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脳外傷リハビリテーションマニュアル

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脳外傷の後遺症に悩む患者さんのリハビリテーションの実際を経験豊富な神奈川リハビリテーション病院のスタッフによってまとめた。具体的な事例と共に理解するための基礎知識、後遺症として最も重大な高次脳機能障害とそのリハビリテーションの実際を分かりやすく解説した。
編集 神奈川リハビリテーション病院「脳外傷リハビリテーションマニュアル編集委員会」(代表:大橋正洋)
発行 2001年04月判型:B5頁:176
ISBN 978-4-260-24392-6
定価 4,950円 (本体4,500円+税)

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  • 目次
  • 書評

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第1章 脳外傷とは 
第2章 脳外傷リハビリテーションプログラム 
第3章 リハビリテーションスタッフの紹介 
第4章 事例 
第5章 知識の整理 
第6章 高次脳機能障害を理解するためのQ&A 
第7章 付録(脳外傷の評価方法/用語集)

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脳外傷患者の機能回復を一層効果的にするための座右書
書評者: 中村 紀夫 (慈恵医大名誉教授)
 ヨーロッパのある国で観光旅行を楽しんでいた親友のご夫人が暴漢に引き倒され,頭を石畳に強打して昏睡状態になった。3回開頭手術を受けて脳の内外にたまった血液を取り除いてもらった後,その国の医師に付き添ってもらって1か月後に日本に帰国し,施設も人員も優秀なリハ病院に入院した。
 ただちに駆けつけて夫人を診た私は,いささかサジを投げる思いであった。「64歳の高齢者が,脳外傷の開頭術後1か月たっても痛みや呼び声にわずかに反応する程度の深い昏睡状態にあり,しかもCTで激しい脳損傷が確認される」という悪条件では,私の40年余の経験からすると,仮に命が助かってもせいぜい植物状態に近い程度までであろう。担当医に最大限のご尽力をお願いして帰宅した。
 夫人のその後の経過は,私の悲観的診断とはうって変わって実にめざましく,徐々に四肢の動きが現われ,2週間後から声を出し,やがて片言をしゃべるようになった。ほぼ3年たった今,自宅にあって1人で歩いて部屋を移動するし,歌手の名も覚えて一家の団欒の場に加わり家族を楽しませてくれるというすばらしい回復ぶりである。人はこれを「奇跡の回復」と言うであろう。私は家族・関係者も参加した現在の神経リハ・プログラムの大成功と称賛し評価している。

◆実践的手段が手際よく

 それだけに今回,当時の主任担当医が編集した『脳外傷リハビリテーションマニュアル』を手にした時,どのように輝かしいこの領域の進歩・発展がこの1冊に盛りこめられているか,ワクワクしながら頁をめくった。
 「目次」を開いた第1印象としての特徴,それはこの書が脳外傷を理解するために不可欠な神経学的学識と,失われた神経機能をどのように回復させるかの実践的手段とが,章別に手際よく配置されていること,加うるに,この両者の連携を臨床においていかに円滑に組み立てるかをわかりやすくするために,11症例が事例として1章にまとめられていること,そして最後に文章を理解しやすくするために10頁の用語集があることで,編集者の思慮深く巧みな編集方法が,この本の理解しやすさ読みやすさを目次の頁にすでに表現している。
 ところで本書に関心を持ち読む人の職種は,医師・看護婦・理学療法士・ソーシャルワーカー・その他のコメディカルなど多彩であろう。それらの人々が持つ知識・学識・用語には,ある程度の異同があるであろう。本書を読んでみると文章がよくこなれていて,難解な用語・文面がほとんどない。これは上記の多彩な職域の方々が編集委員会の委員に多数参加しているためであろう。

◆痛感したリハビリテーションの精髄

 本書の各章について,第2章は,リハプログラムで,14種類のプログラムが紹介されており,第3章は,リハスタッフ11職種の紹介である。この2章は文面,頁としては少ないが本書の白眉であり,私はこれが現在のリハの精髄なのだと痛感した。リハに携わるこれだけ多くの人々が,患者の家族とも一緒になって,目的とする機能の回復に最適なプログラムを組み立て,全力を注いで最善の成果をあげているのである。
 実際のプログラム運営方法とそれに対する評価は,第4章の11症例から知ることができる。ここでは例えば重度記憶障害を持つ患者に対して,就労に向けた援助のプログラムを作り,さまざま実行し,本人の作業自立に成功した症例が細かく記載されている。
 私は脳外傷の臨床について急性期・慢性期とも十分な経験と知識を持っているつもりであったが,この1冊からそのリハについて啓蒙された知識がきわめて多かった。
 この領域に深くも浅くも関与するリハ担当者が,脳外傷患者の機能回復を一層効果的にするために,本書を座右に置いてその知識を広め,常時役立てられることを切望してやまない。

際立つ教科書,実践の書としての価値
書評者: 安藤 徳彦 (横市大教授・リハビリテーション科)
◆非常に有用な使い勝手のよい本

 全体は7章だが,構成は4つの部分に分類できる。第1は脳外傷概論であり,第2は事例紹介,第3は脳外傷治療解説であり,最後に国際的に広く使用されている評価方法と用語集が紹介・解説されている。
 この構成は,初めての人には戸惑いを感じさせるかもしれない。しかし読み返してみると,脳外傷を知る教科書としても,座右に置いてマニュアルとして使用するためにも,また医師以外の多数職種の人にとっても非常に有用な,また使い勝手のよい本であることが容易に理解される。
 項目の中で,概論では,脳外傷の定義,受傷原因,年齢構成,障害内容と米国における多彩なリハビリテーションプログラムが概説されている。
 事例紹介は,受傷後早期に対処した症例から社会復帰支援が中心的課題であった症例まで,よく見られる典型的な障害を中心に,個別に症例を紹介する形で障害内容とアプローチが解説されている。記載は問題志向型医療記録(POMR)の形式を踏んで,各症例ごとに課題(問題点),主観的所見,客観的所見,リハビリテーションプログラム(プランニング),経過,結果,考察の順で解説されているので,具体的で非常にわかりやすい。
 事例(1)は急性期によく発生する異所性骨化の例,(2)はボディイメージ(身体認知)の歪みに対する理学療法,(3)は筋緊張亢進で随意性を発揮できない症例に対する作業療法,(4)は看護婦を中心とするチームアプローチの紹介事例,(5)はコミュニケーション障害に対する言語療法の紹介,(6)は臨床心理を中心とする復学支援の症例,(7)はケースワーカーを中心とする在宅生活実現の支援症例,(8)は行動障害に対する支援,(9)は記憶障害例に対する就労支援,(10)更生施設の利用例,(11)一般就労実現例である。
 脳外傷治療解説は,発生頻度,診断,発生機序,受傷直後の治療,慢性期の精神症状と薬物治療,この時期の安全確保,合併症とその治療,高齢者,小児特性と支援内容,就労支援,社会保障制度,施設利用,権利擁護に及ぶ。
 次の章では,脳外傷の障害像の中核をなすのは認知機能障害と行動障害であるが,これがQ&Aの形で解説されている。検査法,神経心理学的検査法,高次脳機能障害,認知機能障害の解説とアプローチ,行動障害の解説と対処法,家族支援が詳しく記述されている。さらに付録として脳外傷の代表的な評価方法,用語集が収められている。

◆集大成された数多くの経験

 本書は,日本で脳外傷のリハビリテーションに関して最も経験の深い医療機関の1つである神奈川リハビリテーション病院で,大橋正洋氏を中心とする治療チームが分担執筆している。単に教科書的な知識で書かれた記載ではなく,数多くの経験に裏打ちされた体験を集大成した書物であることが,教科書としても実践の書としてもこの本の価値を際立つものにしている。

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