困ったときのリハビリテーション看護
具体的な問題解決法を解説した,すぐに役立つ実地書
もっと見る
リハビリテーション看護を行うなかで,(1)治療や診断時,(2)患者の疾病や障害,(3)日常生活上,(4)患者指導の場面で,しばしば遭遇する問題や,困ったと感じるケースを取り上げ,看護上の問題を解決するための具体的方策を解説。実際に現場で起こっている問題やケースを取り上げた,すぐに役立つ実地書。
編集 | 泉 キヨ子 |
---|---|
発行 | 2001年07月判型:A5頁:252 |
ISBN | 978-4-260-33147-0 |
定価 | 3,080円 (本体2,800円+税) |
- 販売終了
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。
- 目次
- 書評
目次
開く
序章 リハビリテーション看護の動向
第1章 患者のリハビリテーション意欲を高めるための援助
第2章 摂食・嚥下障害の援助
第3章 排泄自立のための援助
第4章 転倒・転落を防ぐための援助
第5章 コミュニケーションのとりにくい患者への援助
第6章 苦痛や訴えに対する援助
第7章 とくに指導の必要な患者・家族に対する援助
第1章 患者のリハビリテーション意欲を高めるための援助
第2章 摂食・嚥下障害の援助
第3章 排泄自立のための援助
第4章 転倒・転落を防ぐための援助
第5章 コミュニケーションのとりにくい患者への援助
第6章 苦痛や訴えに対する援助
第7章 とくに指導の必要な患者・家族に対する援助
書評
開く
看護者自身の手によるリハビリテーション看護の実践
書評者: 野々村 典子 (茨城県立医療大教授・看護学科)
本書は,リハビリテーション看護領域のベテランナース35名の執筆によるものである。リハビリテーション看護場面での「困ったとき」を臨床ナースにあげてもらったものが目次立てになっている。この「困ったとき」は,どの看護領域にも共通している視点である。
◆テキストを超えた実践的内容
まず,目次を読み,関心のあるところから読み始めてみるとよい。例えば,「排泄自立のための援助」の章では,患者の状況として,排尿障害のある脊髄・頸髄損傷患者,排泄動作の困難な片麻痺患者,排尿自立の必要な脳血管障害患者が取りあげられている。しかも,それぞれの状況と問題点がコンパクトに整理されており,問題解決のための対策もベテランナースならではの,テキスト的な内容を超えた実践的なものが記されている。また,事例紹介では特徴的な事例があげてあり,ますますわかりやすい内容となっている。
全体の項目立ては,リハビリテーション看護において重要で,かつ必要な項目になっており,「第1章 患者のリハビリテーション意欲を高めるための援助」,「第2章 摂食・嚥下障害の援助」,「第3章 排泄自立のための援助」,「第4章 転倒・転落を防ぐための援助」,「第5章 コミュニケーションのとりにくい患者への援助」,「第6章 苦痛や訴えに対する援助」,「第7章 とくに指導の必要な患者・家族に対する援助」で構成されている。
◆臨床実践に根ざした看護の視点
編者の泉キヨ子氏は,10年間の看護実践を基として教育研究職になられたというご経歴が示すように,看護実践に価値をおいた教育研究活動をされている。聞くところによると,手術室看護の急性期からの看護に端を発して,高齢者を中心としたリハビリテーション看護領域へと研究を進められている。そして,第27回日本看護研究学会の会長講演で「人間の持てる力を引き出すリハビリテーション看護学の追究」を講演された。その編者による本著は,臨床実践に根ざした看護の視点が強調されていて説得力がある。書名からの印象では,リハビリテーション看護領域で働くナースを対象としているように受け取られるが,内容は書名とは異なり,どの看護領域へも活用でき,看護基礎教育においてもよい教材となっている。
昨今,リハビリテーション看護に関する著書が相次いで発刊されている。特筆すべきこととして,看護職のみの執筆によるものが増えてきていることである。しかも本書のように,看護実践者によるものが多く執筆されていることがあげられる。このことは,リハビリテーション領域での看護者自身が看護の役割機能を明確にし,看護のスペシャリティを追究していくために重要なことと考える。
事例から学ぶ臨床看護の知
書評者: 冨重 佐智子 (日本看護研究支援センター所長)
◆ベテラン看護師の「臨床の知」
本年度より日本看護研究支援センターを開設し,今まで以上に臨床看護師と看護や研究について語る機会を得た。そんな中,最も活気があるはずのベテラン看護師にいまひとつ活気がないことに一抹の不安を抱いた。どうも彼らは,看護研究や看護理論といった昨今の看護の趨勢に,日常的な看護の重要性を実感できなくなっているようであった。
しかし実際に彼らの看護を垣間見ると,コミュニケーションを駆使しながら,細やかに観察し,知識と勘を総動員して瞬時に問題の本質に迫ってしまう。彼らのほとんどがこのようなすばらしい能力(臨床の知)を持っているのである。また,この能力の背景には,「患者の回復を心より願うねばり強さ」など,看護師自身の強い信念や意気込みが感じられる。そしてこの信念や意気込みこそが,真に患者を癒すものではないかとさえ思われた。残念なことにベテラン看護師の多くは,この「臨床の知」を当たり前のこととして扱い,特別なこととして他者に論じてこなかった。「臨床の知」の中にこそ,看護理論では表現しきれない,生き生きとした「看護の原点」が存在するといっても過言ではないのに。
◆「臨床の知」を言語化したシリーズ
『困ったときの○○看護』シリーズの最大の特徴は,これまであまり論じられてこなかった看護師の「臨床の知」を,事例を通して余すことなく言語化した点にある。「困ったときの○○」のタイトルにあるように,事例はどれも1度は病棟カンファレンスで取り上げられるような身近なものばかりである。これらの事例の1つひとつをみると,どれもが科学的であり,情熱的である。すなわち看護師たちが,科学的かつ丹念な情報収集をもとに問題の本質を絞り込み,他職種や患者の家族と連携をとりながらねばり強く看護を繰り返していった様子がありありと示されているのである。紹介されている事例は,「問題解決」に到達したものばかりではない。「問題解決」をめざしながら,患者の死によって終わってしまった事例もある。しかしどちらの事例も,同じような事例に悩む看護師に,さまざまな課題を提起する力強い余韻を持っている。
このシリーズの第2の特徴は,事例を理解する上での病態生理や各病期の患者の問題点・看護の基本原則など,基礎知識に関わる資料が充実していることである。それらは,すぐにでも実践に役立つように整理されており,学校で教えられる内容とは性質を異にする。これらの基礎知識は,ケースカンファレンスや学習会で活用されることによって,個々の看護師の臨床判断を鍛えるのに大いに役立つことだろう。現在のところ,シリーズは,『消化器疾患患者の看護』,『心疾患患者の看護』,『呼吸器疾患患者の看護』,『糖尿病患者の看護』,『リハビリテーション看護』の5つが出版され,いずれも好評である。
このシリーズを特に読んでほしい対象に,経験の浅い看護師があげられる。最近はローテーションの影響で,特定領域のベテラン看護師が少なくなり,経験の浅い看護師が,彼らから「臨床の知」を継承する機会が激減してしまった。しかしこのシリーズが,その機会を補う役割を果たしてくれるのではないかと考える。また,ベテラン看護師にもぜひ読むことを勧めたい。このシリーズは,ベテラン看護師たちの日頃の実践に自信と価値を与え,自らの「臨床の知」を生き生きと表現するきっかけを与えてくれることだろう。
書評者: 野々村 典子 (茨城県立医療大教授・看護学科)
本書は,リハビリテーション看護領域のベテランナース35名の執筆によるものである。リハビリテーション看護場面での「困ったとき」を臨床ナースにあげてもらったものが目次立てになっている。この「困ったとき」は,どの看護領域にも共通している視点である。
◆テキストを超えた実践的内容
まず,目次を読み,関心のあるところから読み始めてみるとよい。例えば,「排泄自立のための援助」の章では,患者の状況として,排尿障害のある脊髄・頸髄損傷患者,排泄動作の困難な片麻痺患者,排尿自立の必要な脳血管障害患者が取りあげられている。しかも,それぞれの状況と問題点がコンパクトに整理されており,問題解決のための対策もベテランナースならではの,テキスト的な内容を超えた実践的なものが記されている。また,事例紹介では特徴的な事例があげてあり,ますますわかりやすい内容となっている。
全体の項目立ては,リハビリテーション看護において重要で,かつ必要な項目になっており,「第1章 患者のリハビリテーション意欲を高めるための援助」,「第2章 摂食・嚥下障害の援助」,「第3章 排泄自立のための援助」,「第4章 転倒・転落を防ぐための援助」,「第5章 コミュニケーションのとりにくい患者への援助」,「第6章 苦痛や訴えに対する援助」,「第7章 とくに指導の必要な患者・家族に対する援助」で構成されている。
◆臨床実践に根ざした看護の視点
編者の泉キヨ子氏は,10年間の看護実践を基として教育研究職になられたというご経歴が示すように,看護実践に価値をおいた教育研究活動をされている。聞くところによると,手術室看護の急性期からの看護に端を発して,高齢者を中心としたリハビリテーション看護領域へと研究を進められている。そして,第27回日本看護研究学会の会長講演で「人間の持てる力を引き出すリハビリテーション看護学の追究」を講演された。その編者による本著は,臨床実践に根ざした看護の視点が強調されていて説得力がある。書名からの印象では,リハビリテーション看護領域で働くナースを対象としているように受け取られるが,内容は書名とは異なり,どの看護領域へも活用でき,看護基礎教育においてもよい教材となっている。
昨今,リハビリテーション看護に関する著書が相次いで発刊されている。特筆すべきこととして,看護職のみの執筆によるものが増えてきていることである。しかも本書のように,看護実践者によるものが多く執筆されていることがあげられる。このことは,リハビリテーション領域での看護者自身が看護の役割機能を明確にし,看護のスペシャリティを追究していくために重要なことと考える。
事例から学ぶ臨床看護の知
書評者: 冨重 佐智子 (日本看護研究支援センター所長)
◆ベテラン看護師の「臨床の知」
本年度より日本看護研究支援センターを開設し,今まで以上に臨床看護師と看護や研究について語る機会を得た。そんな中,最も活気があるはずのベテラン看護師にいまひとつ活気がないことに一抹の不安を抱いた。どうも彼らは,看護研究や看護理論といった昨今の看護の趨勢に,日常的な看護の重要性を実感できなくなっているようであった。
しかし実際に彼らの看護を垣間見ると,コミュニケーションを駆使しながら,細やかに観察し,知識と勘を総動員して瞬時に問題の本質に迫ってしまう。彼らのほとんどがこのようなすばらしい能力(臨床の知)を持っているのである。また,この能力の背景には,「患者の回復を心より願うねばり強さ」など,看護師自身の強い信念や意気込みが感じられる。そしてこの信念や意気込みこそが,真に患者を癒すものではないかとさえ思われた。残念なことにベテラン看護師の多くは,この「臨床の知」を当たり前のこととして扱い,特別なこととして他者に論じてこなかった。「臨床の知」の中にこそ,看護理論では表現しきれない,生き生きとした「看護の原点」が存在するといっても過言ではないのに。
◆「臨床の知」を言語化したシリーズ
『困ったときの○○看護』シリーズの最大の特徴は,これまであまり論じられてこなかった看護師の「臨床の知」を,事例を通して余すことなく言語化した点にある。「困ったときの○○」のタイトルにあるように,事例はどれも1度は病棟カンファレンスで取り上げられるような身近なものばかりである。これらの事例の1つひとつをみると,どれもが科学的であり,情熱的である。すなわち看護師たちが,科学的かつ丹念な情報収集をもとに問題の本質を絞り込み,他職種や患者の家族と連携をとりながらねばり強く看護を繰り返していった様子がありありと示されているのである。紹介されている事例は,「問題解決」に到達したものばかりではない。「問題解決」をめざしながら,患者の死によって終わってしまった事例もある。しかしどちらの事例も,同じような事例に悩む看護師に,さまざまな課題を提起する力強い余韻を持っている。
このシリーズの第2の特徴は,事例を理解する上での病態生理や各病期の患者の問題点・看護の基本原則など,基礎知識に関わる資料が充実していることである。それらは,すぐにでも実践に役立つように整理されており,学校で教えられる内容とは性質を異にする。これらの基礎知識は,ケースカンファレンスや学習会で活用されることによって,個々の看護師の臨床判断を鍛えるのに大いに役立つことだろう。現在のところ,シリーズは,『消化器疾患患者の看護』,『心疾患患者の看護』,『呼吸器疾患患者の看護』,『糖尿病患者の看護』,『リハビリテーション看護』の5つが出版され,いずれも好評である。
このシリーズを特に読んでほしい対象に,経験の浅い看護師があげられる。最近はローテーションの影響で,特定領域のベテラン看護師が少なくなり,経験の浅い看護師が,彼らから「臨床の知」を継承する機会が激減してしまった。しかしこのシリーズが,その機会を補う役割を果たしてくれるのではないかと考える。また,ベテラン看護師にもぜひ読むことを勧めたい。このシリーズは,ベテラン看護師たちの日頃の実践に自信と価値を与え,自らの「臨床の知」を生き生きと表現するきっかけを与えてくれることだろう。
更新情報
-
更新情報はありません。
お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。