図解 骨折治療の進め方 第3版
好評の骨折治療手引書の改訂版
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骨折治療の手引書として、好評を博している図解書の第3版。今改訂のポイントは、内固定による治療法の記載の充実、AO分類等の骨折分類の追加、銃や幼児虐待による骨折についての記述の追加、電話や手紙による相談に関するガイドラインの追加など。また、第2版同様、X線像読影のための自己診断テストを収載。
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- 序文
- 目次
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序文
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第3版 監訳者の序
「骨折治療の基本手技を,実際の手順どおりに絵入りで解説する」
「保存的治療を基本に―とりわけ子供の骨折を重視」
「成人の長管骨骨折では,保存的治療と観血的治療の両者に目配りを」
「総じて,比較的経験の浅い整形外科医・外科医にも安全で頼りになる技法を伝えたい」という意図が,1981年のマックレ先生の初版には鮮明でした。
大学病院で整形外科の研修を始める若い医師たちに,初版の翻訳を勧めてみました。その狙いは上の四項目に尽きますが,「英国の伝統ある骨折治療学の精髄には,手技以上に学ぶところがきっとある」,そんな思惑も強かったのです。臨床家として第一級で,しかも英語力に秀でた山本利美雄先生(当時大阪厚生年金病院整形外科部長)に指導と校閲をお願いしました。
この狙いは見事に成功しました。翻訳『図解骨折治療の進め方』は増刷を重ね,翻訳担当の若者が得たものも大きかったといいます。第2版も概ね同様の成果を挙げましたが,山本君の苦労は増したはず。
原書の新しい第4版(翻訳の第3版)では外傷外科医のMax Esser氏が執筆者に加わり,内容を一新した趣があります。1981年から2002年という歳月を考えれば当然といえましょう。初学者に,整形外科の素養として健全な骨折学を伝授するというよりも,第一線の外傷外科医が習得すべき骨折学教本になっていました。
それはどういうことでしょうか?
1980年代までなら,骨折で命を落すことは稀でした。したがって骨折の治療は,できればメスを振るわずに,いかに確実に直すかが眼目でした。20年の歳月は,骨折のあり様を変えてしまいました。ハイスピード(高エネルギー)外傷など,生命を脅かす傷害として救急搬送される骨折患者が多くなったのです。外科医の任務はまず救命であり,救急外傷の一環として骨折治療が位置づけられました。おまけに,病院で修復と機能回復を待つことが歓迎されない制度下に外科医は生きる時代です。
では至芸の整復固定手技が高く評価されなくなったのか?
そうではありません。子供たちの骨折治療には,より注意深い配慮が求められます。その一方で,一分の狂いもない整復より,高齢者には早期の自立が必要になりました。こうした時代だからこそ,治療には鋭い読みと匠の技が求められているのです。
それにしても,医療の大変動がマックレ先生をして大改訂に踏み切らせたものと思います。全身管理・観血治療や国際的なAOシステムが第4版に大幅に組み込まれたのはその故でしょう。日本版「骨折治療の進め方」を産み育て,若手の整形外科医を育成してきた山本君に,さらなる苦労を強いたのが増補改訂のこの部分でした。おかげで実用の書が,整形外科医はもとより,広く外傷外科医にも必携の教本となったのですが。
改訂にふさわしい新メンバーも得られました。幸い宮内君という優秀な若手が第4版の翻訳陣に加わり,救命救急の項はベテランの木村眞一先生(元大阪厚生年金病院救急部長)に目を通してもらいました。ありがたいことに,マックレ先生のイラストの腕も,親切で一貫した解説の冴えも失われていません。すでに歴史的な業績になりましたが,ベーラー,キュンチャーあるいはワトソン・ジョーンズの骨折治療書に比肩する出来映えです。
整形外科医はもとより,ひろく外科を志す医師に良書として推薦する所以です。
追記
嬉しいことに,山本利美雄先生は,2007年度,日本整形外科学会の学会功労賞を受賞されました。この骨折治療書シリーズが,整形外科の土壌を豊かにした功績も評価されたに相違ありません。
2008年1月
小野啓郎
「骨折治療の基本手技を,実際の手順どおりに絵入りで解説する」
「保存的治療を基本に―とりわけ子供の骨折を重視」
「成人の長管骨骨折では,保存的治療と観血的治療の両者に目配りを」
「総じて,比較的経験の浅い整形外科医・外科医にも安全で頼りになる技法を伝えたい」という意図が,1981年のマックレ先生の初版には鮮明でした。
大学病院で整形外科の研修を始める若い医師たちに,初版の翻訳を勧めてみました。その狙いは上の四項目に尽きますが,「英国の伝統ある骨折治療学の精髄には,手技以上に学ぶところがきっとある」,そんな思惑も強かったのです。臨床家として第一級で,しかも英語力に秀でた山本利美雄先生(当時大阪厚生年金病院整形外科部長)に指導と校閲をお願いしました。
この狙いは見事に成功しました。翻訳『図解骨折治療の進め方』は増刷を重ね,翻訳担当の若者が得たものも大きかったといいます。第2版も概ね同様の成果を挙げましたが,山本君の苦労は増したはず。
原書の新しい第4版(翻訳の第3版)では外傷外科医のMax Esser氏が執筆者に加わり,内容を一新した趣があります。1981年から2002年という歳月を考えれば当然といえましょう。初学者に,整形外科の素養として健全な骨折学を伝授するというよりも,第一線の外傷外科医が習得すべき骨折学教本になっていました。
それはどういうことでしょうか?
1980年代までなら,骨折で命を落すことは稀でした。したがって骨折の治療は,できればメスを振るわずに,いかに確実に直すかが眼目でした。20年の歳月は,骨折のあり様を変えてしまいました。ハイスピード(高エネルギー)外傷など,生命を脅かす傷害として救急搬送される骨折患者が多くなったのです。外科医の任務はまず救命であり,救急外傷の一環として骨折治療が位置づけられました。おまけに,病院で修復と機能回復を待つことが歓迎されない制度下に外科医は生きる時代です。
では至芸の整復固定手技が高く評価されなくなったのか?
そうではありません。子供たちの骨折治療には,より注意深い配慮が求められます。その一方で,一分の狂いもない整復より,高齢者には早期の自立が必要になりました。こうした時代だからこそ,治療には鋭い読みと匠の技が求められているのです。
それにしても,医療の大変動がマックレ先生をして大改訂に踏み切らせたものと思います。全身管理・観血治療や国際的なAOシステムが第4版に大幅に組み込まれたのはその故でしょう。日本版「骨折治療の進め方」を産み育て,若手の整形外科医を育成してきた山本君に,さらなる苦労を強いたのが増補改訂のこの部分でした。おかげで実用の書が,整形外科医はもとより,広く外傷外科医にも必携の教本となったのですが。
改訂にふさわしい新メンバーも得られました。幸い宮内君という優秀な若手が第4版の翻訳陣に加わり,救命救急の項はベテランの木村眞一先生(元大阪厚生年金病院救急部長)に目を通してもらいました。ありがたいことに,マックレ先生のイラストの腕も,親切で一貫した解説の冴えも失われていません。すでに歴史的な業績になりましたが,ベーラー,キュンチャーあるいはワトソン・ジョーンズの骨折治療書に比肩する出来映えです。
整形外科医はもとより,ひろく外科を志す医師に良書として推薦する所以です。
追記
嬉しいことに,山本利美雄先生は,2007年度,日本整形外科学会の学会功労賞を受賞されました。この骨折治療書シリーズが,整形外科の土壌を豊かにした功績も評価されたに相違ありません。
2008年1月
小野啓郎
目次
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A:総論
1. 骨折の病態と骨折治癒
2. 骨折の診断と治療の原則
3. 骨折の徒手整復とギプス固定
4. 開放骨折: 内固定
5. 骨癒合に影響する因子,合併症および病的骨折
B:各論
6. 肩甲帯および上腕骨
7. 肘の損傷
8. 前腕骨骨折
9. 手関節および手
10. 脊椎
11. 骨盤,股関節および大腿骨頚部の骨折
12. 大腿骨骨折および膝関節周辺の損傷
13. 脛骨骨折
14. 足関節部の損傷
15. 足部の損傷
16. 骨折外来
欧文索引
和文索引
1. 骨折の病態と骨折治癒
2. 骨折の診断と治療の原則
3. 骨折の徒手整復とギプス固定
4. 開放骨折: 内固定
5. 骨癒合に影響する因子,合併症および病的骨折
B:各論
6. 肩甲帯および上腕骨
7. 肘の損傷
8. 前腕骨骨折
9. 手関節および手
10. 脊椎
11. 骨盤,股関節および大腿骨頚部の骨折
12. 大腿骨骨折および膝関節周辺の損傷
13. 脛骨骨折
14. 足関節部の損傷
15. 足部の損傷
16. 骨折外来
欧文索引
和文索引
書評
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整形外科疾患で最頻疾患の「骨折」治療のバイブル
書評者: 菅本 一臣 (阪大大学院教授・運動器バイオマテリアル学)
超高齢化社会の到来とともに整形外科医に求められるニーズは年々高くなっている。またそれに伴い診断法および治療法も著しい進歩を遂げてきた。関連分科学会は増加する一方で,人工関節,関節鏡治療など学会上の展示ブースを見るだけでもいかに盛況かが分かろう。
それに比べて骨折の治療には必ずしもまぶしい脚光が浴びせられてきたとは言い難い。整形外科医が骨折を重視しなくなってきたのはいつごろからであろうか? 骨折は既に学問的には新鮮味に欠けるからなのであろうか。
しかし昨年度の大腿骨頚部骨折は12万例を超え,さらに骨折すべての総数になると,正確な数字はないもののおそらく数百万例が毎年発生していると思われる。骨折は依然として整形外科疾患の中で最も頻度の高い疾患といえよう。このような疾患をおろそかにすることは,漁師が釣りを止めるようなものである。
整形外科医にとって今一度骨折を基本に戻って学習することは,プロ野球選手が春先にキャンプを張るようにそのシーズンに活躍する上で必要なことと思われる。一方,これから専門医を目指す者にとっては,まさに漁師の卵が釣りのやり方を覚えるのと同じで論をまたない。しかし,現在のみならず過去においても骨折の臨床を外来診察,正確な診断,治療方法の選択,後療法にまでわたって体系的にわかりやすく解説した書籍は少なかった。
本書はその中でそれらをすべて満足させる唯一のものといってよく,第1版の出版からすでに20年以上を経過しているにもかかわらず,今読んでみても新鮮な気持ちで知識を吸収できることに驚きを禁じえない。骨折治療のバイブルといっても過言ではなかろう。
医療は「新」のみがもてはやされがちであるが,「真」がいかに重要かを私達に教えてくれているのも本書である。
25年前,研修医であった自分が先輩の先生からご指導を仰ぎ,第1版の翻訳のお手伝いをさせていただいたことが非常に懐かしく思い出される。よくできた書であったので,その後自分ひとりで外来をやり始めたころには,本書を横に置きながら時々見てはフムフムと納得したものである。
本書がこのたび第3版の改訂が行われ,内容がさらに充実したものとなっている。この機会に外来診療において時々チラチラ見ながらまた役立てたいと思う。
頭と “こころ” に効く骨折治療の座右の書
書評者: 角南 義文 (竜操整形外科病院院長)
骨折の治療では,骨折の発生したメカニズム,目に見えない合併損傷,その肢を再建するのにいかに生体力学的知識を応用するかなど,いわば自分の頭と “こころ” で治療方針を決める機会の多い奥深いものである。
そのためには,解剖学,生理学,生体力学を学んでおき,症例検討会で平素から各骨折の整復・固定,機能訓練(保存的にしろ,手術的治療にしろ)のイメージトレーニングを心がけておかねばならない。
本書には新しく著者,訳者が加わり,内容は約100頁増量しており,X線像が一部明瞭なものに取り換えられ,CT像も入った。図版には網かけをして一段と見やすくなっている。前半には骨折と骨折治療の基本的事項,後半は各論の中にAO分類が適宜挿入されている。
日本でも増えている老人大腿骨頚部骨折では,基本的なDHS固定の詳細とは別にMultipleピンニング法,人工骨頭,THA,この版ではバイポーラ人工骨頭,ガンマネイル法も紹介されている。
上腕骨近位部骨折ではNeer分類も紹介されているので,大腿骨転子間骨折の安定型,不安定型と,実際の治療に役立つEvans分類もAO分類以外にも挿入してもらいたかった。
本書はもともと医学生を対象にしたものとのことであるが,「骨折治療の基本手技を実際の手順通りに絵入りで解説」「保存的治療を基本に―とりわけ子供の骨折を重視」「成人の長管骨骨折では保存的治療と観血的治療の両者に目配りを」(監訳者の序)が理解しやすく解説してあり,医学生どころか整形外科医,特に初心者に大いに役立つものである。
私どもが初心者であった頃は,De PALMA “The Management of FRACTURES and DISLOCATIONS” が急患時に慌てて見入った書であった。本書はこれに類しているようであるが,総論と各論各章の絵とは別に,解説をよく読んでから図を見て考えることをお薦めしたい。急患を目の前にして絵だけを見て治療にあたるべきでない。それは骨折治療の “こころ” ではない。
本書を読むと,若き日にCharnley “THE CLOSED TREATMENT of COMMON FRACTURES” を読んだときの考える悦びと感動を思い出す。
骨折治療を志すすべての医師の座右の書としてお薦めしたい。
書評者: 菅本 一臣 (阪大大学院教授・運動器バイオマテリアル学)
超高齢化社会の到来とともに整形外科医に求められるニーズは年々高くなっている。またそれに伴い診断法および治療法も著しい進歩を遂げてきた。関連分科学会は増加する一方で,人工関節,関節鏡治療など学会上の展示ブースを見るだけでもいかに盛況かが分かろう。
それに比べて骨折の治療には必ずしもまぶしい脚光が浴びせられてきたとは言い難い。整形外科医が骨折を重視しなくなってきたのはいつごろからであろうか? 骨折は既に学問的には新鮮味に欠けるからなのであろうか。
しかし昨年度の大腿骨頚部骨折は12万例を超え,さらに骨折すべての総数になると,正確な数字はないもののおそらく数百万例が毎年発生していると思われる。骨折は依然として整形外科疾患の中で最も頻度の高い疾患といえよう。このような疾患をおろそかにすることは,漁師が釣りを止めるようなものである。
整形外科医にとって今一度骨折を基本に戻って学習することは,プロ野球選手が春先にキャンプを張るようにそのシーズンに活躍する上で必要なことと思われる。一方,これから専門医を目指す者にとっては,まさに漁師の卵が釣りのやり方を覚えるのと同じで論をまたない。しかし,現在のみならず過去においても骨折の臨床を外来診察,正確な診断,治療方法の選択,後療法にまでわたって体系的にわかりやすく解説した書籍は少なかった。
本書はその中でそれらをすべて満足させる唯一のものといってよく,第1版の出版からすでに20年以上を経過しているにもかかわらず,今読んでみても新鮮な気持ちで知識を吸収できることに驚きを禁じえない。骨折治療のバイブルといっても過言ではなかろう。
医療は「新」のみがもてはやされがちであるが,「真」がいかに重要かを私達に教えてくれているのも本書である。
25年前,研修医であった自分が先輩の先生からご指導を仰ぎ,第1版の翻訳のお手伝いをさせていただいたことが非常に懐かしく思い出される。よくできた書であったので,その後自分ひとりで外来をやり始めたころには,本書を横に置きながら時々見てはフムフムと納得したものである。
本書がこのたび第3版の改訂が行われ,内容がさらに充実したものとなっている。この機会に外来診療において時々チラチラ見ながらまた役立てたいと思う。
頭と “こころ” に効く骨折治療の座右の書
書評者: 角南 義文 (竜操整形外科病院院長)
骨折の治療では,骨折の発生したメカニズム,目に見えない合併損傷,その肢を再建するのにいかに生体力学的知識を応用するかなど,いわば自分の頭と “こころ” で治療方針を決める機会の多い奥深いものである。
そのためには,解剖学,生理学,生体力学を学んでおき,症例検討会で平素から各骨折の整復・固定,機能訓練(保存的にしろ,手術的治療にしろ)のイメージトレーニングを心がけておかねばならない。
本書には新しく著者,訳者が加わり,内容は約100頁増量しており,X線像が一部明瞭なものに取り換えられ,CT像も入った。図版には網かけをして一段と見やすくなっている。前半には骨折と骨折治療の基本的事項,後半は各論の中にAO分類が適宜挿入されている。
日本でも増えている老人大腿骨頚部骨折では,基本的なDHS固定の詳細とは別にMultipleピンニング法,人工骨頭,THA,この版ではバイポーラ人工骨頭,ガンマネイル法も紹介されている。
上腕骨近位部骨折ではNeer分類も紹介されているので,大腿骨転子間骨折の安定型,不安定型と,実際の治療に役立つEvans分類もAO分類以外にも挿入してもらいたかった。
本書はもともと医学生を対象にしたものとのことであるが,「骨折治療の基本手技を実際の手順通りに絵入りで解説」「保存的治療を基本に―とりわけ子供の骨折を重視」「成人の長管骨骨折では保存的治療と観血的治療の両者に目配りを」(監訳者の序)が理解しやすく解説してあり,医学生どころか整形外科医,特に初心者に大いに役立つものである。
私どもが初心者であった頃は,De PALMA “The Management of FRACTURES and DISLOCATIONS” が急患時に慌てて見入った書であった。本書はこれに類しているようであるが,総論と各論各章の絵とは別に,解説をよく読んでから図を見て考えることをお薦めしたい。急患を目の前にして絵だけを見て治療にあたるべきでない。それは骨折治療の “こころ” ではない。
本書を読むと,若き日にCharnley “THE CLOSED TREATMENT of COMMON FRACTURES” を読んだときの考える悦びと感動を思い出す。
骨折治療を志すすべての医師の座右の書としてお薦めしたい。
更新情報
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