生理学 第4版

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新入学生が医学の基礎となる人体の機能を学ぶための1冊。人体の機能を個々の臓器に分けてとらえるのではなく,1つの有機体として理解できるように,という方針で著されている。新カリキュラム対応。改訂にあたって記述を見直すとともに,2色刷でよりみやすくなっている。
編集 菅野 剛史 / 松田 信義
松村 幹郎 / 越智 和典 / 豊田 弘子
発行 2004年03月判型:B5頁:216
ISBN 978-4-260-27424-1
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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  • 目次
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1 神経の興奮
2 筋収縮
3 自律神経系
4 中枢神経系
5 感覚
6 運動
7 血液
8 循環
9 呼吸
10 消化と吸収
11 栄養・代謝・体温
12 排泄と酸塩基平衡
13 内分泌
14 生殖
知っておくべき検査数値
索引

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普段の学習用にとどまらず,臨床検査技師の生涯教育にも役立つ
書評者: 伊藤 機一 (神奈川県立保健福祉大教授・人間総合専門基礎)
 このたび,松村幹郎川崎医大名誉教授らにより臨床検査技術学(6)生理学の第4版が上梓された。本シリーズの通称「青本」は,臨床検査学・同技術学の教本としてI社「赤本」とは常に双璧に位置し,臨床検査技師養成のための大学・短大・専修学校などでの採用率はきわめて高い。さらに,医学・歯学・薬学・看護学・リハビリテーション学・栄養学など,多くのアライド・メディカルスタッフの副読本としても広く用いられているのは衆知の事実である。

◆学びやすさのための配慮

 生理学は解剖学と並んで学生が初めて接する保健・医療の基礎的学問分野である。高校時代に学習した生物学,化学,保健体育を基盤とし,患者さんの診療支援分野での病態把握のための「臨床生理学(生理検査学・画像検査学)」を修得する助走部分に位置している。しかし生理学の教科書の多くは,冒頭から電気信号的記載が充満していることなどもあって学生には取っ付きにくい分野でもある。その点を執筆の先生方は配慮されてであろう,本書では各章ごとにまず「キーワード」と「学習の要点」を掲げられ,さらに各章末尾には「理解度の点検と問題」が箇条書されているなど,より理解しやすいような工夫が随所になされている。また,学習心理的効果から,豊富な図表を下方にまとめたり,青本の青さをもう少しコバルトブルー調にした2色刷りで示すといった工夫により,教わる側,教える側双方に“癒し系効果”をも与えている。

 私事で恐縮だが,医学部学生時代,部活動として軽音楽倶楽部を結成,その時の顧問教員が生理学の故M・H教授であった。自身の著した教材を示しながら「生理学って面白いだろう。恋人と逢おうとする時に眼が輝くのも,胸がどきどきするのも,汗をかくのもすべて生理学のおかげだ」と交感神経の働きを例に自信あり気に語り,できの悪い私に生理学に興味を抱かせてくれたのを思い出す。そして私が後年,腎・尿路系の病態生理学,その第1のエビデンス(証し)である尿検査に関心を持ち,生涯の研究テーマとなったことも,これを導いてくれた恩師,さらには生理学があってこそと信じている。

◆随所で「へー,なるほどそうなの」

 今回,書評を記す機会が与えられたので本書を時間を掛けて拝見した。もう1つの理由として私が4月から着任して教鞭をとっている看護学科,リハビリテーション学科,栄養学科では,従来の臨床病理学・病理学よりも病態生理学の講義に重点が置かれ,その予習のためにも生理学を学ぶ必要性に迫られたという本音もある。

 本書をひもときながら,昨今の人気テレビ番組「へー,なるほどそうなの」的な感心事をいくつも経験した。例えば「カテコルアミンは中枢神経においては,主として抑制性伝達物質である」のところは逆に考えていた。もう1つ「神経終末から放出されるアセチルコリン(ACh)は,コリンエステラーゼ(ChE)の作用によってコリンと酢酸とに速やかに分解される(このChEの活性を阻害するのがあのサリンであり,縮瞳が持続)」までは知っていたが,これに続く「分解の結果生じたコリンは再び神経終末に取り込まれてAChの生成に利用される」の部分が「へー,そうだったのか」だったのである。この他にも数えあげたらきりがないほどである(自分の不勉強を暴露しているようなものだけど)。

 本書の優れた点を最後に1つ付け加えると,ほどよい厚さということであるが,その割には,松村先生が序文で記されている「人体の巧妙な働きを総合的に理解することを常に考えてもらいたい」に対する必要十分な内容が網羅されている点である。IT時代となった現在,情報が多過ぎ,私などは“情報過多瘤(カタル)”に陥っているが,ほどよいスリムさは何より重要である。本書はスリムではあるが,医師国家試験に匹敵あるいはそれ以上の難問の出題があるとされる臨床検査技師国家試験対策にはもとより,各学会・団体の主催する認定試験,さらには今後ますます発展するであろう生涯教育のための教本として,最良である。

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