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消化器内視鏡スタッフマニュアル

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患者にとって有益な“消化器内視鏡検査・治療”を実践するために、スタッフが身につけておくべき知識、臨床現場で生きるノウハウが満載された書。教科書だけではなかなか学べない実践を中心に、著しく進歩しつつある新しい技術についてはもとより、リスクマネジメント、患者の満足度の向上の視点から、医療者に何が求められているかについてまで、わかりやすく解説。内視鏡に携わる医療者必読の書。
監修 光島 徹 / 田辺 聡
編集 松本 雄三 / 木下 千万子
発行 2008年05月判型:B5頁:328
ISBN 978-4-260-00397-1
定価 4,840円 (本体4,400円+税)
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監修の序序にかえて

監修の序
 私が千葉県鴨川市にある医療法人鉄蕉会亀田総合病院に,常勤医として入職したのは1983年(昭和58年)1月である。当時の亀田総合病院は,658ベッド,常勤医師およそ20人の一地方病院にすぎなかったが,現在では1,000ベッド,常勤医師358人を数える大病院に成長した。さらに1990年4月には,千葉市幕張に消化器内視鏡検診を売り物とする人間ドック専門施設(亀田総合病院附属幕張クリニック)を開設し,現在に至っている。亀田グループの成長と歩調を合わせるように,初年度はわずか3,307(上部2,349,大腸958)件にすぎなかった我々の消化器内視鏡の検査件数は年々増加の一途を辿り,2007年度は鴨川,幕張合わせて43,741(上部27,879,下部15,862)件に達した。
 本書の編集を担当し,執筆者の一人でもある松本雄三君は,私が入職した同じ年,1983年4月に亀田総合病院に入職された。それから25年,4半世紀が過ぎた。彼の内視鏡コメディカルとしての歩みは,そのまま我々亀田グループ消化器内視鏡の歴史である。研修病院の宿命にて毎年のように替わる検査医,急増して待ち時間が長くなり苦情を訴える患者など過酷な環境のなか,検査のクオリティーを保ちながら効率よく円滑に検査を進めていくことは至難の業であった。この不可能を可能にするに等しい困難な業務をこなしていくうちに,松本君および彼をリーダーとする内視鏡コメディカルたちは,まさしくプロフェッショナルと呼ぶにふさわしい専門家集団に成長して
いった。
 我々の消化器内視鏡は,彼ら熟練した内視鏡コメディカルたちの助けがなければ,1日たりとも成り立たない。我々の施設においては,彼らの仕事は単に検査を安全に効率よく処理していくことにとどまらない。検査の介助に劣らず重要な彼らの業務は,研修医の教育である。我々の施設には,特に大腸内視鏡の技術習得を目的として,全国から多くの研修医が集まる。しかし,我々の施設においては毎日の検査件数が著しく多く,上級医がいちいち研修医の検査に立ち会って指導するのは不可能である。そこで上級医の指示のもと直接研修医の指導にあたるのは,松本君をはじめとする熟練した内視鏡コメディカルたちである。彼らは未熟な研修医の検査を受ける被検者の被害をなるべく小さくするために,初心者にはなるべく難易度の低そうな被検者を選んだり,盲腸への到達が遷延したり被検者の苦痛が強い場合は自らの判断にて上級医への交代を宣告するなど,積極的な介入を行う。また研修医が困難に遭遇した際には,スコープ操作のアドバイスや用手圧迫を,被検者に不安を与えないように配慮しながら実施する。以上のような内視鏡コメディカルの指導によって,我々の施設においては,現在までに190人に及ぶ大腸内視鏡熟達医が育った。
 本書は松本君のほか,我が国を代表する熟練した内視鏡コメディカルの面々が中心となって執筆にあたった,今までに例のないコメディカルによるコメディカルのための本である。日夜内視鏡業務に奮闘されているコメディカルの皆様には,是非本書を座右において,毎日の指針にしていただきたい。

 2008年4月 
 亀田総合病院幕張事業部統括委員長
 光島 徹


序にかえて
―消化器内視鏡スタッフマニュアルをご利用いただくにあたって―
 このたびは,消化器内視鏡スタッフマニュアルを手にとっていただき,ありがとうございます。本書をご利用いただくにあたって,本書の企画趣旨ならびに本書を編集するに際して留意したことなどを述べておきたいと思います。
 本書は,消化器内視鏡診療に携わる医療スタッフ,特に消化器内視鏡技師や看護師などコメディカルスタッフを対象に,安全な消化器内視鏡診療の推進およびスタッフの質の向上を目指す書として企画されました。
 消化器内視鏡診療は,非常に進歩の著しい領域であり,常に新しい知識・技術の習得が求められます。内視鏡スタッフは,内視鏡専門の医療技術者として,日ごろの個々のスキルアップを欠かすことはできません。また,近年は内視鏡診療の高度化・複雑化に伴う偶発症,さらには医療紛争の問題も避けては通れない時代です。医療安全や顧客満足度の向上といった視点は,消化器内視鏡スタッフとしても不可欠となってきています。本書における顧客満足の顧客とは,外部顧客として受診者・受診者家族に対してはもちろんのこと,内部顧客として同僚や他の病院職員に対しての配慮も意味しています。というのは消化器内視鏡スタッフを取り巻くすべての人々に対する思いやりが,リスクマネジメントやチーム医療の促進に直結するからです。したがって,本書はキーワードを「スキルアップ」,「医療安全」,「顧客満足」として編集を考えました。
 本書を編集するにあたり,私が真っ先に協力を依頼した人物が,神奈川県にあります淵野辺総合病院に勤務する木下千万子さんです。木下さんは,内視鏡スタッフとして卓越した技量を備えるベテラン看護師であり,かつ日本消化器内視鏡技師会の役員として,長年全国の内視鏡スタッフの質的向上に貢献してきました。木下さんに企画の意図を説明し協同編集を相談したところ,快くお引き受け下さいました。私の最も尊敬する業界の大先輩,木下さんのお力添えにより,本書の目次立て・執筆体制が整いました。
 もちろん,これまでにも消化器内視鏡コメディカル向けのテキスト本は,いくつか刊行されており,どれも臨床に役立つものばかりです。しかしながら,本書の目次立ては従来のものと若干異なっていることにお気づきではないでしょうか。単に消化器内視鏡診療の介助テクニックだけでなく,医療従事者として共通に備えておくべき心がけや知識,技術も内視鏡スタッフ向けにアレンジして載せました。また目次立てからも本書のキーワードである「スキルアップ」,「医療安全」,「顧客満足」を感じ取ることができるのではないかと思います。
 各単元の執筆者は,どちらもその分野に精通した第一人者であり,日ごろより「もっとよくできないか」を追求しているコメディカルたちが中心です。その思想やテクニックを文章にすることは至難の業と承知しつつ,執筆者には,できる限り現場で役立つ読みやすい本になるよう配慮していただきました。刷り上がりをみても本書は,図表・チャート・イラスト・写真を多用して,箇条書きを中心にした利用者の感覚に訴えるような構成になっていると自負しています。
 実は,本書が企画されてから発刊されるまでに数年間かかっています。その間,医療制度もめまぐるしく変化し,内視鏡診療の手法も本書の内容よりも進歩したものもあると思います。しかし,今後どのような新しい手技・デバイスが開発されても,本章の随所に掲載されている消化器内視鏡スタッフがもつべき基本的な考え方は普遍であると確信します。
 内視鏡診療に限らず医療行為は施設によって多少の手順の違いはあるものです。そして本来,マニュアルは,施設の環境・医療レベル・スタッフの構成などを考慮しつつ,自分たちで自分たちにあったものを作るべきと考えます。またマニュアルは,「これが絶対」というものではなく,環境の変化によって日々改定されていくべきものです。本書は,各施設のマニュアル作成・マニュアル改定の際にも役立つものと考えています。あるいは日ごろのスタッフ勉強会の教材としての使用法もあるかと思います。
 いずれにしても本書は決して図書館や図書室に飾られるような本ではなく,内視鏡の診療現場に無造作に置かれ,頻繁に見返していただけるような存在であることを望みます。本書が,消化器内視鏡スタッフにとって「手元にあると安心できる一冊」となれば望外の喜びです。
 最後に本書の出版にあたって,監修の労をとって下さいました光島徹先生,田辺聡先生に厚く御礼申し上げます。また,医学書院の安藤恵さん,川村静雄さんには大変お世話になりました。心から感謝いたします。

 2008年4月 
 亀田総合病院 内視鏡検査室 
 松本 雄三

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I章 安全で快適な内視鏡を提供するために
1 職場環境の整備
 A 内視鏡室のレイアウト
 B 内視鏡室の備品・薬品管理
 C 内視鏡機器の管理
 D 医療スタッフのコミュニケーション
2 内視鏡室のリスクマネージメント
 A 感染対策の基本
 B 内視鏡洗浄・消毒ガイドライン
 C 内視鏡検査・治療に伴う偶発症
 D 凝固系阻害薬剤と休薬期間
 E 説明用紙・説明同意書
 F 合併症のある患者の内視鏡―疾患ごとに異なる内視鏡の注意点
 G 転倒・転落防止
 H 心電図モニターの基本
 I 検体の取り扱いと取り違い防止策
 J 放射線被ばく防護

II章 受診者が満足する内視鏡検査を提供するために
1 精神的・身体的苦痛の緩和をはかる援助
 A 受診者との情報共有
 B 注射の基本
 C 前処置・前投薬の実際
2 スクリーニングを目的とした内視鏡検査
 A スクリーニング内視鏡の意義
 B 内視鏡の受付と事務
 C 上部消化管内視鏡検査
 D 大腸内視鏡検査
3 複合的な内視鏡検査
 A 内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)
 B EUSとEUS-FNA
 C 小腸内視鏡検査

III章 確実な内視鏡治療を援助するために
1 医師がコメディカルスタッフに求めるもの
2 食道・胃静脈瘤内視鏡治療
3 早期食道がん内視鏡治療
4 早期胃がん内視鏡治療
5 早期大腸がん内視鏡治療
6 内視鏡的胃瘻造設術と交換
 A 経皮内視鏡的胃瘻造設術
 B 胃瘻キット交換
7 消化管のブジー拡張・ステント挿入
8 異物除去

IV章 救命救急のために
1 消化管出血に対する内視鏡的止血術,ほか関連手技
2 閉塞性黄疸に対するEST・胆管ドレナージ,ほか関連手技
 A EST
 B (経乳頭的)胆管結石除去術
 C 内視鏡的逆行性胆管ドレナージ術

V章 保険について
 内視鏡検査・治療の保険について

索引

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医師・コメディカル双方に役立つ内視鏡診療の書
書評者: 田中 信治 (広島大教授・内視鏡医学)
 このたび,消化器内視鏡の大家である光島徹先生と田辺聡先生の監修のもと,松本雄三氏,木下千万子氏の両氏の編集により『消化器内視鏡スタッフマニュアル』が発刊された。

 これまで多くの消化器内視鏡診療に携わるスタッフのためのマニュアルは発刊されているが,その多くが医師あるいはコメディカルを対象としたものである。本書の最大の特徴は,医師・コメディカル全体を対象としたマニュアルであり,医師が読んでもコメディカルが読んでも非常に参考になるガイドブックであることである。しかもその内容が素晴らしい。一般に,医師の興味は内視鏡診療の実際に,コメディカルの興味は診療のサポート面に傾きがちであるが,本書は,内視鏡検査室の環境整備,医師とコメディカルのコミュニケーション,患者の心情・プライバシーを含めて,リスクマネジメント,最先端の内視鏡診療の実際まで細部にわたってわかりやすく記述されている。

 近年の内視鏡医学の進歩により,内視鏡や周辺機器は複雑で多彩なものとなっているし,内視鏡診療の内容も非常に高度で専門的なものになっている。また,高齢化社会に伴い合併症をもった患者さんや種々の薬剤を内服している患者さんも多い。内視鏡診療に関する問診やインフォームドコンセント,クリティカルパスなども非常に重要な時代になっている。本書は,とかく内視鏡診療の実際のみにのめり込みがちな医師にとっては,ついうっかりしがちな内視鏡室全体の環境整備や患者さんに対する気遣いが痛いほどよくわかる内容であるし,コメディカルにとっては,現在の高度な内視鏡診療の実際が平易に確実に理解できる簡潔な解説がなされており,医師とスムーズな連携をとるための知識が確実に習得できる構成になっている。

 内視鏡診療の内容が日々進歩し高度な技術を要するとともに,常に偶発症と背中合わせで診療している中で,医療に対する社会の目も厳しくなっており,医師・コメディカルに要求されている負担はますます大きなものになりつつある。このような背景において,本書はまさに時を得た発刊である。医師もコメディカルも本書を熟読することで初心に帰り,不足している知識を補い,新鮮な気持ちを持ち,かつベストコンデションで内視鏡診療の現場に従事できることを確信する。つまり,患者さんにとっても,医師・コメディカルにとっても幸せになれる一冊である。本書が多くの内視鏡診療従事者に利用され,本邦の内視鏡診療の内容の充実と質の向上に寄与することを切に期待する。
消化器内視鏡「オールインワン」の指南書
書評者: 赤松 泰次 (信州大学医学部附属病院内視鏡診療部)
 内視鏡室は,医師,看護師,内視鏡技師,臨床工学技士,医療事務など,さまざまな職種のスタッフの協力によって運営されている。本書は主に内視鏡室に勤務するコメディカルスタッフを対象に発刊され,執筆者も医師だけでなく内視鏡の現場を熟知したベテランのコメディカルの方々が随所に担当しており,従来の医師主導のマニュアル本とは一線を画する秀書である。内容はきわめて実践的かつ具体的に分かりやすく解説されている。内視鏡室で勤務を始めて日が浅いコメディカルスタッフが消化器内視鏡全般にわたる知識を身に付けるためだけでなく,ある程度内視鏡室での勤務経験があるコメディカルスタッフにとっても,より専門的な知識の習得とスキルアップのために役立つと思われる。

 I章は「安全で快適な内視鏡を提供するために」と題して,内視鏡機器の管理や内視鏡室で取り扱う備品や薬品の説明の他,医療スタッフの連携やリスクマネジメントについて解説され,II章は「受診者が満足する内視鏡検査を提供するために」と題して,内視鏡検査の概要や介助のコツ,患者への配慮や観察のポイントなどが記載されている。III章は「確実な内視鏡治療を援助するために」,IV章は「救命救急のために」と題して,さまざまな内視鏡治療の概要と使用する処置具の解説および介助のコツが述べられている。さらにV章は「保険について」と題して,内視鏡スタッフが知っておくべき保険点数が一覧表にしてまとめられている。

 このように本書は,消化器内視鏡に携わるコメディカルスタッフにとって必要不可欠な知識がすべて網羅された「オールインワン」の指南書であり,すべての内視鏡室にぜひ1冊備えることを勧めたい。医師とコメディカルスタッフがそれぞれ共にレベルアップを図っていくことが,より安全で有益な内視鏡診療につながるものと確信する。

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