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看護研究

原理と方法
(第2版)

著:D. F. ポーリット/C. T. ベック 
監訳:近藤 潤子

  • 判型 B5
  • 頁 800
  • 発行 2010年03月
  • 定価 10,450円 (本体9,500円+税10%)
  • ISBN978-4-260-00526-5
ここから始まる! 看護研究者のスタンダードを示す世界的定番書
1978年に初版が米国で刊行されて以来、世界中の看護研究者に圧倒的な評価を得てきた原書第7版の翻訳。看護研究の進歩を反映し、前版と比べて300ページ以上の増ページで内容充実。看護研究者に不可欠な知識を適切に選定し、質的・量的ともに研究方法の各論についても簡潔かつ一定の深さで記述。網羅性と詳細さをバランスよくまとめた記述は他の追随を許さない。看護研究者の世界的スタンダードがここにある。
序 文
第2版 監訳者序

 Denise F. PolitとBernadette P. Hunglerによる『Nursing Research:Principles and Methods』は,1978年の初版刊行後,1983,1987,1991,1995,1999年の第6版まで同じ著者...
第2版 監訳者序

 Denise F. PolitとBernadette P. Hunglerによる『Nursing Research:Principles and Methods』は,1978年の初版刊行後,1983,1987,1991,1995,1999年の第6版まで同じ著者によって改訂が行われてきた.今回翻訳第2版を刊行する第7版から著者がPolitとBeckに変わった.本書は,初版が刊行されてから30年が経過している.
 1993年,D. F. PolitとB. P. Hunglerによる『Nursing Research: Principles and Methods』の第3版を監訳したが,当時の内容は,科学的研究の過程に焦点があてられ,研究の準備,設計,データ収集,分析,結果の解釈,報告といった一連の過程がコンパクトに説明されていた.
 版を重ねるごとに,量的研究と分類される科学的研究に対して質的研究が次第に大きなウエイトを占めるようになってきた.翻訳第2版となる原書の第7版では,質的研究のデザイン,方法,質的研究と量的研究の統合,さらには研究報告の評価,看護実践へのエビデンスの利用について論じられている.
 看護研究の動向にあわせ,あるいはリードする目的で改訂が重ねられたのであろう.本書は今も,研究の初心者が研究の分野を系統的・包括的に理解するために好適書であり続けている.

 2007年夏,米国では原書第8版(版籍は2008年だが)が刊行された.著者は第7版に引き続き,PolitとBeckのままである.しかし,メインタイトル『Nursing Research』についているサブタイトルが変わった.それまでの,「Principles and Methods」が,「Generating and Assessing Evidence for Nursing Practice」となっている.米国のトレンドを受けてのことであろうが,前書きには「a watershed of classic textbook(定本テキストの分岐点)」という表現もみられる.このことからも,第7版から第8版への改訂は大きな変化を伴うものであったと考えられる.
 通常,原書に大きな変更があった折は,翻訳書の改訂が望まれる.しかし,翻訳書には,原書とは別に独自の役割を果たすこともある.つまり,原書に則って新しい内容に更新すれば,そのまま翻訳書としての存在意義も増すとは,単純には言いきれない部分もあるのではないだろうか.とくに,テキストとして広く活用されているような場合には,翻訳書の改訂の方向性が,その国の研究や教育の現状と同期するような内容であることが望ましい.
 日本の看護系大学・大学院では「ポーリット」や「黒本」で通用する本書は,いわゆる質的・量的研究方法のいずれもが幅広くとりあげられ,かつ,一定の深さまで掘り下げた記述から,看護研究者が共通してよって立つテキストとして用いられてきた.原書8版の改訂はevidence-basedの流れを受けてのことであろうが,ややそちらに寄ってしまった感もなきにしもあらず,である.今後,日本の読者にとっては,米国の流れをふまえて翻訳の改訂を行っていくべきか,あるいは,この翻訳第2版を日本の看護研究テキストの“定本”として残していくべきなのか,常に考え続けていきたい.

 2010年2月
 近藤 潤子
書 評
  • 質的研究と量的研究の対話によって進化した看護研究の新しいバイブル (雑誌『看護教育』より)
    書評者:藤島 麻美(東京医科歯科大学大学院博士後期課程)

     本書の第1版は,言わずと知れた看護研究のバイブルであり,私自身も「辞書」のように活用してきた。質的研究の解説が大幅に増えたという本書の発刊を知り,単純な増章を予測して手にしたところ,まったく新しいタイプの本へ進化していることに圧倒されることになった。

     まず気づかされるのは,実証主義や自然主...
    質的研究と量的研究の対話によって進化した看護研究の新しいバイブル (雑誌『看護教育』より)
    書評者:藤島 麻美(東京医科歯科大学大学院博士後期課程)

     本書の第1版は,言わずと知れた看護研究のバイブルであり,私自身も「辞書」のように活用してきた。質的研究の解説が大幅に増えたという本書の発刊を知り,単純な増章を予測して手にしたところ,まったく新しいタイプの本へ進化していることに圧倒されることになった。

     まず気づかされるのは,実証主義や自然主義といった複数のパラダイムは,互いに長所と限界を補足し合う関係にある,という著者の一貫した態度である。したがって,本書の大部分は,質的研究と量的研究が独立した章に分かれているどころか,一つの節や文章の中にも同時に登場するのである。両研究手法が並行し,交差しながら論じられているところが本書の最大の特徴であり,他の書と一線を画するところである。それゆえ,1つの用語や手法について手っ取り早く学ぶという「辞書」的な使い方では,本書の魅力を存分に味わえない。ここは第1章からじっくり読んでみることをお勧めする。

     第I部では,まず研究者が最初に十分理解しておくべき哲学的基盤が記されている。それをふまえたうえで質・量的研究を常に対比させながら,重要な概念と用語が整理され,研究プロセスの概観が示される。第II部では,臨床現場の身近な疑問が,質・量的研究の両方に精通した著者によって研究設問や仮説へと発展していく思考のプロセスを学ぶことができる。さらに,概念モデルと理論の解説が強化された本書の前半部分は,特に,泳ぎ方を知らずに海に飛び込んでしまった気持ちで日夜研究手法の学習と格闘している初学者にとって必読の部分である。

     第III部より,マルチメソッドを含む多様な研究デザインが示され,第IV・V部では研究のステップにそって質・量的研究が交互に詳説されている。怒涛のような用語の羅列に怯むが,豊富な研究例と語り口調の助言,各章ごとのシンプルな要約が理解を助けてくれる。第VI・VII部では,研究計画から学位審査・学会発表・投稿にまで大いに役立つ実践術が示される。さらに研究者の果たすべき役割としてEBP の活用に言及した最終章では,エビデンスに基づく看護実践を構築するという著者の堅牢な信念が窺える。

     看護研究に携わる者の多くは,限られた時間の中で,自らの研究課題にそって選択した研究手法の習得に焦点を絞らざるを得ない。しかし,看護が直面する複雑な現象を明らかにするためには,最適なパラダイムに基づいた研究方法を自由に選択して使いこなせる力が不可欠であることに,私たちは気づいている。

     終始一徹して質的研究と量的研究の対話を試みた著者の新しい挑戦から生まれた本書は,全ての看護研究者が手に取るに値すると確信する。

    (『看護教育』2010年11月号掲載)
目 次
第I部 看護研究の基礎
 第1章 看護研究への誘い
 第2章 質的研究と量的研究における重要な概念と用語
 第3章 質的研究と量的研究における研究プロセスの概観
第II部 研究の概念
 第4章 研究問題,研究設問と仮説
 第5章 文献レビュー
 第6章 概念的文脈の開発
第III部 看護研究のためのデザイン
 第7章 倫理的研究のデザイン
 第8章 量的研究のデザイン
 第9章 量的研究における厳密性の強化
 第10章 さまざまな目的に応じた量的研究
 第11章 質的研究のデザインと方法
 第12章 質的デザインと量的デザインの統合
 第13章 標本抽出のデザイン
第IV部 測定とデータ収集
 第14章 データ収集計画のデザインと実施
 第15章 自己報告データの収集
 第16章 観察データの収集
 第17章 生物生理学的データ,その他のデータの収集法
 第18章 データの質の評価
第V部 研究データの分析
 第19章 量的データの分析:記述統計
 第20章 量的データの分析:推測統計
 第21章 量的データの分析:多変量統計学
 第22章 量的分析の方略のデザインと実施
 第23章 質的データの分析
第VI部 研究を伝える
 第24章 研究結果の要約と共有
 第25章 研究計画書の作成
第VII部 研究結果の利用
 第26章 研究報告の評価
 第27章 看護研究の運用:研究のエビデンスを看護実践に生かす

用語解
付録A 統計表
付録B 統計学で使用するシンボル一覧
索引