トワイクロス先生の
がん患者の症状マネジメント

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長らく読者の支持を得てきた『末期癌患者の診療マニュアル-痛みの対策と症状のコントロール』の内容をさらに発展させた第3弾。すべてのがん患者をマネジメントの対象とし,その諸症状緩和のために医療スタッフや家族ができることをやさしく,具体的に解説。すべてのがん患者にとっての福音の書。
原著 Robert Twycross / Andrew Wilcock
監訳 武田 文和
発行 2003年11月判型:A5頁:508
ISBN 978-4-260-12467-6
定価 3,850円 (本体3,500円+税)
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  • 目次
  • 書評

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1. 基本原則
2. 痛みのマネジメント
3. 消化器の症状
4. 呼吸器の症状
5. 精神症状
6. 生化学的症候群
7. 血液学的な症状
8. 神経の症状
9. 尿路の症状
10. 皮膚のケア
11. リンパ浮腫
12. 治療上の緊急事態
13. 臨床的ガイドライン
索引
 和文索引
 欧文索引
 薬剤索引

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緩和ケアにおける世界的指導者の研究と経験が集約
書評者: 恒藤 暁 (大阪大助教授・人間科学研究科)
 今から20年前,わが国ではホスピス・緩和ケアは産声をあげたばかりであり,実践に役立つ日本語の書籍はほとんどなかったように記憶している。1987年にトワイクロス先生の訳書である『末期癌患者の診療マニュアル 痛みの対策と症状のコントロール』が発行された。この書は単に症状コントロールの知識だけでなく,患者に対する態度やホスピス・緩和ケアの理念を教え,私を含め多くの緩和ケア従事者を感化したといっても過言ではない。そして,世界保健機関編「がんの痛みからの解放」(WHO方式がん疼痛治療法)とともに,わが国のホスピス・緩和ケアの基礎を築いたといえよう。

 トワイクロス先生は英国オックスフォードにあるホスピスの所長であるとともに,オックスフォード大学医学部の緩和ケア講座の初代主任教授である。また,世界保健機関がん専門家諮問部会委員であり,WHO方式がん疼痛治療法の策定や普及活動に大きく貢献され,世界の緩和ケアの指導者の1人である。この度の『トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント』の発行により,トワイクロス先生の研究と経験が集大成された最新のものを日本語で読むことができるようになり,ホスピス・緩和ケアの歴史を振り返る時に新たな感動を覚える次第である。

◆病棟での活用で,症状マネジメントが飛躍的に向上

 本書は“Symptom Management in Advanced Cancer(3rd ed)”の完訳である。全体は,「基本原則」,「痛みのマネジメント」,「消化器の症状」,「呼吸器の症状」,「精神症状」,「生化学的症候群」,「血液学的な症状」,「神経の症状」,「尿路の症状」,「皮膚のケア」,「リンパ浮腫」,「治療上の緊急事態」,「臨床的ガイドライン」の13章から構成されている。非常に広範かつ重要な領域について,最新の知見と考え方を紹介しながら,原因と病態生理,診断,マネジメントの順に記載し,すぐに実践できるようにまとめられている。特に最終章では,「経口モルヒネ投与法」,「オピオイド鎮痛薬の切り替え法」,「持続皮下注入器の使い方」,「緩和ケアにおける嘔気と嘔吐」,「オイド鎮痛薬による便秘」,「抑うつ」,「放射線照射中の皮膚のケア」,などについて,診療指針となる臨床的ガイドラインを掲載している。これは個人の学びに有用であるだけでなく,病棟や病院全体で活用されれば症状マネジメントが飛躍的に向上するのは間違いないと思われる。また,監訳者の武田文和先生をはじめ,緩和ケアの第一線で実践・教育・研究に携わっている方々によって翻訳されており,訳書であることを忘れるほどの素晴らしいものになっている。

 本書が緩和ケア従事者のみならず,がん診療に関わるすべての医療従事者によって十分に活用され,ホスピス・緩和ケアのさらなる発展につながることを心から願うものである。

がん患者を対処可能な症状で苦しませないために
書評者: 垣添 忠生 (国立がんセンター総長)
 「トワイクロス先生のがん患者の症状マネジメント」が刊行された。これは,Drs. Robert Twycross and Andrew WilcockによるSymptom Management in Advanced Cancerの翻訳である。

 武田文和先生の監訳によるもので,実際の翻訳は,わが国の緩和ケアに携わる,いわば第2世代に相当する,現場で活発に診療に従事している医師や看護師があたった。これが,原書がしっかりしていることに加え,この訳文を生き生きしたものにした大きな理由だろう。

◆英国ホスピスに学ぶ

 英国は近代ホスピスの発祥の国である。有名なホスピスが数多くあるが,中でもオックスフォードにあるSir Michael Sobell Houseは,そこで実践されている全人的ケアのレベルの高さから,緩和ケアに従事する多くの専門家から高く評価され,その活動が注目されてきた。本書の著者,Dr. Robert Twycrossは,このホスピス創立以来20数年にわたって所長を務めてきた。本書には,同ホスピスで研究され,実践され,有効性が確認されているがん患者の症状マネジメントが,簡潔で包括的に記述されている。

◆末期がん患者の症状を網羅

 がん患者が終末期に入った時,つまり,もはや完治を望むことができなくなった時点でも,がん患者が訴えるさまざまな身体的苦痛,症状に医学的に対処することは極めて重要だ。疼痛や呼吸困難に代表される症状がコントロールされた時の,患者の安堵した顔を一度でも体験した人は,患者の立場でものを考え,行動するようになる。

 実際には,がん患者の痛みは多様であり,その対応に使われる薬剤は非オピオイド,弱,強オピオイド鎮痛薬やナロキサンがある。これらに個々に触れ,さらに鎮痛補助薬や非経口投与法も触れられている。

 消化器の症状としては,口臭,口内乾燥,口内炎から食欲不振,胸やけ,便秘,下痢,腹水など多彩であるが,これらの対処法が網羅されている。その他に,呼吸器の症状,精神症状,生化学的症候群,血液学的な症状,神経の症状,尿路の症状,皮膚のケア,リンパ浮腫,治療上の緊急事態,そして臨床的ガイドライン。本書はがん患者の症状マネジメントに関して欠けるところがない。

 本書を病棟や外来に各1冊,座右の書として常備しておくと,そこに働く医師も看護師も,患者の対応上で「困ったな」と思った時,気軽に手にとって参照でき,とても有用と思われる。本の大きさも重さも,その意味で使いよくできている。

 がん患者が,医療従事者の不勉強から,本来は医学的に対処可能な症状や苦痛で苦しむことがないよう,本書を臨床現場で十分に生かしていただければと思う。

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