臨床にいかす心理療法

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臨床心理療法の歴史から実践までを網羅したテキスト。人間の心がどのように形成されるのか,人は自分の心をどのように守ろうとするのかをわかりやすく解説し,交流分析をはじめ,さまざまな心理療法についての要点と進め方を簡潔に示している。心理療法を学ぶために,また患者を知るためにも活用できる書。
白井 幸子
発行 2004年04月判型:B5頁:200
ISBN 978-4-260-33331-3
定価 2,420円 (本体2,200円+税)
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  • 目次
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1 臨床心理学の歩み
2 人間の心の成り立ち
3 交流分析を用いた症例
4 人は自分の心をどのように守るか
5 さまざまな心理療法
6 心理療法の進め方
あとがき
索引

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困難に直面したときにこそ実践したい心理療法
書評者: 飯田 澄美子 (聖隷クリストファー大学看護学部大学院教授)
 本書の著者である白井幸子氏は,米国に留学後,1972~1976年まで「東京いのちの電話」の主事をされ,1976年からは国立療養所多摩全生園のカウンセラーとして活躍された.そしてこの間,看護者を対象とした著書を次々と出版されている。

 私は当時,カール・ロジャーズのカウンセリングを学び,病院・学校・地域で看護者として,またカウンセラーとして実践を行なっていた。そのため,援助の方法,技法を幅広く学びたいと思い,交流分析の体験学習に参加することが多くなった。そこで,白井氏との出会いがあり,今日までよき指導者,よき友人として,多くの内容,技法を学び,態度・生き方を含めて学ばせていただいてきた。

 本書は,白井氏が1999年にルーテル学院大学に就任し,臨床心理士の教育を担当されることになってからまとめられ,出版されたものである。序文で「人生において,私たちは誰でもさまざまな問題,心配事,困難に出会います。鍵となるのは,それらの困難にどのように対応するかということです。どうしたら,正面からそれに取り組み,将来に希望をつなぐことができるか。また,いかにしたら,その経験を通していっそう成熟した自己に到達することができるか。そのために役立つと思われる心理療法の技法のいくつかを紹介しました」と書かれているように,交流分析をはじめ,その他の理論と方法にも触れられている。

 それらは,白井氏がさまざまな臨床心理療法のセミナーやワークショップで学ばれ,臨床心理の現場で役立つと感じられた考え方や技法も含めて紹介されている。単なる理論,実践の紹介ではなく,著者自身が実際に体験され,実践された内容が相手とのかかわりを通し,生きた内容として伝わってくる。

 本書は次の6章で構成されている。

(1)臨床心理学の歩み
(2)人間の心の成り立ち
(3)交流分析を用いた症例
(4)人は自分の心をどのように守るか
(5)さまざまな心理療法
(6)心理療法の進め方

 特に(6)の内容には,1.クライエントにペース合わせをし,信頼関係を築くこと,2.クライエントの訴えをまず受容し,傾聴し,認めること,が挙げられている。援助者側に対しては,相手とのかかわりのなかでの自己の気付きの大切さが挙げられている。

 本書は,人々の援助にかかわる看護師にとって,臨床心理士とともに多くの学びが得られると思う。ぜひ一読をおすすめしたい。

(『看護学雑誌』Vol. 68 No. 12より)

よりよいこころのケアをめざして
書評者: 加賀城 惠一 (瀬戸内海病院小児科)
◆臨床現場で求められているのは病む人々のこころへの配慮

 国語辞典によれば,臨床という言葉は,1)病人の床のそばにゆくこと,2)実際に病人を診察・治療することという2つの意味が記されている。本書のタイトルの場合は広義の前者の意味に理解される。したがって,この心理療法の生かされる場は実に多岐にわたるものであり,病人とのかかわりを持つすべての人々を意識してのものであろう。

 その臨床の場において今求められているもの,それは病む人々のこころに対する配慮であるということを痛感させられるようになって久しい。しかし現実には全人医療といった言葉も虚しく響き,こころの問題は蔑ろにされる状況が続いている。そうした時,このようにコンパクトで平易に書かれたテキストが出版されたことは誠に喜ばしいことである。

◆マニュアルとしても有効

 これまでに出版されてきた著者の「看護にいかすカウンセリング」をはじめとする3著作が,文字通り看護職を主な対象したものであり,交流分析,ゲシュタルト療法を中心としたコミュニケーションを柱としていたのに対し,今回は解決志向型短期療法,神経言語プログラミングにもページが割かれ,さらには牧会カウンセリングの紹介までなされてさらに広がりが見られるようになった。日ごろ臨床牧会に携わっている者にとっては誠に力を得た感がある。臨床の場においては,医師・看護師といった医療職と臨床心理士,さらにはスピリチュアル・ケアにあたるチャプレインなどのコラボレーションによってなされることが,全人医療のめざすところである。だが,実際にそれは手の届かない理想ということが多く,一人のクライアントを前にした時には,医療職が自分の力量をわきまえたうえで誠実な対応をなすことが求められる。ガイドラインあるいはマニュアルとして本書は有用で,行間にはカウンセリング・マインドもちりばめられている。

 複雑化する医療の中にあって医療従事者のこころの問題にも目が向けられなければならない。その思いをかかえた同労者間で相互の癒しが図られるためにも日頃の学びが必要となる。あるいはキリスト教会における牧会者,さらには問題を抱えた人々との学び,地域の母親学級におけるテキストとして利用され得る機会も枚挙にいとまがない。より多くの人々に用いられ,よりよいこころのケアに結びつくことが期待される。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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