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グラント解剖学図譜 [英語版CD-ROM付]  第5版

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図譜のわかりやすさで確固たる地位を築いてきた解剖学図譜原書第11版の翻訳。工夫された剖出面と実物を忠実に再現した図譜という、これまでの良さを引き継ぎつつ、CT、MRI、血管造影などの画像を大幅に増やし、臨床にも役立つ構成となった。簡潔な解説と表が充実し、教科書的な使用にも好適。図譜の約半数とUSMLEの問題を収載し、自学自習できるCD-ROM(英語版)付き。
監訳 坂井 建雄
小林 靖 / 小林 直人 / 市村 浩一郎
発行 2007年04月判型:A4変頁:896
ISBN 978-4-260-00346-9
定価 16,500円 (本体15,000円+税)
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  • 目次
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訳者序
坂井建雄

 本書は“Grant’s Atlas of Anatomy”第11版の日本語訳である.原著の初版はトロント大学のJ. C. B. Grant教授により1943年に出版された.人体解剖標本を忠実に描いた本格派の解剖図譜として定評があり,世界の医学・医療関係者に愛用され,版を重ねている.
 日本語版は,森田茂,楠豊和両氏の翻訳により原書第6版が『グラント解剖学図譜』として1977年に,原書第7版が『グラント解剖学図譜 第2版』として1980年に,原書第8版が『グラント解剖学図譜 第3版』として1984年に発行された.原書第9版に基づく『グラント解剖学図譜 第4版』は,山下廣,岸清,楠豊和,岸田令次の4氏の翻訳により2004年に発行された.今回の第5版では,坂井が監訳を担当し,翻訳は,優秀な若手解剖学者3名に担当していただいた.いずれも,解剖学をこよなく愛しており,その実力をよく承知している人たちである.
 『グラント解剖学図譜』は,人体解剖をよく知る人がこよなく愛する解剖図譜である.なんといっても,人体解剖の奥深さと,本物だけがもつ迫真の力がそこにある.カナダのトロント大学のJ. C. B. Grant教授が繊細な解剖を行って剖出した多数の解剖標本をもとに,忠実に描いた解剖図がもとになっているのだから,当たり前といえば当たり前である.本物の解剖図を作り上げることがいかに大変なことであるか,またいかに得がたいものであるかは,人体解剖の専門家であればよく理解している.世の中に満ちあふれている解剖図の多くは,美と理想を求めて再構成されており,見方を変えれば知識をもとに頭の中で組み立てられたものになっている.さらにそこから引き写されて,著しく変形したものも少なくない.画像を通して伝えられる情報は,見る人に単なる知識を与えるだけではない.図には,構造の意味を理解し判断する枠組みをつくる力がある.どのようにすぐれた解剖図であれ,頭の中で作られたものには,描いた人の理解の限界とバイアスとが埋め込まれている.解剖学を学ぶ人たちには,できるかぎり人体そのものから,少なくとも本物から学ぶことを願う由縁である.
 今回翻訳した原書第11版には,いくつかの新しい特色がある.解剖標本を写実的に描いた古典的な解剖図を軸に据えることと,部位別に構成することはこれまでと変わりない.しかし各章で解剖図の流れをよくするために,写実的な解剖図を新たに付け加えたこと,模式図と表を増補して知識の理解を助けたこと,また各章の最後にMRIやCTなどの医用画像を集めて,画像診断との関連づけをおこなったことである.図のそれぞれについても,色の調整,サイズと配置の変更,語句の付け替えなど細かな修正を行い,現代の解剖学の学習にふさわしい,精確かつ平易で,魅力的な解剖学図譜を実現している.
 訳の分担は,市村浩一郎が第1~3章を,小林靖が第4章と第7~9章を,小林直人が第5,6章を担当し,用語の統一と全体の調整を坂井が行った.
 訳出にあたっては,日本解剖学会編『解剖学用語』(改訂12版)と「日本語による解剖学用語」を用いた.また,日本の『解剖学用語』にない用語は,臨床各科の辞典,教科書などを参考にして和訳した.
 本書が,広く医学・医療関係者が解剖学を学習するための座右の書として,大いに活用されることを願うものである.
 2006年 12月
 八王子の寓居にて

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1 胸郭
2 腹部
3 骨盤と会陰
4 背部
5 下肢
6 上肢
7 頭部
8 頚部
9 脳神経
索引

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生涯役立つ解剖学図譜
書評者: 大谷 修 (富山大教授・解剖学)
 本書は,J. C. B. Grant教授により1943年に出版された“Grant’s Atlas of Anatomy”の第11版の日本語訳である。

 本書の最大の特長は,古典的な解剖図のすばらしさにある。この図譜の多くの解剖図は,カナダのトロント大学の解剖学博物館に展示してある解剖標本を落ち着いた色彩で,美しく,正確に描いたものである。十数年前,トロント大学を訪れた際に,解剖学博物館に立ち寄ってみた。そこには,Grant教授が作った,複雑な構造をわかりやすく解剖した標本が展示してあり,それを学生たちがスケッチしている光景を見ることができた。このように,本書の主要な解剖図は実物を忠実に再現してあり,したがってわかりやすく,実習室で解剖しながら,あるいは遺体のない時でも,予習や復習に役立つのである。

 次に,本書の第2の特長について述べたい。私は,解剖学教育の際に,K. L. MoorとA. F. Dalleyによる“Clinically Oriented Anatomy”を愛用している。複雑な人体の構造の理解を助ける表やわかりやすい模式図が豊富に掲載されているからである。本書には,それらの多くが転載され,さらに新しい模式図も加えられて,理解しやすくなっている。図の説明が,大変簡潔であることも本書の優れた点である。長い文章を読むのが苦手な現代の学生諸君でも十分に読みこなせる長さの文章である。

 本書の第3の特長は,体表解剖の写真が加えられたことである。体表解剖は身体診察の基礎として重要ではあるが,解剖学の学習では,ややもすれば御座なりにされがちである。体表解剖図と深部の解剖図とが見開き2ページにまとめてあり,医学生にとって大変役に立つと思われる。本書を参考にしながら,一人で鏡を見て,あるいは友人と互いに身体診察の練習をすれば,必ず医師として重要な身体診察の基礎が身につくであろう。

 本書の第4の特長として,MRI,CT,超音波エコー,X線写真などの多様な画像情報と,これらに対応した模式図が各章末に断層画像としてまとめてあることである。これは学生のみならず,医療者にも大いに役立つものである。

 図譜は持ち歩くには少々重いかもしれないが,ノートパソコンを持ち歩く人のためにCD―ROMがついている。これならどこでも図を見ることができる。幸い,このCD―ROMは英語版なので,将来のために英語を学習する教材としても役立ちそうである。

 要するに本書は,実習室で解剖しながら,あるいは遺体のない時に解剖学を学習する際に,さらに臨床に際しても,生涯役立つ解剖学図譜といえる。本棚に飾っておき,折に触れて取り出して見るだけでも楽しく,学ぶことの多い解剖学図譜である。
機知に富んだグラント解剖学の真髄を余さず伝える
書評者: 佐々木 克典 (信州大教授・組織発生学)
 解剖学は古い学問で,すべてがわかってしまっており,新しさの加わることのない領域だと揶揄されることも少なくない。それにも関わらず教科書は改訂され,あるいは新しく書き下ろされ,世に受け入れられているのも事実である。この理由は,解剖の魅力は断片的な知識の集積ではなく,人体構造の“見方”にあるからである。“見方”は無限で,観察する人の個性が著しく反映するものであり,それゆえ数多くの解剖学書が書かれてきた。その中には歴史の中に埋もれたものも少なくないが,時代の変遷に関わらず,改訂を重ねながら永く多くの医学生に影響を与えてきたものもある。その一冊が『グラント解剖学図譜』である。最近,原書第11版を翻訳した日本語第5版が刊行された。

 『グラント解剖学図譜』の凄さは,描写された図のはっとするような斬新さにある。それまで見たことがない,しかし見てみたいと思う部位を憎いほどうまく描き出したリアルな図が数多く挿入されている。それぞれの図の説明は,人体の構造を深く洞察した人でなければ,決して書くことができないような示唆に富んだものが多い。例えば,“縦隔の右側面は,いわば「青色の面」であり,奇静脈弓や上大静脈といった太い静脈が見られる”という説明を最初に読んだ時,「青色の面」という表現に,電撃に打たれる思いがした。この図譜を描いたGrant JCBは,その前に“Grant’s Method of Anatomy”という,読めば知らず微笑んでしまうようなきわめて面白い,しかしアカデミックな解剖書を書いている。グラントの人柄を同僚らは,“物静かな機知と限りない人間愛”と表現しているが,彼の人柄が滲んだこの本が土台となり図譜は作られた。当然その中には機知と人間愛がここかしこに溢れている。これが『グラント解剖学図譜』の個性であり,長く受け入れられてきた理由であろう。

 この図譜には常に臨床医学を念頭においたグラントの意図が生きている。私が医学部を卒業し,最初に研修した伊豆の病院で,外科チームのトップがグラントの図譜を紐解いているのを見た時,外科医が使える実践的な図譜であることを実感できた。外科医がある方向から人体にアプローチする場合,その方向でしか構造は見えてこない。しかし,彼らが見たいのは,まだ見えていないアプローチの先にある構造である。本書はそれを彼らの気持ちになって見せてくれる。また今回,時代の要求に応じ豊富な体表解剖写真と画像診断像が加えられており,この版の大きな特徴になっている。これらの像と解剖図の対比は正確で効果的であり,読者にわかりやすい。選択されている断層画像は人体を考えるうえで重要な面が多く,関連する模式図は適切である。しかし,グラントが生きていれば,少々無味乾燥なこれらの断層写真をさまざまに修飾し生命を与えたかもしれないと考えるのは期待しすぎだろうか。

 この図譜の翻訳に監訳者として携わっておられる坂井建雄教授は古今東西の解剖学書にきわめて造詣が深く,数多くの翻訳を手がけてこられた稀代の解剖学者である。彼の豊かな学識に裏付けられた翻訳で,エスプリに富んだグラントの解剖学の真髄は遺憾なく読者に伝えられるであろう。若い感性を持つ医学生に,また人体の構造に常に関心を寄せる臨床医に座右の書にしていただきたい一冊である。
解剖学を学ぶということの「楽しみ」を提示
書評者: 小澤 一史 (日医大大学院教授・生体制御形態科学)
 大学医学部・医科大学における解剖学実習は,医学部教育の根幹をなすきわめて重要な実習の一つである。解剖実習では,教師は基本的事項,重要事項の道標を灯し,学生はそれをもとに自らの努力で,精緻に富み,機能と合理的に対応する人体の構造を学び,身につけていく。したがって,自ら学ぶ際の,信頼できるテキスト,アトラスとの出会いが,その後の学習効率を高めることはいうまでもない。

 今回,グラント解剖図譜第5版の日本語版が出版の運びとなった。“Grant’s Atras of Anatomy”は,世界における最も優れ,詳細なスタンダード解剖学テキストとして,大きな貢献を残してきているが,その図譜もまたきわめて優れた本である。本書の特徴は,なんといっても図が見やすく,豊富なことである。しかも,その図が多角的な視野から描かれており,人体構造を三次元的に理解するための大きな手助けとなる。このことは,人体解剖という目の前の「三次元」を考えるうえで,きわめて有用なツールとなることを意味している。近年の解剖学は,ただ身体の構造を知るだけの学問の概念をはるかに超えて,解剖学が臨床医学を学ぶ際の重要な課題解決の基盤となることを理解するのが大切なことと認識されている。その意味から,解剖学教育の現場では,すでにX線造影像,血管造影像,CT,MRIといった画像が紹介され,実際の解剖による観察との対比も積極的に行われている。その現状にぴったり当てはまるように,本書では随所にこれらの画像が加わり,まさに基礎医学と臨床医学を連結する立場も示され,学生に対し,医学部において解剖学を学ぶことの意味,意義を自然と伝えている点が高く評価される。

 さらに,体表解剖についての記載がきちんと示され,昨今,検査や画像データに頼る傾向のある医療に対し,あくまでも基本は「視診,触診,打診,聴診」であることを伝えようとしている意図が感じられ,まさにピリッと効いた香辛料的な役割を果たしている。各図の説明文は,簡潔で無駄がなく,要点をきちんとまとめており,違和感なく頭に入ってくる。これだけで十分に満足の内容であるが,付録のCDが思わず「おおっ」と思う充実と楽しさを含んでおり,解剖学を学ぶということの「楽しみ」を提示している。

 本書の監訳者である坂井建雄教授,訳者の小林靖教授,小林直人教授,市村浩一郎博士は解剖学者として気鋭のメンバーであり,また解剖学教育,医学教育に対する深い情熱を持った執筆陣である。各氏とも強い熱意と学生に対する深い愛情のもとに本書の日本語版出版に力を注いだ様子が読み取られ,その努力に心からの敬意を表すものである。このグラント解剖学図譜は,医学生のみならず研修医,専門医にも多大な情報を提供することは疑いもなく,心から推薦する次第である。まさに,「よい本に出会ったときの至福の喜び」である。

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