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学校医のための小児腎臓病のみかたと指導

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主に学校医を勤める開業医と若手小児科勤務医の必携書。高度な検査や疾患の組織学的分類などは割愛し,外来でも行える検査を解説する一方,専門医へ送るタイミングなど,一般臨床医に必要な知識をコンパクトにまとめた一冊。患児に対する過度な生活制限を課さない指導を行うと同時に,重篤な疾患を見逃さない視点を解説。
編集 内山 聖
発行 2002年03月判型:A5頁:232
ISBN 978-4-260-11912-2
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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  • 目次
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1 腎臓に関連した症候-病態生理と外来における鑑別
2 外来検査のポイント
3 外来治療と専門医に送るタイミング
4 主な腎疾患の病態と予後-患者への説明のために
5 全身疾患と腎合併
6 生活指導
7 腎疾患児への予防接種
8 腎疾患児の日常感染症の治療
小児腎臓病で用いられる略語

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児童生徒の検尿陽性者に対する最新かつ適切な対応を解説
書評者: 阿南 茂啓 (九州学校検診協議会腎臓検診専門委員会委員長/阿南小児科医院)
◆義務化された学校検尿に伴う現状に対応

 児童生徒に対する学校検尿が法律で義務化されて,腎疾患の早期発見・早期治療がなされるようになり,その有用性は一般に認められるところとなりましたが,まだまだ多くの問題を残しています。執筆編集をされた内山教授も述べられているように,特に事後措置について国の統一した見解が示されておりませんので,大きな地域格差が生じています。
 このような現状をふまえて,腎疾患が専門ではない多くの学校医のために執筆された本書は,誠にユニークな,他に類をみない,暖かい内容で,内山教授の狙いどおりの書となっています。
 内容について2,3触れさせていただきます。
 学校検尿では多くの軽症の腎疾患が発見されますが,その管理は厳し過ぎないようにと,しばしば警告をしています。
 第3章「外来治療と専門医に送るタイミング」というタイトルを見ただけで,われわれ開業医・学校医としては飛びつきたくなります。血尿・蛋白尿,その他の各種腎疾患の外来治療と腎生検の適応について,また尿路感染症の扱い方など,つまり専門医へ送るタイミングが詳しく述べられています。さらに第4章では,「主な腎疾患の病態と予後―患者への説明のために」と続くのですからこたえられません。この章では,微少血尿から各種腎疾患について,患者への説明に必要なその治療法と特に予後について,症例を提示しながら懇切ていねいに解説されています。そして最後に,小児期腎不全の最近の動向について,腹膜透析,血液透析の問題点から腎移植についてまで述べられています。
 腎疾患児の予防接種をどうするかは,開業医・学校医として悩まされる問題の1つです。第7章「腎疾患児への予防接種」では,特にステロイドを使用している腎疾患児の予防接種について,症例を提示しながら,実践に則して詳しく説明されています。

◆全国の学校の保健室にぜひ備えてほしい1冊

 執筆陣は,内山教授をはじめ小林収教授以来日本の小児腎疾患研究のメッカ新潟大学小児科の関係者です。生まれるべきところで生れた書です。実は私も,もう40年も前になりますが九大の小児科に入局してすぐ,わずか数か月でしたが小林教授の下で腎生検を勉強させていただいた関係などもあり,本書には特別の感慨があります。
 すべての開業医・学校医の先生方,そして研修医の先生方にもぜひ読んでほしいものです。できれば,全国の学校の保健室に1冊備えてほしいと思いますし,その他の学校保健関係者にもぜひ一度読んでもらいたい書です。

学校医の外来診療や生活指導に最適の1冊
書評者: 村上 睦美 (日医大教授・小児科学)
 本書は,読者を実地医家に絞っており,内容的にも外来診療や生活指導を中心に記載されている。本書は,意図するところが明確であり,非常に読みやすいテキストになっている。また,腎疾患児,尿異常児に対する考え方が一貫しており,多くの著者による共同執筆とはとても思えないほどである。このため学校医ばかりではなく,実地医家の一般診療,研修医の小児腎疾患に対する教育用としても最適な1冊であろう。もう1つ付け加えるならば,ベテランの小児科医が知識を整理するために電車の中で読み流しても,おもしろく読み終えることができるほどに仕上がっている。

◆読みやすさを助けるフローチャート

 フローチャートが多用されていることも読みやすさを助けており,症候から診断にいたる過程がわかりやすく示されている。同時に図表も多く,知識を整理するのに便利になっている。また小児では,成人と異なり健常状態の基準値が年齢によって異なっているが,本書ではその点を明確にしている。血清クレアチニン値,尿酸値などは年齢によって基準値が異なるので,それらについては表を用いてその年齢の正確な値が得られるよう記載されている。例えば,血清クレアチニン値は筋肉量に比例しているため,身体が小さい小児では低値を示し,成人の基準値を用いて判断すると腎不全状態を見逃すことになる。身長100cmの小児の血清クレアチニン値が,成人の基準値である1mg/dlを示した場合には,クレアチニン・クリアランスの計算値は55ml/minになり,この場合には,腎機能はかなり低下していると考えなければならない。
 内容的には,この頁数の本としては記載されている疾患名や検査項目が多く,本書は辞書的に用いることも可能である。このことは同時に,本書から各項目の詳細な知識を得ることの困難さを示しているが,「学校医のための」と銘打たれていることを考えると,むしろこのような記載法は読者にとっては最善の選択であろう。学校医を対象とした他のテキストでは,むしろ病名や検査項目は抑えめにして,学校医はここまで知っていればよいとしているものも少なくない。このようなテキストと比較すると,本書は項目数が多いので,さらに知識を増やしたい場合には,その項目を専門書で検索することで容易に行なうことができる。

◆実用性高い「専門医に送るタイミング」の記述

 治療に関しては,実地医家の先生方が遭遇する機会が多い疾患については,詳細に記載されており,頻度が低い疾患,入院治療を要する疾患については,簡明に記載されている。このような態度は,本書の基本方針と思われ,項目立てにおいても「専門医に送るタイミング」が作られており,そのような面からも実用性は高いものと思われる。
 また,この頁数の本では,内容はできるだけコンパクトに作りたいが,本書ではスルホサルチル酸法の判定基準,血尿,ヘモグロビン尿,ミオグロビン尿の鑑別法など基本事項を表で示すなど多くの部分を割いており,本書が医療行為の基本を大切にしている様子がうかがわれる。同時に最新の情報も含まれており,2002(平成14)年度の学習指導要領の変更に対応した新学校生活指導表も記載されている。
 このように本書は,学校医の先生方には非常に有用な1冊になろう。

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