医学書院

検索
HOME書籍・電子メディア > 書籍詳細

基礎から学ぶ 楽しい疫学


(第4版)

著:中村 好一

  • 判型 A5
  • 頁 242
  • 発行 2020年08月
  • 定価 3,520円 (本体3,200円+税10%)
  • ISBN978-4-260-04227-7
つぎのページをめくるのがワクワクする。「疫学って楽しい!」
疫学の初心者向けの定番教科書。著者一流の切れ味鋭くユーモアに富んだ語り口で、疫学研究の方法論、バイアスの問題、統計処理の方法など、疫学の基礎知識を学べます。第10章「疫学に必要な統計」では,平均の差の検定、割合の差の検定、相関係数の検定などの解説を追加。隠れファンの多い脚注も一読の価値あり!
序 文
第4版 序

 いよいよ第4版の登場である。早いもので,本書のもととなった医学書院刊行の雑誌『公衆衛生』に「疫学:もう一度基礎から」を2000年1月に連載し始めてからちょうど20年が経過した。連載当時は「若手教授」と思っていた筆者も,現役引退が目の前に迫り,年金の繰り下げ給付を選択...
第4版 序

 いよいよ第4版の登場である。早いもので,本書のもととなった医学書院刊行の雑誌『公衆衛生』に「疫学:もう一度基礎から」を2000年1月に連載し始めてからちょうど20年が経過した。連載当時は「若手教授」と思っていた筆者も,現役引退が目の前に迫り,年金の繰り下げ給付を選択するべきかどうか悩む年齢になってしまった。第3版を2013年に世に問うてからも7年が経過した。この間に疫学の基本的部分が大きく変わったか?というと,さほど変化していないと思う。しかし,少しずつ変化しているのも事実である。「不易流行」という言葉を思い浮かべつつ,体力のあるうちに(そういえば,第3版出版後に日頃の不摂生がたたって,4週間入院する大病も患いました)改訂を,ということで決断した成果である。
 まず大きく変わったのは,第10章「疫学に必要な統計」にあったエクセルの例示をバッサリと削ったことである。2016年に,やはり雑誌『公衆衛生』の連載をもとにした,本書の姉妹編である『基礎から学ぶ 楽しい保健統計』を医学書院から上梓し,そちらに充実した(と本人は思っている)エクセルの例示を掲載したためである。また,新規に第13章「これからの疫学,疫学のこれから―A message from an old epidemiologist」を追加した。馬齢を重ね,特に若い人たちに言い残しておかなければならない遺言のようなつもりで執筆した。20年前であれば書けなかった章である。その他,時の流れにつれて古くなったようなこと(たとえば,連載執筆時には小中学生だった筆者の娘たちもそれぞれ結婚して,孫の面倒を見る好々爺[?]になってしまった)も修正した。結局,本書の厚さは第3版とあまり変わらなくなってしまった。m(_ _)m
 しかし,改訂作業も相当大変であった。第3版を隅から隅まで読み返し,あるところはバッサリと削り,あるところは大幅に追記し,細かな修正やデータの改訂は随所で行った。もうそろそろこのような作業も最後にしたいな,とも思っている。
 おわりに,今回の改訂でも医学書院の編集担当の西村僚一氏と,制作担当の平岡知子氏にお世話になった。西村氏とは同好の趣味仲間(テツ)で今回も著者近影写真の撮影にお付き合いいただく予定であったが,COVID-19によって残念ながら実現しなかった(冒頭の「著者紹介」参照)。なお,本書の表紙のデザインは切符の鋏痕(「きょうこん」と読む。ほとんど死語となってしまったが,昔の鉄道では今の自動改札機の所に駅員が立っていて,改札口を通過した証拠として切符に鋏で切り込みを入れていた。その切り込み)をモデルにしているが,これは西村氏の発案である。平岡氏には原稿を丁寧に読んでいただき,改めて自分の原稿のいい加減さに気づいて反省する次第であった。両氏の絶大なご支援がなければ,本誌は日の目を見なかったであろう。紙面をお借りして御礼申し上げたい。

 COVID-19大流行の年(2020年)6月
 中村好一
書 評
  • 緻密に計算されたコンテキストブックの真髄
    書評者:市原 真(札幌厚生病院病理診断科)

     手に取ったとき,とてもシンプルに見えた。タイトルも,表紙のデザインも,宣伝目的の帯でさえも。しかしパラパラパラと3めくりしたあたりで,おやっと思った。著者名や発行年月日などが載った「奥付」が冒頭に配置されていたからだ。

     若すぎる顔写真に謎が深まる。来歴にもナニヤラ遊び心がにじむ。表紙から想...
    緻密に計算されたコンテキストブックの真髄
    書評者:市原 真(札幌厚生病院病理診断科)

     手に取ったとき,とてもシンプルに見えた。タイトルも,表紙のデザインも,宣伝目的の帯でさえも。しかしパラパラパラと3めくりしたあたりで,おやっと思った。著者名や発行年月日などが載った「奥付」が冒頭に配置されていたからだ。

     若すぎる顔写真に謎が深まる。来歴にもナニヤラ遊び心がにじむ。表紙から想像していた堅物な印象からの違和感に思考が衝突して,立ちすくむような気分になる。発行日欄の一行目は「第1版第1刷 2002年3月」,最終行が「第4版第1刷 2020年8月」。着実に版を重ねてきた名著である。それなのにこのノリはなんだ?

     序文に目を通す。雑誌連載に端を発する原稿に,足かけ20年も手を加え続ける仕事の崇高さを思う。序文の最後には表紙デザインの真実が明かされる。第1章の頭にある「POINT」のデザインに笑みをこらえきれない。

     これらは全て制作陣の狙いであろう。早すぎる奥付と序文解説によって,冒頭から読者は「講師のナラティブ」を手に入れる。続けて展開される本文の筆致は王道,そこに物語性を生む役割を持つ脚注を連弾させる組み立て。本当に見事だ,思わずうなってしまう。「講師が語る姿」をイメージしながら楽しく読み進めることができる構成によって,本書は「勝っている」,それもかなり強い勝ち方をしている。優勝と言っていいだろう(何が?)。

     記述疫学の重要性。コホート研究と症例対照研究の違い。検定よりも推定のほうがよい理由。層化すればいいってものでもないということ。これまで何度も学ぼうとして,そのたびに睡魔との戦いを余儀なくされてきたが,親しみすら覚えるほどの講師から語られるとこれほどまでに血が通うものなのか。

     今から7,8年ほど前,どうにも疫学がわからなくて,疫学者たちにお勧めの勉強法を尋ねた。「米国時代の公衆衛生学講座のボスに師事した内容を自分でまとめたものを使っている」「ロスマンくらいは読んだほうがいい」。前者は参考にしようがないので,とりあえず『ロスマンの疫学』(篠原出版新社)を購入。当時読み終えてわかったことは,「拾い読みでは疫学には太刀打ちできない」ということだった。断片的な概念を単語帳のように覚えても歯が立たない。だから一度は何かを通読したほうがいいのだろうとは思ったが,残念ながらロスマンは私には少々読みにくかった。「ロスマン先生」から疫学を教わることに対する必然性とモチベーションが足りなかったのかもしれない。

     そんな怠惰な私もようやく疫学の師を見つけた思いである。皆さんも,著者の顔を思い浮かべながら,ぜひ「疫学の文脈」を手に入れてほしい。本書はテキストブックではなく優れたコンテキストブックである。もっと早くこの本を知っておけば良かったと悔しく思うが,時代の選択に耐えた名著を今手に入れる喜びもある。蛇足だが本書を通読した後にロスマンを読むと普通に読めたので笑ってしまった。私は疫学の文脈を一つ身につけたのであろう。
目 次
第1章 疫学とは
 人間集団における健康状態の頻度測定

第2章 疾病頻度の測定
 1 曝露と疾病
 2 疫学指標――理論的性質と表記の解離に注意
 3 相対危険と寄与危険――複数の集団の頻度の比較

第3章 既存のデータ
 疾病頻度に関するデータは目の前にある

第4章 疫学研究方法
 それぞれの利点と欠点
 1 記述疫学,生態学的研究,横断研究――まずは比較的簡単なものから
 2 コホート研究――観察疫学研究の中心となるもの
 3 症例対照研究――もう1つの中心となるもの
 4 介入研究――最も強力な研究デザイン
 5 では,どの研究方法を採用するのか?
      ――すべての研究デザインは利点と欠点を併せもつ

第5章 偏りと交絡
 1 偶然誤差と系統誤差――バイアス=真の姿を歪めるもの
 2 バイアスとその制御――(狭義の)バイアスは研究計画段階で制御すべし
 3 交絡因子とその制御――交絡因子に配慮のない研究は,疫学研究ではない
 4 標準化――直接法と間接法を使い分ける

第6章 因果関係
 疫学研究における最後の詰め

第7章 スクリーニング
 疫学の集大成

第8章 サーベイランスと疾病登録
 恒常的に実施されている疾病頻度調査

第9章 臨床疫学
 疫学の臨床応用

第10章 疫学に必要な統計
 1 標本抽出と標本サイズ――研究計画で最も重要な部分
 2 推定と検定――検定よりは推定を
 3 推定の実際――点推定値±1.96×標準誤差
 4 多変量解析――強力な武器,しかし安易な利用は要注意

第11章 疫学と倫理
 避けて通ることのできない課題

第12章 疫学の社会への応用
 最後のステップ

第13章 これからの疫学,疫学のこれから
 ――A message from an old epidemiologist

索引

疫学 デッドセクション
 ・John Snow Pub
 ・国際疫学会裏話
 ・「曝露」と「暴露」
 ・疫学者の養成
 ・英語と米語
 ・オーバーマッチング
 ・ウォルフ-ハルデイン補正 Woolf-Haldane correction
 ・必要条件と十分条件
 ・多重比較 multiple comparison
 ・平均への回帰
 ・プライバシー権