救急総合診療Advanced Course21

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診療所や一般病院の医師が最小限の器材(X線,エコー,末梢血,生化学検査)とスタッフで,患者を安定させるまでの救急初期対応の技能を向上させるための実地書。専門医へ引き継ぐ前にしておかなければならないスキルと,知っておくべき最新情報から21テーマを選び,アドバイス。今回は評価の定まっていないグレーゾーンにも言及する。
シリーズ 総合診療ブックス
編集 箕輪 良行 / 今 明秀 / 林 寛之
発行 2003年02月判型:A5頁:264
ISBN 978-4-260-12248-1
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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  • 目次
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救急総合診療ベストプラクティス
 救急総合診療における身体所見と器具を活かした観察
 Introduction 救急総合診療とは
救急総合診療Advanced Course 21
 1 輪状甲状靭帯穿刺/切開術
 2 急速導入
 3 全脊柱固定
 4 鼻出血の止血術
 5 出血性ショックの輸液と輸血,ショックパンツ
 6 骨髄輸液
 7 心エコー
 8 急性腹症の腹部エコー
 9 気胸を起こさない中心静脈確保法
 10 感染対策
 11 胃洗浄,活性炭,全腸洗浄
 12 愛護的な脱臼および骨折の整復と固定
 13 心電図,胸部X線所見の裏側を読む
 14 脳卒中の初期診断
 15 急性心筋梗塞の初期診断
 16 いつ心の病気を疑うか
 17 突然の死を迎えた家族への対応
 18 気管支喘息の救急治療
 19 小児の蘇生
 20 救急でのEBM
 21 アナフィラキシー,薬物アレルギー,動物咬傷
Index
付録(ラミネートカード)
 市中肺炎 PORT recommendation
 肺炎の経験則的治療 Empiric Antibiotic Therapy

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研修医がちょっと背伸びして挑戦する,救急医療実践のための1冊
書評者: 松村 理司 (市立舞鶴市民病院副院長)
◆歯ごたえがありながら論旨が追いやすい内容

 救急現場の現役医師たちによって書かれた本である。味読とまではいえないが,一通り読ませてもらっての感想の第1は,なかなか歯ごたえがあるということである。既刊の「Basic20問」に次ぐAdvanced編だからであろう。現在50歳代半ばの筆者が救急現場で仲間と苦楽を共にしていたのは,すでに10年以上も前のことになるからでもある。

 感想の第2は,全体を通してかなりevidence―basedな記載が心がけられていることである。したがって,少々歯ごたえがあっても,論旨が追いやすい。また,そのことが,Step3の「未だに議論の分かれる点」の項が生きてくる理由にもなっている。

 最近,編者の一人の箕輪良行先生とお話をする機会があった。救急医療が,全国での総合診療部の展開の枠外に置かれ易いのをしきりに嘆いておられた。その思いは,地域病院で働く一般内科医の筆者もまったく同じである。

◆研修医にとっては「かなり高いゴール」

 さて,来春から義務化される卒後臨床研修では,内科,外科,小児科,産婦人科,精神科,地域保健・医療に混じって救急部門が必修となっている。救急医療が必修科目であるのは当然の要請であり,遅きに失したと思われるぐらいだが,アカデミックな医療空間ではこれまで傍流でしかなかったことは否めない。また,全国を眺めても,救急医療の実践水準はまだまだ発展途上である。

 こういう次第だから,この本は,「必修化された臨床研修に臨む研修医には少し高いゴール」というよりも,「かなり高いゴール」かもしれない。しかし,研修医がちょっと背伸びをして挑戦する読み物としては,この領域の良書が少ない現状では,正に格好と言えよう。

 蛇足ながら,「救急現場で研修医と患者・家族との間に発生したもめごとの調整」といった内容の記述なら,現在の筆者の手に負えるかもしれない。 

一歩踏み込んで知識を深めたい救急医に最適
書評者: 郡 義明 (天理よろづ相談所病院・総合診療教育部部長)
 本書は好評であった総合診療ブックス「救急総合診療basic 20問」の続編である。したがって最も基本的なBCL,ACLSなどから一歩踏み込んだ内容になっている。

 本書は,救急の現場でよく遭遇する21の疾患・病態・手技について取り上げている。それぞれの項目には,まず,最初に適当な症例の提示があり,3つのステップ(ステップ1:病態・手技の基礎知識,ステップ2:手順と注意点,ステップ3:未だに語論の分かれる点)別にポイントを押さえた記述があり,最後に提示した症例のマネージメントに関する教訓が記載されている。臨場感があり,現場を想定しながら読んでいけるので理解しやすい。

◆救急診療の「その心」を解説

 本書の特長をあげると,まず,内容が実際の臨床経験に裏打ちされていて実践的である。しかも,悪しき経験主義に陥らないように,よく用いられている手技や治療法についても,学問的な裏づけ(有効性のevidence)に触れ,現時点での評価がなされている。

 昨今,救急診療に関するマニュアル本は多々あるが,往々にして急性心筋梗塞→亜硝酸薬の点滴のようにしか書かれていない。つまり,「何々とかけて,何々と解く」で終わってしまっている。本書では「その心は・・・である」についての解説がある。「その心」を知らない機械的な処置が,時にピットフォールに陥いることは,ある程度救急の現場を経験した者なら誰しも実感していることだけに大いに役立つはずである。

 また,随所に知識の整理に役立つ格言や記憶術があり,手技に関しては豊富なイラストがある。中身が濃いだけに,私のような浅学者にとっては,イラストは理解を助けてくれるだけでなく,一息つける頭の休息の場でもある。

◆家族の心情に配慮した対応にも言及

 さらに救急の現場でよく遭遇するにもかかわらず,これまであまり文章化されてこなかった,突然の死を迎えた家族への対応にも触れている。救急の現場では,救命に全力が注がれ,死は医療者にとって敗北を意味するためか,患者が死亡した際の対応は,どことなくぎこちないものになりがちである。多くの修羅場を経験した著者ならではの家族の心情に配慮した対処の仕方が記載されていて,大変参考になる。

 各項目の文献紹介も,文献の要旨を1行程度に解説してくれている。また救急に関するEBMの紹介もある。さらに知識を深めたいときに,何をまず読めばよいかがわかり,ありがたい。

 本書はadvancedの名の通り,ある程度救急の現場を経験した者が,知識の整理あるいは足らない部分の補足するために好適の書である。

いざというときに役立つ,より深い救急の知識を整理
書評者: 下 正宗 (東葛病院副院長)
◆1段高いレベルで救急の知識を整理

 「救急総合診療Basic20問」の続編である。前書が,研修医や若いレジデントが基本的に知っておかなければならないものを中心に記載しているのに対し,本書は,救急を専門にしていないが,日常診療の場面で,種々の救急の対応をしなければならない病院のレジデントや診療所,一般病院の医師を対象にして書かれている。2004年に医師臨床研修が必修化されるが,卒後2年間ですべての臨床医は前書レベルの能力は修得しなければならない。本書ではそれより少し高いレベルで,知識として,あるいは,手技として身につけておくべき事項が記載されている。

◆読者の興味を引き続ける,ポイントをついた構成

 第1次医療機関での適切な対応が,その後の高次医療機関に転送された際の予後を左右することはよく知られていることであるが,まさに,そのレベルを上げるために書かれたものである。各対応に対する記憶術(mnemonics)は,目の前に起きている現象にどのように対処するかの行動の指針になるものばかりである。

 「いまだに議論が分かれる点」の記載は,救急対応のピットフォールともいえる内容で,各著者が多くの症例経験の中で見いだしたポイントが記載されており非常に興味深い。

 また,手技に関しては,きれいなイラストが描かれてあり,イメージトレーニングに最適である。

 扱われている課題は診療所や一般病院では,そう頻繁に遭遇するケースばかりでないが,いざというときのために,ときどき本書を開いて復習しておくようなことは必要であろう。

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