EPS 第2版
臨床心臓電気生理検査

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心臓電気生理検査の基本的手技、三次元マッピング法、高周波アブレーション治療の最新の知見など、全域を網羅したEPS実践テキストの決定版。第2版ではelectroanatomical mappingを中心とした三次元マッピング法の解説を新章に設け、また第一線の執筆者が最新の進歩を盛り込み改訂を行った。心臓電気生理検査・カテーテルアブレーションに携わる医師のための標準的テキスト。
編集 井上 博 / 奥村 謙
発行 2007年03月判型:B5頁:512
ISBN 978-4-260-00294-3
定価 14,300円 (本体13,000円+税)

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第2版 序

執筆者/井上 博・奥村 謙(編者)



 本書の初版は平成14年9月に上梓された。幸い,多くの読者を得ることができ,わが国の心臓電気生理検査の標準的なテキストとしての地位を確立したように思われる。上梓以来3年が経過し,この間に得られた知見を追加し,版を改めることになった。

 基本的な章立ては初版を踏襲し,それぞれの章において加筆,修正を行った。またelectroanatomical mappingを中心とした「三次元マッピング法」を新たな章として追加し,全体で20章,ページ数は初版より約30ページ増となった。おそらく臨床心臓電気生理検査やカテーテルアブレーションに携わる医師にとって新たな標準的なテキストとなったのではないかと思う。

 心臓電気生理検査自身の進歩,そしてその応用であるカテーテルアブレーションの出現によって,心臓電気生理検査はほぼ完成の域に達したかの感がある。WPW症候群の房室回帰性頻拍,房室結節リエントリー性頻拍,心房粗動,ベラパミル感受性や流出路起源の特発性心室頻拍のほとんどは高周波エネルギーを用いたアブレーションにより根治可能であり,最近では肺静脈アブレーションによって発作性心房細動ばかりでなく持続性心房細動すらも根治できるようになった。頻脈の発生部位あるいは興奮旋回を維持するのに必須な峡部を見つけ,そこにアブレーションを行うことにより,頻脈の根治を図るわけである。若い方はアブレーション至適部位の探索はいともたやすいことと思われるかもしれないが,この手技の確立は専門家の地道な努力,ひらめきによるところが大きい。

 「温故知新」という。年寄りの懐旧趣味ではなく,これまでに先人たちが積み上げてきた心臓電気生理学の膨大な知識の中に,明日の新たな治療法や診断法のヒントが潜んでいる可能性が大いにある。昨今の例を挙げれば,心房細動のアブレーション部位の指標として,CFAE(complex fractionated atrial electrograms)が注目されている。この電位は局所の伝導遅延,興奮旋回を反映すると考えられるが,このような現象は1970~80年代に動物の心筋梗塞後の心室頻拍モデルで報告されているものと共通している。アブレーションによって頻拍が根治できるようになり,薬物療法しかなかった時代に比べ患者さんの満足度は大きく向上した。その反面,若い人たちは電気生理現象の成り立ちに興味をあまり示さなくなっているのではないかと,編者は危惧するものである。本書を座右に置き,ことあるごとに紐解き,日常の電気生理検査,ひいては臨床心臓電気生理学の発展に役立てていただければ編者としてこの上ない喜びである。

 改版の企画からわずか1年という短期間で上梓までこぎ着けることができた。多忙の中また短期間の間に加筆,修正あるいは執筆いただいた執筆者各位に御礼申し上げる。また第2版の作成に当たり,お世話になった医学書院の関係者の皆さんにも御礼申し上げたい。

 平成19年1月

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1章 はじめに-電気生理検査の歴史
2章 電気生理検査総論-手技・装置
3章 三次元マッピング法
4章 電気生理検査総論-計測・評価
5章 洞不全症候群
6章 房室ブロック-房室伝導の種々の現象を含む
7章 心室内伝導障害
8章 房室結節リエントリー性頻拍
9章 房室結節リエントリー性頻拍以外の上室頻拍
10章 副伝導路症候群
11章 心房粗動・細動
12章 心室頻拍・細動
13章 QT延長症候群・Brugada症候群・QT短縮症候群
14章 抗不整脈薬の薬効評価
15章 神経調節性失神-関連の病態を含む
16章 心停止からの蘇生例の評価
17章 ペースメーカー
18章 植込み型除細動器
19章 術中電気生理検査と外科手術
20章 カテーテルアブレーション
索引

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自家薬籠中の指導書として使いこなしたい一冊
書評者: 杉本 恒明 (関東中央病院名誉院長)
 『EPS臨床心臓電気生理検査 第2版』を恵与いただいた。書評の依頼は勉強せよということである。喜んでお引き受けした。ところで,本書は改訂版である。第1版は2002年に上梓された。この5年間に何が,どのように変わったかがみられなければならない。まず,章建てについては,三次元マッピング法の章が加わっていた。CARTO法である。第1版でも章の中で触れられていたが,これが独立した章となった。全体に,執筆者は概ね,同じであるが,多くの章で,追加の記述がみられていた。当然ながら,文献は新しい。変更のない章も図表の配置が工夫されて,一変し,読みやすくなっていた。比べていて,第1版にあった編集者による「あとがき」がなくなっているのに気がついた。読み直すと,じつにいい文章である。捨てるには惜しい。そこで,この機会にその一部を再録させていただく。

 「心臓電気生理検査は面白い。期外刺激で頻拍発作が再現され,刺激によって頻拍が停止する。それだけで興奮を覚えたものである。頻拍中に加えた刺激に対するさまざまな反応の機序を考えるのは,パズルを解くのに似た知的作業である。未知の現象を見いだし,その理屈を推測する。しかも最近はアブレーションによりその推理の妥当性を証明できるようになった。これから臨床心臓電気生理検査を学ぼうとする若い人たちには,新知見を発見してみせるという気概を持っていただきたいと思う。検査をするだけで新知見が得られたのは過去のことである。何故か? もっとよい方法や指標はないのか? といった問題意識を持って検査に臨めば,新知見発見の醍醐味を味わえるかも知れない」

 若かった時代のお二人の編集者の興奮と感動,そして意気込みが伝わってくるような文章である。こうした人々が育んできた問題意識が今日の電気生理学を確立し,ひいては本書の刊行に結実したともいえるのであろう。

 本書はまず,電極カテーテルの解説から始まる。次がその血管内導入の手技である。心腔内のカテーテル位置を確認し,電位を記録する。電気刺激を入れる。この一連の操作によって,心臓あるいは不整脈の電気生理学的特性を調べることができる。この知識を基礎として,洞不全症候群,房室ブロック,心室内伝導障害などの徐脈性不整脈,上室頻拍,副伝導路症候群,心房粗動,心房細動,心室頻拍,心室細動などの頻脈性不整脈の発生機転,QT延長症候群などの不整脈基質が明らかになる。この応用が,薬物の薬効評価,心停止蘇生例,神経調節性失神の鑑別診断である。次は治療である。徐脈性不整脈にはペースメーカが用いられ,頻脈性不整脈に対しては,植え込み型除細動器,外科的手術治療,そしてカテーテル・アブレーションがある。すべてが電気生理学的ガイド下に行われる治療法である。

 こうしてみると,今日,不整脈の研究,診断,治療の基本にはヒトにおける心臓電気生理検査があることを痛感する。本書はそのような検査の手技,理論,解釈を具体的に解説するばかりでなく,さらに次の展望までにも示唆を与えてくれている。不整脈に関心を持ち,その診療を標榜する医師としては,熟読吟味して,内容を自家薬籠中におかれるべき指導書である。そして,それがあってこそ,一層,「心臓電気生理検査は面白い」。こうして検査の真骨頂に魅せられて,多くの不整脈専門医が育っていくことを,編集者も,評者も心から願っている。

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