。
◆あくまでも具体的な記述
本書の特徴は,一言で言えばやはり「具体的」であること。
原書の副題には「Guidelines for Exercise and Training to Optimize Motor Skill」とあるが,脳血管障害者のモータースキルを最適化するための運動課題に対するアプローチのガイドラインが具体的に記されている。特に脳血管障害者が生活のために絶対学ばなければならないいくつかの動作に関しては,正常運動学,観察による脳血管障害者の呈する問題点,アプローチの方法がバイオメカニクスの観点を中心にあくまでも具体的に述べられている。また,脳血管障害をモデルにしていることからパフォーマンスの加齢による変化についても述べられ,noteとcheckという項目ではそれぞれ練習場面で注意することやチェックすることが端的に示されている。経験の少ない理学療法士や学生にとっては日常の臨床や実習で即役立てられる内容である。
さらに本書にはそれぞれの課題のアプローチに対する効果を評価するための方法が示されている。効果を標準化したツールで評価し,蓄積することが課題の脳血管障害の理学療法分野にとっては有益な構成である。
◆臨床家こそが科学と実践の間を埋めることができる
本書のもうひとつの特徴は,その介入方法に徹底して最新の脳科学の知見を含めたエビデンスを求めていることである。著者たちは序文の中で「科学と実践の間のギャップを埋めることは臨床家にとって計り知れない課題」と述べているが,臨床家こそがその課題を埋めていける最高の場にいる,と読後改めて勇気づけられる気がした。
読んでいて違和感のない日本語訳もありがたかった。訳者の方々のご苦労にも感謝したい。
脳血管障害者の理学療法を学んでいる人,すでに脳血管障害を持った人と向き合っている人,脳血管障害者の理学療法の展開に悩んでいる人,どの立場の人が読んでもきっと得るものの多い1冊である。ぜひ手にとって読んでいただきたい。
従来のトレーニング方法の問題点をエビデンスに基づき指摘する
書評者: 岩崎 テル子 (新潟医療福祉大教授・作業療法学科)
◆脳卒中リハビリテーションの現状
“脳卒中の運動療法”。あまりにも聞き慣れたフレーズである。しかし,今,行っている運動療法が機能回復に対してどの程度有効に働いているのか,無駄なことをしているのではないかなど,真剣に悩んだことはあるだろうか。脳卒中後のリハビリテーションは重要だというが,裏付けとなるデータをもって,各トレーニングの有効性を説明できる臨床家はあまりいないのではないかと思う。きちんとしたデータ,エビデンスがないままに,伝統的(古典的?)なモデルにそって一通り,一定期間やってみて,“いまいち回復しなかったなー”などといってはいないだろうか。
本書はそんな悩める臨床家にとって,日々のトレーニングについての深い反省,そして今後のトレーニングについての自信と課題を与えてくれる本である。
◆徹底して裏付けをとる
何しろ,トレーニング方法について徹底して近年の文献・研究からの裏付けをとっている。その豊富な文献の量には驚かされる。具体的には,脳卒中後の重要なアプローチ課題となる“バランス”,“歩行”,“起立動作と着座動作”,“リーチングと手の操作”への介入方法を主な内容とする。各項目について,生体力学的記述(これを読むだけでも,十分,各動作の捉え方に役立つ),加齢による変化(対象となる患者は高齢者が多いので重要である),運動パフォーマンスの分析(各動作の観察のポイント,問題点の捉え方が分かりやすい),トレーニングのためのガイドライン(具体的方法,強度,処方量),そして,トレーニングの有効性を検証するにあたり重要な測定方法について述べられている。
さらに,本書は付録として機能障害と適応(良い適応と不良な適応!),筋力トレーニングと身体コンディショニングについても述べている。その中では,脳卒中後の痙性や筋力強化の捉え方について明確に述べており,従来のリハビリテーション介入方法の問題点をエビデンスに基づき投げかけている。
最後に,本書は,機能回復というリハビリテーションの一面だけではなく,トレーニング,ひいては自分の健康やQOLに対する患者のモチベーションの引き出し方や,トレーニングによってもたらされた改善の退院後の継続についてもヒントを与えてくれるものであることをお伝えする。