時代に即した腎臓内科学教科書の決定版
書評者:川口 良人(神奈川県衛生看護専門学校附属病院長/慈恵医大客員教授)
2002年6月に日韓共同で開催される第14回サッカー・ワールドカップの初日と同じ日に本書の書評依頼が手元に届きました。世界で最も強いいくつかの地域代表チームが覇権を争うわけですが,日本のチーム力が世界に通用するかどうかが問われる貴重な機会でもあるわけです。
◆世界に通じる腎臓病学教科書
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時代に即した腎臓内科学教科書の決定版
書評者:川口 良人(神奈川県衛生看護専門学校附属病院長/慈恵医大客員教授)
2002年6月に日韓共同で開催される第14回サッカー・ワールドカップの初日と同じ日に本書の書評依頼が手元に届きました。世界で最も強いいくつかの地域代表チームが覇権を争うわけですが,日本のチーム力が世界に通用するかどうかが問われる貴重な機会でもあるわけです。
◆世界に通じる腎臓病学教科書
ちょうど,ワールドカップを観るのと同じで,本書の内容が日本語で書かれていても,これを英文に翻訳した場合に世界に通用する水準であるのか否かを想定して評価をしてしまいます。本書が対象としている同程度の読者層を想定して英文で書かれ,しかも数年ごとに改訂されるマニュアル,テキストは少なくありません。しかし腎臓病学,すなわち病態のみならず,生体制御に果たしている腎臓の役割から腎疾患をわずらう患者の生活指導に至るまで,平易に,しかも重要なポイントを網羅している内容の豊富さにおいて,本書は他に類を見ないものであると思います。それぞれの項目を分担執筆した執筆者は,現在診療と教育を担当している最も活動的な現役の世代である故に,時代に即した記述がなされています。それは,各章末に付記されている「学習のためのチェックポイント」という設問に,的確に解答できるだけの内容が本文に述べられているということで証明されるでしょう。この設問は,さらにその章で学んだことを反芻する目的にとどまらず,設問に対して自分の思考を構築するトレーニングの課題としてふさわしいものであります。実際に臨床の場においては,臨床情報の整理とそれらの評価から導き出される可能性のある診断,およびそれを裏づけるために必要な検査を策定するという作業が,最も重要な作業工程でありますが,この自己学習にも役立つものと思います。
◆患者を念頭においた編集構成
全体の構成についてですが,まず最初に生体において「腎臓は何をしているのか」を明確にし,つづいて腎の構造,機能について説明されていることは,腎臓病学の入り口としてきわめて適切であります。腎疾患の症候論でも,「どのような機会に腎疾患が発見されるのか」から症候論が始まるのは,患者を念頭においた編集であり好ましいものです。
あえて苦言を呈すれば,いくつか物足りないところもあります。例えば,急性腎不全のところで,最近のradiological intervention, angioplastyにおいて,その頻度が増加しているatheroembolic acute renal failureについて,もう少し詳細にとり上げるべきではないでしょうか?紙面の都合もあり,ここではこれ以上触れませんが,次回改訂時に検討していただきたい箇所が他にもいくつかあります。しかし,本書の総合的評価としては,医学生はもとより,専攻が決定していない後期研修医,腎専門医をめざすレジデント,腎不全医療にかかわるコメディカルスタッフの教科書として適切な手引書と言えましょう。
評者が勤務する病院において,近く始まる卒後4年目の後期研修医の腎臓病クルズスを本書に沿って行なってみたいと計画しています。本書は,彼らが,生体制御機構において広い範囲にわたり腎臓が主役を演じていることや,腎臓病がもたらす多彩な臨床像について理解し,加えて治療のためには広範囲な知識が不可欠であること,さらに学際的治療の重要性についてまで理解することができるテキストであると考えます。