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こどものリハビリテーション医学 第2版

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新生児期、小児期におこる様々な疾患を解説(医学的診断・治療)し、そのリハビリテーションをプラクティカルにまとめている。さらに通園、就学の問題など、療育システムについて触れ、障害のあるこどものトータルなケアを目指している。小児期のリハビリテーションにおいて全国的にも評価が高い、横浜市のグループを中心に編集・執筆体制を組んでいる。
監修 陣内 一保 / 安藤 徳彦
編集 伊藤 利之 / 三宅 捷太 / 小池 純子
発行 2008年03月判型:B5頁:488
ISBN 978-4-260-00342-1
定価 10,450円 (本体9,500円+税)
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  • 目次
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第2版 序
監修者,編集者一同

 本書のルーツは,「総合リハビリテーション」誌の特大号として,1987年に刊行された「子供のリハビリテーション」にある。この特大号を基に「こどものリハビリテーション」が発刊され,それを大幅に改訂して,新たに「こどものリハビリテーション医学」が誕生した。本書はその改訂第2版である。
 この間,少子高齢化,医療技術の進歩,核家族化や都市部におけるコミュニティーの崩壊など,こどもを取り巻く社会環境の変化は著しいものがある。そのような状況下にあって,典型的な脳性麻痺児は激減し,重度・重複化が進むと共に,医療機器の開発・改良により濃厚な医療・介護を要する障害児。いわゆる「超重度障害児(超重症児)」が在宅生活を維持できるようになったことから,呼吸障害,摂食・嚥下障害の管理や訓練指導など,地域において医療対応の必要性がこれまでになく高まっている。
 これに伴って,保健所検診を起点とする早期発見・早期療育のルートは主に精神系発達障害に偏り,肢体系障害については,医療機関と療育期間の直接連携が求められるようになりつつある。本書はこのような背景を踏まえ,精神系発達障害や重症心身障害の療育に重点を置くと共に,最近社会問題化している被虐胎児症候群や福祉用具・住環境設備に関する最新の情報を加え,現実,療育現場で起こっている諸問題に対応できるように内容の充実を図った。
 また,この間に障害児を支える法制度は,1947年以来続いてきた「児童福祉法」によるサービスから「障害者自立支援法」へと転換した。これにより,こどもから成人へのスムーズな移行,重複障害への対応,地域性を重視する立場などから障害種別によるサービス体系が見直され,身体・知的・精神の障害種別や年齢を超えたサービスの一元化へと大きな一歩を踏み出した。しかし一方で,この転換は療育現場に様々な混乱をもたらしており,今後,それぞれの地域特性をふまえて療育システムの再構築を図ることが焦眉の課題となっている。本書の今回の改訂に当たっては,障害児に対するリハビリテーションの技術的な側面だけでなく,このような社会的背景をも考慮して実践的に編纂したつもりである。
 本書が,リハビリテーション関係者だけでなく,職種を問わず「こども」に関心をもつすべての人々に役立つものとなることを祈念すると共に,ご執筆いただいた多くの先生方ならびに医学書院の大野智志氏に心より御礼を申し上げる。
 2008年2月

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第1章 序論
第2章 発達の診断・評価/治療
第3章 運動系障害(肢体不自由)
第4章 精神系障害
第5章 感覚系障害
第6章 重症心身障害
第7章 その他の疾患
第8章 口腔ケア/摂食指導
第9章 補装具/環境整備
第10章 関連知識
索引

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小児リハの動向と問題を凝縮した1冊
書評者: 土肥 信之 (兵庫医療大教授・リハビリテーション医学)
 本書のルーツは雑誌『総合リハビリテーション』の特集号(1987年)であるが,今回9年ぶりに改訂され第2版として出版された。その背景には医学・医療の進歩や,こどもを取り巻く環境の変化,また障害者自立支援法の成立など法制度の大きな変化がある。全体は,10章から成り64人の執筆者から成っている。

 第1章の序論では,こどもの障害学,療育の原点/歴史的変遷/今後の方向,障害児をめぐる情勢/法制度,地域療育システム,通園療育,就学指導,家庭・親支援,障害と虐待について解説されている。こどもを取り巻く理念や環境の変化がうまくまとめられている。

 第2章の発達の診断・評価/治療では,運動,精神,言語,ADLについて新しい発達評価も織り交ぜて分かりやすく解説されている。治療は理学療法,作業療法,言語治療,心理療法の4分野から成る。中でも作業療法はその理念や手法とともに,多くの写真も載せられている。

 第3章は運動系障害である。脳性麻痺,二分脊椎,神経筋疾患,骨関節疾患,四肢の先天奇形と切断,分娩麻痺と定番の疾患群が並ぶ。概してオーソドックスな内容であるが,各所で行われている治療動向を知るにはよい。

 第4章は精神系障害がまとめられている。まず,発達障害児の療育総論,次いで知的障害,ダウン症候群,自閉症,注意欠陥/多動性障害,てんかんの項目が並ぶ。中でも自閉症は多くの紙面が割かれており,文献も数多く掲載されている。自閉症を取り巻く問題の難しさと広がりを示すものであろう。

 第5章の感覚系障害は視覚と聴覚の2本立てであり,こどものリハビリテーションへの重要性からみて,章として独立させたことは,編者らの識見である。

 第6章は重症心身障害である。社会との接点を考える上で,呼吸や栄養,嚥下など医療的なケアとそのシステム作りの重要性の高い障害である。具体的に書かれており,参考になる。

 第7章は心疾患,気管支喘息,腎疾患,水頭症,頭部外傷,熱傷,児童虐待,次いで,第8章は口腔ケア/摂食指導である。第9章は補装具/環境整備で,装具,福祉用具,住環境がその内容である。これらの新しい分野,最近注目を浴びている分野の基本的事項から応用まで述べられ,その概略を知ることができる。

 第10章は関連知識として,神経生理学的検査,脚延長,筋電義手,先天異常,遺伝カウンセリング,小児難病,NICU,性の問題など最新のトピックスが解説されている。

 以上,この書は,幅広く現在の小児リハビリテーションに必要な項目が網羅されている。通覧すると,今おかれている小児リハビリテーションの問題と動向がよく分かる。また文献も多く記載されているので,手がかりに調べることができるなど,小児リハビリテーションにかかわる多くの医療職に,入門書であり参考書として利用価値の高い本といえる。
リハビリテーション領域 10年間の発展を証明
書評者: 中屋 久長 (高知リハビリテーション学院長)
 本書は前版の発行から約10年を経過している。書の帯にあるように「待望の改訂版」である。またこの10年間の日本におけるリハビリテーション医学・医療の発展を如実に証明するものと思う。監修,編集,執筆者の方々のリハビリテーション思想が随所に感じられる大作である。

 EBM概念の台頭,医療情勢,社会の価値観の変化,時代のニーズなど,こどものリハビリテーションに要求される事柄は10年前と比較すると著しく変化している。本書はそれに的確に対応し,新しい知見・情報が掲載されている。

 章の構成は,第1章序論,第2章発達の診断・評価/治療,第3章運動系障害,第4章精神系障害,第5章感覚系障害,第6章重症心身障害,第7章その他の疾患,第8章口腔ケア/摂食指導,第9章補装具/環境整備,第10章関連知識とし,前版の12章から10章に縮小されているが,各章の細項目が増加してページ数は50ページ強増加となり,内容の充実がうかがわれる。前版では資料として掲載されていた地域療育や通園療育,就学指導,家庭支援については,第1章の序論にページを割いて多くの知見を記している。また,各論でも疾患に関する基礎知識や最新知見に留まらず,家庭や地域マネージメントに及ぶ包括的な対策まで解説されている。また,注意欠陥/多動性障害,住環境整備など昨今のトピックスも新たに取り上げている。

 さらに医療技術・医療機器の充実,発展に伴い,より重度障害児の増加に対応し,重症心身障害を独立した章として,医療ケアやリハビリテーションの詳細を述べている。発達診断・評価各論ではより科学的な視点から近年グローバル・スタンダードになっているGMFCSやGMFM,PEDI,WeeFIMなどの診断・評価手法なども紹介されている。リハビリテーションの推進に大きく関わる障害者基本法,障害者自立支援法や発達障害者支援法など制度についても分かりやすく解説されている。等々本書は,こどものリハビリテーションに関する情報を満載し,関係職に総体的な知見を提供するものである。また,こどものリハビリテーションを学習する諸学生や臨床医にとっても総合的な理解を得ることのできるものである。

 各章・各論の引用・参考文献も新しいものが多く,さらなる学習への水先案内として活用できる。本文2色刷り,図表,写真が多く読みやすくなっている。

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