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レジデントのための腎疾患診療マニュアル

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維持透析患者が急増している昨今、腎疾患診療は日常臨床においてその重要性を増している。本書では、腎臓を専門としない一般内科医にとっても、実地臨床に役立つ情報が短時間で参照できるよう、現在明らかにされたevidenceを豊富に盛り込んで内容を精選した。レジデントおよび認定内科専門医を目指す若手医師にも必携。
シリーズ レジデントマニュアル
編集 深川 雅史 / 吉田 裕明 / 安田 隆
発行 2005年07月判型:A5頁:496
ISBN 978-4-260-00049-9
定価 5,280円 (本体4,800円+税)
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  • 目次
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1章 イントロダクション
2章 腎尿路疾患患者への一般的アプローチ
3章 水電解質・酸塩基平衡異常患者へのアプローチ
4章 原発性糸球体疾患患者へのアプローチ
5章 二次性腎疾患患者へのアプローチ
6章 尿細管・間質疾患患者へのアプローチ
7章 急性腎不全患者へのアプローチ
8章 保存期腎不全へのアプローチ
9章 末期腎不全患者へのアプローチ
10章 血液浄化法の実際
11章 維持透析患者へのアプローチ
12章 腎移植へのアプローチ
13章 嚢胞性腎疾患へのアプローチ
14章 尿路感染症患者へのアプローチ
15章 尿路結石患者へのアプローチ
16章 腎尿路系の腫瘍患者へのアプローチ
17章 高血圧患者へのアプローチ
18章 小児の腎尿路疾患患者へのアプローチ
19章 腎障害を持つ患者の妊娠・出産へのアプローチ
20章 腎機能障害者に対する薬物投与
索引

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自信をもって推薦できる腎臓内科の教科書
書評者: 小松 康宏 (聖路加国際病院・腎臓内科)
 米国で有名な医学ジョークに,腎臓内科医をネタにしたものがある。

What do you get if you cross a librarian with a nephrologist ?

All the information you need, but it won’t do you any good.

「図書館司書と腎臓内科医に出会ったら何が手に入るか?」

「必要な情報はすべて得られるがあまり役に立たないよ」

という腎臓内科医からすると憤慨ものである。

 もっとも,腎臓内科医は何でも知っているとみなされているなら光栄ではあるが。


 腎臓内科が対象とする患者,疾患群はきわめて広い。

 私自身,毎日のように他科からのコンサルテーションを受けているが,すべての診療科,すべての病棟が対象となる。造影剤を使用するinterventionやNSAIDs投与の可否,化学療法・抗生物質投与の用量調節,輸液,栄養処方,体液量管理,血圧管理,電解質異常の診断と治療,透析の適応と選択など限りない。

 本書のはしがきにあるように,日本の大学病院での腎臓内科教育,あるいは日本の腎臓内科の教科書の記載量は必ずしも一般診療における腎臓内科に期待されるものとは一致しない。ネフローゼ,腎炎はそれほど多いわけではなく(重要な疾患であることに異論はない),むしろ病棟医にとっては軽度腎障害症例への対処,電解質・酸塩基平衡異常,急性・慢性腎不全の診断と治療に難渋することが多い。

 高齢化,糖尿病人口増加により慢性腎疾患患者が急増していることは社会的な問題でもある。米国の統計(NKF)によれば,中等度腎機能低下(GFRが60ml/min/1.73m2以下)を有する慢性腎疾患は人口の5%を占めるといわれ,筆者の病院の統計でもICU,CCU入室患者の2―3割はすでに腎障害を有している。今後,臨床に携わるからには診療科を問わず慢性腎疾患患者の診療を避けて通るわけにはいかない。ある意味で臨床医のたしなみ,初期研修で身につけるべき基本的知識,技術に含まれるであろう。

 臨床研修病院で指導医をしていると,研修医から腎臓内科の教科書は何がよいか尋ねられることが多い。残念ながらこれまでは,まずはこの本を,と自信をもって推薦できる日本語で書かれた臨床腎臓病学の本はなかった。初めてこの本を手にしたときに,ついに待望していた本が出版された,という感慨を抱いたことを覚えている。

 腎臓病学が初心者に取り付きにくい感じを起こさせる一因は,腎臓病の診療においては病態生理の理解が欠かせないことにある。病態生理の知識なしに「マニュアル」的な対応で高Na血症,低Na血症を治療した場合,ある程度の「適当な」治療でも,腎機能が正常であれば治療が奏功したかにみえることもあろうが,いずれ大きな痛手,iatrogenicな電解質異常を招きうる。

 本書がこれまでの日本語の腎臓病の教科書・マニュアルと異なるのは,臨床の現場で役に立つ疾患・症候群を網羅し,病態生理の理解のうえにまとめようとしている姿勢にある。院内に腎臓病専門医・コンサルタントがいない場合には,コンサルテーション腎臓病医の代用となるであろうし,より理解を深めたいときには最新の文献が示されている。研修医は,さらに自分の経験を書き加え,各章ごとに実際の経験した患者さんが思い出せるようになればすばらしい研修をしたことになるであろう。

内科の基本として,腎臓内科のグローバルスタンダードを示す
書評者: 平方 秀樹 (九大病院助教授・腎疾患治療部)
 腎臓の機能は体液の恒常性維持で,水と溶質を適正なレベルにコントロールすることが腎臓に課せられた使命である。一般内科医は,これらの失調の多くが腎臓に起因することを理解し,腎臓専門医は,病態の補正法に習熟することが基本となる。

 このたび上梓された『レジデントのための腎疾患診療マニュアル』は,このような考えに立脚して執筆・編集された,わが国で初めての腎臓内科の教科書で,編集者の熱い意志が随所で示されている。本書は机に座って読む本ではなく,使いこなす本である。持ち歩いてベッドサイドで確認し,もの足りない部分や新しいエビデンスが明らかになった場合には,書き加えて自分で編集し直しても構わない。線を引いたり,蛍光ペンで色を付けるだけで終わらせずに,読者自身が成長させて欲しい教科書である。

 本書は,イントロダクションに始まり,腎尿路疾患患者への一般的アプローチ,水電解質・酸塩基平衡異常,原発性糸球体疾患,二次性腎疾患,尿細管・間質疾患,急性腎不全,保存期腎不全,末期腎不全へと続く。イントロダクションでは,腎疾患の大まかなとらえかたから慢性腎臓病(chronic kidney disease)という新しい概念の提唱とともに,多くの頁を鑑別診断過程における確率論を説くことに費やしている。

 目次をみると,従来は扱いが小さかった水電解質異常なども含め,腎臓内科の全分野について,バランスよく幅広くカバーされている。特に注目すべきは,日本の腎臓内科のほとんどのカリキュラムに欠けていた「腎移植」を,内科医の立場で取り上げていることである。これには神戸大の深川雅史氏をはじめとする3人の編集者の強い意志が反映しているものと思われる。

 もちろん,章によっては十分なページが取れず物足らなさを感じる部分もあるが,腎臓の専門家をめざすには,全分野について使える知識を身に付ける必要があるので,最初の一歩としては適切なレベルであろう。「私は透析の専門家だから,組織のことはわからない」などというのは,腎臓の専門家同志では謙遜の情の表現にはなるが,コンサルトに来ている非専門家にとっては噴飯ものなのだから。

 一方,前書きにもあるが,この本は初期研修を終えた程度の内科医のレベルを想定して書かれている。そのために,最初の部分を占める症候論の部分だけでなく,全体を通じて,「病歴や身体所見を重視すること」,「特殊検査はきちんと選択して行うこと」,「病態に基づき,なるべくエビデンスのある治療法を選択すること」という,内科医としてのポリシーが強調されているように思う。その一環であろうが,鑑別診断に必要な,疾患の事前確率,事後確率,感度と特異性,検査閾値,治療閾値などについて,「診断のプロセスとアプローチ」として,イントロの部分で十分に説明しているのも特筆に値するだろう。ここにも編集者の意志が感じられる。

 1つだけ気になるのは,本文のレイアウトであろうか。黒と青の2色刷りにしたおかげで,とても見やすくなっている。しかし,全体のページ数を圧縮するためであろうが,新しいセクションがページの下のほうから始める場所も多々あり,めくっているときに読みにくく,出版社に改善を求めたい。

 さて,編集者だけでなく,執筆者も助教授,講師クラスのバリバリの中堅どころが主体なので,読者の反応に応じて,今後さらに改訂されていく可能性を感じさせる1冊である。その際には,Consultation Nephrologyなどの,新しい分野で日本の教科書に欠けていた部分もさらに補強されることを期待したい。

診療を重視した実践的なマニュアル
書評者: 深津 敦司 (京大病院・腎臓内科)
 『レジデントのための腎疾患診療マニュアル』を一読して,深川先生ら編者に喝采を送りたい。これまで日本では腎臓分野で,このような臨床に即したマニュアルは定期刊行医学誌以外では見当たらなかった。実際に患者を目の前にした時に何を考え,何をすべきかという実践的なマニュアルに仕上がった。腎臓病の分野は,学生をはじめ,general physicianをめざす医師や研修を終了した医師に,何かわかりにくい,つかみどころのない分野であるという意識が生じて敬遠する人が多いように思える。これまでの腎臓専門医の責任であるが,腎疾患,特に腎炎の分類がわかりにくいこと,また病理から免疫,生理さらにはメカニックの知識まで必要とされる腎臓病学の幅広さによると考えられる。

 これまでのマニュアルはまず疾患名があって,それについての概説というスタイルのものが多かった。本書では見出しは疾患に基づいているが,内容はもっと実用的でこれまでの成書のスタイルとはまったく異なっている。たとえば日本での一次性糸球体疾患として最も重要なものにIgA腎症があるが,本書ではネフローゼ症候群を生じうる疾患の一部として,多彩で複雑な病理やいまだ解明されていない成因についてはほとんど触れることなく,臨床医に必要な概念,診断,治療について簡略して述べてある。その代わり,専門医でも混乱しやすい,腎疾患の臨床的,組織学的分類の概念を理解しやすいように解説し,そのなかのIgA腎症の位置づけを述べ,さらに実際患者が目の前にいた時にどうしたらよいかをわかりやすく書いてある。

 本書の最も特徴的な点は,広範にわたる腎臓病学の分野のなかで,これまで腎専門家(臨床医,研究者)が興味を持ってきたことから離れて,診療をするうえで何が大切であるかを考慮して,そのことを中心に編成されている点である。主要な症候や兆候をどのように理解し,それからどのような腎尿路疾患を疑い,疑ったらどう検査を計画し治療に至るかという観点から本書が構成されている。さらに水電解質平衡異常や酸塩基平衡異常など臨床上,実際にはよく遭遇する病態について詳しく述べられている点も本書の特徴である。一応,腎臓内科医を自認していた筆者にも改めて,あるいは初めて知ることが少なくなく,恥ずかしい思いをしたことを吐露したい。時に患者を診察していてその兆候,検査値を解釈する際,ふとこんがらがることがある。そういう時にもう一度頭の中を整理するため参考にするのに最適な書と思われる。

 わが国では研修を終了した医師やgeneral physicianをめざす医師が遭遇する腎尿路疾患を実践的に扱ったマニュアルはきわめて少なく,洋書に頼らざるを得なかった。日本の著者の研究指向が強かったためと思われるが,本書の登場によりようやく日本でも実践に即したマニュアルが使えるようになった。

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