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6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド

臨床推論から症例報告の書き方まで

編集:木村 大輔

  • 判型 B5
  • 頁 272
  • 発行 2020年01月
  • 定価 3,960円 (本体3,600円+税10%)
  • ISBN978-4-260-04134-8
激変する理学療法教育の中で、変わらず求められる臨床能力を育むための臨床実習ガイド
クリニカルクラークシップによる理学療法臨床実習が奨励されるなかで、理学療法臨床をどのように学生は学べばよいのか?……本書は、理学療法を6つのステップに分け、段階的に理学療法の実際を身に着けられるように懇切丁寧に解説する。臨床実習指導者も、理学療法の6ステップを知ることで、具体的な指導ポイントがよくわかる。激変する理学療法教育のなかで、変わらず求められる臨床能力を育むための臨床実習ガイド。実習先で使える症例レポート、三角ロジックなどのダウンロード権つき。
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序 文
推薦の序(椿原 彰夫)/はじめに(木村 大輔)


推薦の序

 理学療法士作業療法士養成施設指定規則は,この度,大幅に改正され,2020年4月1日から施行されます.その骨子は,臨床実習の時間を増やし,内容的にも見学実習ではなく,実技を主体とする実...
推薦の序(椿原 彰夫)/はじめに(木村 大輔)


推薦の序

 理学療法士作業療法士養成施設指定規則は,この度,大幅に改正され,2020年4月1日から施行されます.その骨子は,臨床実習の時間を増やし,内容的にも見学実習ではなく,実技を主体とする実習を増加することにあります.指導者にも教育に関する研修が課せられ,有意義な実習が学生に与えられることを目指しています.理学療法士や作業療法士を目指す学生は,卒業後,国家資格を取得直後から患者や障害者に医療や介護のサービスを提供することが許されています.その行為に対して,リハビリテーション料として診療報酬や介護報酬を請求することができます.したがって,学生は臨床実習期間中に,療法士として一定以上の技術を習得しなければなりません.残念ながら,これまでの教育方法では,すべての学生が報酬を請求できるだけの技量に到達できたという現状にはありませんでした.そこで,今回,指定規則の改正が行われたというわけです.
 しかし,実習施設と教育者が整っていたとしても,理学療法の現場を初めて見学した理学療法学科の学生にとっては,目の前で行われている機能訓練の意義や内容を理解することは必ずしも容易ではありません.そんな状況下で,学生に対して,たとえば「大腿四頭筋の漸増抵抗運動を行ってください」と命じたとしても,何の目的で行うのか,なぜ筋力は増大するのか,次に行うべき治療計画が何であるのかは,脳裏には浮かんでこないことでしょう.治療経験が皆無である学生にとっては,臨床実習が開始される前に,予め,機能予後や問題点の抽出方法,治療計画の立て方について学習しておく必要があります.それを可能にしたのが,本書『6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド─臨床推論から症例報告の書き方まで』です.これまでは,学生に対して口頭で伝えられることはあっても,体系づけられていなかったため,実施されている理学療法を理解しがたい場合が少なくありませんでした.本書は,指定規則改正の時期に的を得た出版と言っても過言ではありません.
 本書では臨床実習の学習目標として,①事前準備,②目標の抽出,③仮説の立案,④目標と優先順位の決定,⑤治療プログラム立案・実施,⑥効果判定と今後の方針,の6つのステップに分けて解説しています.疾患単位で理学療法のプロセスをステップごとに理解させる教育法は,これまでの教科書に類を見ない斬新なものであると言えます.これから臨床実習を開始しようとする理学療法学科の学生諸君には,ぜひ一読してほしいと思います.また,指導に当たる予定の教員にも読んでほしい卓越した書物です.長年にわたって教育に取り組んでこられた著者の先生方の熱い思いに敬意を表するとともに,本書を多くの方々に強く推薦申し上げる次第です.

 2019年11月
 川崎医療福祉大学・川崎医療短期大学 学長
 椿原 彰夫


はじめに

 本書は,理学療法における臨床推論が身につくように構成された「臨床実習の進め方」と「症例報告書の書き方」がわかるhow to本であり,実習生,臨床実習指導者,養成校教員が「読めばわかる」内容を目指して執筆されました.
 診療参加型実習(クリニカルクラークシップ型実習)において,医師の処方箋を受け取ってから,具体的に実習生はどういう行動をとるべきかを理学療法の各ステップに分けて段階的に記載しています.「理学療法の流れ」に対応させることで,学生の行動を「6つのステップ」に分割し,一連の流れの中で理学療法全体のつながりが理解できるように構成しました.
 各ステップは,①診療参加型実習の現場で指導者の監視下で実習生が実施すること(技術),②実習生が自身の責任のもと学習しなければならない項目(自己学習),③指導者の指導のもとで理解しなければならない項目(思考)に分けて記載しています.これにより,学生は指導を仰ぐ必要があることか,自分が調べないといけないことかを識別することができるようになります.つまり,本書は実習生にとって,今自分が何をしていて,次に何をしなければいけないかが把握できる,理学療法士へと成長していくための「道標」の役割を果たします.さらに,理学療法士になった後,論理的思考ができるように三角ロジックの概念を取り入れ,学生が「人に説明できる理学療法」を意識できるように各ステップが構成されています.また臨床実習指導者にとっても,理学療法のどの段階で実習生がつまずいているか,どこを指導すればよいのかが具体的にわかるよう,指導のビジュアル化を目指しました.
 昔と比べて臨床実習のスタイルは大きく変化しています.その1つが症例レポート作成を実習中の必須課題としなくなったことです.症例レポートは臨床推論や臨床思考過程を整理し,指導しやすくする優れたツールとして活用されてきました.そのレポートを用いず,どのように効果的に臨床推論や臨床思考過程を学生に教えるのか,われわれはいまだ明確な答えを持っていません.本書では,臨床推論の過程をできるだけ行間を飛ばさずに記載するだけではなく,指導者は学生にどのような問いを与え,また実習生はその問いにどのように思考をめぐらせればよいのかをわかりやすく表現しました.レポートを介さずとも,これらのガイドによって指導者と実習生が相互的かつ能動的に学修(インタラクティブ・アンド・アクティブ・ラーニング)することができます.他方,そのメリットから,実習中および実習後に臨床推論の過程をレポート(A4用紙2~4枚程度の分量)にまとめることもあります.このような場合を想定し,本文で紹介した臨床推論をレポートにまとめるとどうなるのか,それぞれ例示しました.
 本書は,理学療法教育の現状を踏まえて,診療参加型実習(クリニカルクラークシップ型実習)とアクティブラーニングを意識し,どのように理学療法教育を進めていくか,臨床思考過程とは何か,論理的な説明とは何かについて,具体的かつ実践的に説明しました.ぜひ本書を活用され,情報過多の状況下でも知識の運用能力を高め,しなやかな思考力をもって理学療法を進めていただければと思います.

 2019年12月
 木村 大輔
書 評
  • 学生だけでなく臨床実習指導に携わる関係者に薦める一冊
    書評者:内山 靖(名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学理学療法学講座・教授)

     このたび,『6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド―臨床推論から症例報告の書き方まで』が,木村大輔氏を編著者として刊行されました。

     本書は,臨床実習を学ぶ際の(1)理学療法技術,(2)自己学習,(3)思考の3つの視点から,臨床実践での理学療法の流れに沿って,学生の行動を6つのステップ...
    学生だけでなく臨床実習指導に携わる関係者に薦める一冊
    書評者:内山 靖(名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学理学療法学講座・教授)

     このたび,『6ステップで組み立てる理学療法臨床実習ガイド―臨床推論から症例報告の書き方まで』が,木村大輔氏を編著者として刊行されました。

     本書は,臨床実習を学ぶ際の(1)理学療法技術,(2)自己学習,(3)思考の3つの視点から,臨床実践での理学療法の流れに沿って,学生の行動を6つのステップに分割して整理されたものです。論理的に他者へ説明する手段として,三角ロジックを適用しながら極めて身近な話題を取り上げ,対話形式を交えて,事前準備,目標の抽出,仮説の立案,問題点の抽出と優先順位の決定,治療プログラム立案・実践,効果判定・今後の方針からなる理学療法の流れを解説しています。

     2020年4月から理学療法士の養成課程に適用される指定規則は101単位となりますが,そのうちの20単位が臨床実習に配当されていることからもその重要性はゆるぎないところです。臨床実習は,その過程でいくばくかの困難や自己への課題と向き合ったとしても,病める対象者の思いと臨床における理学療法士の真剣な眼差しは,学生にとって学内教育では経験できない自己を振り返る機会ともなってきました。多くの学生が,臨床実習を通して見違えるような知識の統合と職業意識ならびに自発的な学習意欲を身につけ,一段と成長した上で卒業していく様子を目の当たりにしています。

     臨床実習では,対人関係,これまでの知識の不足を一気に挽回しようとする過剰な学習,有病者に適用できる基本的技能,実践レベルでのコミュニケーション能力,周囲のペースやニーズに合わせながらの臨機応変な行動など,新たな学習課題が複合的に関連するために学生や指導者は相応のストレスにさらされています。この解決のために多くの努力が払われていますが,根幹的な課題の一つとして,既存の知識・技術・態度を統合する思考の整理について臨床の流れの中で学習することが重要になります。著者らは,早い段階でこの本質的な課題に気付き,正面から真摯(しんし)に向き合ってきた成果の一端が本書に凝縮されています。完成度の高い内容もさることながら,理学療法に対する熱い思いと学生に対する暖かい眼差しをこれほど強く感じさせる書籍は珍しいと思います。著者らは,ロジカルシンキングに関心を持って同じ研究会に所属しているようで,日々の熱い討議が紙面を通じて伝わってきます。

     このような書籍に共通したジレンマとして,一定の理解や関心がある人はさらによくわかるようになり,そのための工夫の余地も大きいのですが,一定のレディネスに到達していない人には難解で,何を学ぶかがよくわからない点をいかに乗り越えるのかの課題が横たわります。その点からは,本書は学生ととともに,臨床実習指導に携わる関係者にお薦めするものです。また,学生が考えていることや,何がわからないかがわからなくなりつつあるシニアの臨床家や教員にぜひとも推薦したい一冊です。
目 次
プロローグ
 1 症例報告で身につく3つの力
  理学療法の流れを理解する力
  情報を整理する力
  他人に説明する力
 2 臨床実習と臨床推論に役立つ2つの道具
  三角ロジック
   a.三角ロジックとは
   b.理学療法場面での三角ロジックの使い方
  臨床実習のすすめ方:6ステップ
   a.理学療法のプロセス
   b.6ステップ

I 基礎編―6ステップで理学療法を組み立てる
 1 脳卒中
  1)ステップ1 事前準備をしよう
   a.医師の処方を確認しよう
   b.医学的情報を収集しよう
   c.疾患の基礎知識を確認しよう
  2)ステップ2 目標を抽出しよう
   a.疾患に基づいた一般的評価をしよう
    ・評価項目をあげる
    ・評価の意味を理解する
    ・評価の実施
   b.主訴や社会的背景を聴取し,チームの方針を確認しよう
    ・主訴や社会的背景の聴取
    ・チームの方針の確認
   c.疾患や障害の予後予測をしよう
   d.目標を立てよう
    ・目標をより具体的にしよう
  3)ステップ3 動作障害に対して仮説を立てよう
   a.目標に即した詳細な評価をしよう(動作分析)
   b.動作障害を理解するための情報収集をしよう
   c.仮説を立てよう
   d.目標と動作障害のつながりを考えよう
  4)ステップ4 問題点を抽出し優先順位を決めよう
   a.問題点をICFに基づいて分類してみよう
    ・障害のICF分類って何?
   b.障害構造図を作成してみよう
   c.問題点の優先順位と目標の優先順位を決めよう
   d.統合と解釈を書いてみよう
  5)ステップ5 治療プログラムを立案しよう
    ・治療って何?
   a.治療対象の整理をしよう
   b.治療の根拠となる情報を収集しよう
   c.治療プログラムを書いてみよう
   d.治療プログラム立案の理由を説明してみよう
   e.症例報告書を書いてみよう
  6)ステップ6 効果判定をしよう
    ・治療の実施について
   a.初期評価時に行った評価項目を再評価しよう
   b.治療結果を考察するための情報を収集しよう
   c.今後の方針を立てよう
   d.考察を書いてみよう
   症例報告
 2 変形性股関節症(人工股関節全置換術:THA後)
  1)ステップ1 事前準備をしよう
   a.医師の処方を確認しよう
   b.医学的情報を収集しよう
   c.疾患の基礎知識を確認しよう
  2)ステップ2 目標を抽出しよう
   a.疾患に基づいた一般的評価をしよう
    ・評価項目をあげる
    ・評価の意味を理解する
    ・評価の実施
   b.主訴や社会的背景を聴取し,チームの方針を確認しよう
    ・主訴や社会的背景の聴取
    ・チームの方針の確認
   c.疾患や障害の予後予測をしよう
   d.目標を立てよう
    ・文献による情報のアップデート
    ・目標をより具体的にしよう
  3)ステップ3 動作障害に対して仮説を立てよう
   a.目標に即した詳細な評価をしよう(動作分析)
   b.動作障害を理解するための情報収集をしよう
   c.仮説を立てよう
   d.目標と動作障害のつながりを考えよう
  4)ステップ4 問題点を抽出し優先順位を決めよう
   a.問題点をICFに基づいて分類してみよう
   b.障害構造図を作成してみよう
   c.問題点の優先順位と目標の優先順位を決めよう
   d.統合と解釈を書いてみよう
  5)ステップ5 治療プログラムを立案しよう
   a.治療対象の整理をしよう
   b.治療の根拠となる情報を収集しよう
   c.治療プログラムを書いてみよう
   d.治療プログラム立案の理由を説明してみよう
   e.症例報告書を書いてみよう
  6)ステップ6 効果判定をしよう
   a.初期評価時に行った評価項目を再評価しよう
   b.治療効果を考察するための情報を収集しよう
   c.今後の方針を立てよう
   d.考察を書いてみよう
   症例報告

II 応用編―6ステップを活用した症例報告の書き方
 1 脊椎椎体骨折(脊椎圧迫骨折)
 2 慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)
 3 急性心筋梗塞
 4 脊髄小脳変性症
 5 パーキンソン病
 6 変形性膝関節症

エピローグ

コラム
 OSCEについて
 6ステップを利用した指導について
 臨床と研究/情報の検索について
 臨床推論について
 Shared Decision Making(SDM)について

索引