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乳幼児健診マニュアル 第6版

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本書の編集委員会は、全国でもアクティブに活動する団体として小児科領域を先導しており、特に乳幼児健診では『福岡式』として全国的な認知度も高い。基本的なコンセプトは前版までを踏襲し、誰もがすぐに目を通せる要点をまとめた使いやすさを心がけ、乳幼児健診をあまり良く知らない人でも合格点の健診ができる本としている。今版では情報内容が更新され、さらに乳幼児にかかわるトピックやコラムもより充実した内容となった。
編集 福岡地区小児科医会 乳幼児保健委員会
発行 2019年08月判型:B5頁:168
ISBN 978-4-260-03935-2
定価 3,520円 (本体3,200円+税)

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第6版を編集するにあたって

 近年,子どもたちを取り巻く社会環境は厳しさを増しています.虐待通報は年々増加しており,虐待は特異な親子の問題ではなく,日常の子育てのなかで親側あるいは子ども側のさまざまな社会的・身体的にネガティブな要因から,どの親子にも起こりうると考えられるようになってきました.虐待を防ぐには,個別のリスクの高いケースだけでなく,すべての親子に目を向け広く子育てを支えていく必要があると考えられています.

 そのようななか,国の施策として妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を実現するために,子育て世代包括支援センターの設置が進められています.センターにおける支援は,「すべての妊産婦・乳幼児等を対象とするポピュレーションアプローチを基本とする」となっており,センターを扇の要として,保育園などの子育て支援機関,産科,小児科などの医療機関,さらに児童相談所など行政を含め地域の関係機関が連携することにより子育て支援の網がきめ細かく広がっていくことが期待されています.乳幼児健診は子育て支援の入り口の1つであり,ポピュレーションアプローチの感度のよい網の目として,その果たす役割はより一層重要です.

 今回の改訂にあたって,育児相談・育児支援のパートでは「事故防止」,「食物アレルギー」,「禁煙指導」,「子どもの歯の衛生」を新たな執筆者にお願いしました.また,コラムには「子どもを便秘の苦しみから助けましょう」,「臍ヘルニア圧迫療法」,「母斑とレーザー治療」を新項目として追加しました.多忙ななか改訂作業に多くの時間を割いていただいた執筆者の先生方,第4版から細部にまで目を通し編集に深く携わっていただいている花井敏男先生,今版の発刊にご尽力いただいた医学書院の塩田高明・内田純両氏に心より感謝申し上げます.

 最後になりましたが,本書の前身である「乳児健診マニュアル―健診する開業医の先生方のために」が1985年7月に発刊されて以来,本書の主導的な編集者・執筆者としてかかわり,わかりやすさの象徴である赤ちゃんのイラストをお描きいただいた松本壽通先生が昨年10月21日にご逝去されました.松本先生に遺していただいた貴重な宝である本書を,福岡地区小児科医会(丹々会)として大切に引き継いでいきたいと考えています.長年にわたるご指導に深く感謝申し上げ,心よりご冥福をお祈り申し上げます.

 2019年7月
 乳幼児健診マニュアル編集委員会
 編集責任者 稲光 毅

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乳幼児健診について
 健診の心構え
 乳幼児健診はいつ行うか

乳幼児健診の実際
 診察の前に行うことがら
 一般理学的検査の手順
 発達診断学的診察の実際
 発達障害が疑われる子どものみかたと対応

月齢別の健診のしかた
 1か月児健診
 4か月児健診
 7か月児健診
 10か月児健診
 12か月児健診
 1歳6か月児健診
 3歳児健診
 5歳児健診

育児相談・育児支援
 1.育児相談のポイント―特に健診現場における育児支援の実際
 2.乳幼児の生活習慣
 3.乳幼児期の栄養指導
 4.事故防止
 5.食物アレルギー
 6.スキンケア
 7.禁煙指導
 8.子どもの歯の衛生
 9.子どもの虐待への気づきと支援
 10.母親のメンタルヘルスと育児支援
 11.予防接種

索引


コラム
 発達検査
 日本語版M-CHATと使用法
 臍ヘルニア圧迫療法
 シャフリングベビー
 早産児と修正月齢
 母斑とレーザー治療
 乳幼児揺さぶられ症候群
 真性・仮性包茎
 保育園・幼稚園と健康診断
 障害児の育児
 病児保育
 お乳離れの時期は?
 子どもを便秘の苦しみから助けましょう
 乳幼児突然死症候群(SIDS)
 ペリネイタルビジット(出産前後子育て支援事業)

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時代とともに引き継がれ成長していく健診マニュアル
書評者: 横田 俊一郎 (横田小児科医院院長)
 長い間待ち望まれた成育基本法が2018年末に成立し,次代の社会を担う子どもたちの心身の健やかな成育を確保するため,成育医療などを切れ目なく提供する施策を総合的に推進する基礎が出来上がった。それに伴い,乳幼児健診の機能をさらに充実させようとする機運が高まる中で『乳幼児健診マニュアル』が4年ぶりに改訂され第6版が出版された。

 本書は福岡地区小児科医会乳幼児保健委員会が,健診の実際的な方法について「乳児健診マニュアル」として1985年にまとめたのが始まりである。その後,1992年に医学書院から初版が出版され,全国の乳幼児健診にかかわる医師やスタッフに読み継がれてきている。乳幼児健診に必要な事項が過不足なく網羅されているだけでなく,最新の情報がその時々で付け加えられており,しかもコンパクトで携帯しやすく,実際に健診を行う際に本書ほど使いやすいものはない。

 今回の改訂では「事故防止」「食物アレルギー」「禁煙指導」「子どもの歯の衛生」が新たな執筆者により書き換えられ,内容もより新しいものとなっている。特に「子どもの歯の衛生」ではきれいなカラー写真が加えられ,非常にわかりやすくなっていると同時に保護者への説明にも利用できる。

 また刻々と変化する疾病の治療法や予防接種体制についても,新しい情報が取り入れられている。日本小児科学会新生児委員会が推奨する母乳栄養児へのビタミンK投与を生後3か月まで週1回続ける方法,臍ヘルニアの圧迫療法,母斑とレーザー治療,子どもの便秘の治療など,最近広まってきている新しい治療法が随所に盛り込まれているのも心強い。さらに2019年から始まった成人男子に対する風疹予防の追加的対策についても記載が加えられた。

 日本小児科学会とその関連団体からなる日本小児医療保健協議会合同委員会内の健康診査委員会では,乳幼児健診を中心とする小児科医のための研修会を定期的に開催するようになった。評者が小児科医になりたての約40年前にはそのような研修会はまったくなく,ほぼ自己流で乳幼児健診を行っていた。子どもの病気を診ることばかりに集中していた時代と比べて,現在は隔世の感があるが,福岡地区ではその古い時代から健診に真剣に取り組んできており,その努力と経験の結集が本書となっている。

 本書の生みの親の一人であり,可愛い赤ちゃんのイラストをお描きになった松本壽通先生が昨年ご逝去された。身体の発育だけでなく,子どもの心の健康の重要性を古い時代から強調され,私たち外来小児科医の良き指導者であり,その優しいお顔を忘れることはできない。松本先生の願いは今後も本書とともに引き継がれていくことと思う。

 乳幼児健診にかかわるのは小児科医専門医だけではない。小児のプライマリケアを担う全ての医師,健診にかかわっている全ての医療スタッフに本書を利用していただくことを願っている。
単なるマニュアル本ではない,子育て支援のあり方を示した良書
書評者: 濱田 裕子 (九大大学院准教授・小児看護学)
 本書を手にし,そのタイトルから健診のノウハウを伝えるマニュアル本だろうと思いながら読み進めると,最初の「健診の心構え」で,私の思い込みは簡単に覆された。故松本壽通先生は「健診は医療の延長ではありません」,また「子どもの心の問題や育児支援なども考慮に入れた健診が求められています」と冒頭で述べており,乳幼児健診は子育て支援の一環であるとあらためて捉え直すこととなった。

 今や子育て支援は,社会全体で取り組むべき課題であり,国は2001年から取り組んできた「健やか親子21」の最終評価を経て,2015年度から第2次計画をスタートさせている。「健やか親子21(第2次)」の3つの基盤課題の1つは,従来から続く「切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策」であり,それらを下支えする新たな課題として「子どもの健やかな成長を見守り育む地域づくり」を掲げている。本書は「健やか親子21」が策定される以前から,乳幼児保健と子育て支援の必要性を見据えて,小児科医師のみならず保健や医療にかかわるスタッフを視野にその重要性を説いている。

 本書は主に3つのパートより構成されている。最初に,冒頭で述べた乳幼児健診とその実際について,健診を行うに当たっての手順や見かたなどが新人の医師でも対応できるように丁寧に書かれている。次に,1か月児から5歳児健診までを各月齢別に,健診の仕方をわかりやすく説明している。発達段階ごとに基本的な発達の目安(特徴)と「かいせつ」を示し,「診察の手順」を図表やイラストを用いて説明し,さらに「保健指導の要点」と「この時期に多い質問」をまとめている。特に「保健指導の要点」や「この時期に多い質問」は医師のみならず,保健指導や育児支援に当たる保健師や看護師,助産師にとっても必見である。

 さらに「育児相談・育児支援」のパートがあり,「乳幼児の生活習慣」や「乳幼児期の栄養指導」,「事故防止」,「食物アレルギー」や「スキンケア」,「禁煙指導」,「子どもの歯の衛生」,「予防接種」,「子どもの虐待への気づきと支援」や「母親のメンタルヘルスと育児支援」など,現代の乳幼児を取り巻く健康問題やそれらへの対応が,簡潔にわかりやすくまとめられている。また,各執筆陣による15個のコラムは育児に関する話題から知っておきたい知識まで,読み物としても面白いものとなっていて,本書は医師に限らず保健師や看護師,助産師,コメディカルにも,子どもの捉え方や対応のヒントが詰まった役立つ内容といえる。

 最後に,本書は福岡の地域で小児にかかわる医師らが1992年の初版からこの第6版まで現場感覚を大切に,改訂を重ねていることに敬意を表したい。医師自らが,子どもと家族に伴走する姿勢が本書の根っこを支え,単なるマニュアル本ではない,子育て支援の在り方を示してくれている。
乳幼児健診にかかわる多職種にとって必携の書
書評者: 岡 明 (埼玉県立小児医療センター病院長)
 乳幼児健診は,小児医療保健活動の中心にあります。子どもに接した経験の乏しい保護者が増えてきており,地域社会でのつながりも希薄化している中で,健常な子どもとその家庭への支援は以前にも増して重要になってきています。健診は正にその場であるということができます。

 しかし,乳幼児健診は医学教育の中でまとまって勉強する機会は乏しく,実際の健診の手技などを系統的に教わることは通常はありません。健診者によって方法も一定ではありません。また集団健診と個別健診では,健診の構造やかかわる職種も異なってきます。こうした地域による健診の差を減らし,健診精度の管理を行うなどの標準化の取り組みは今後の小児保健の重要な課題であると思います。

 福岡地区の小児科医会である丹々会は,早くから健診票を作成し,健診のための研修を定期的に開催するなど,地域としての乳幼児健診の標準化に取り組んできており,その継続的な活動に心から敬意を表したいと思います。本書はその研修の手引書として1985年に刊行されたマニュアルが前身とうかがっております。ですので,35年の歴史があり,その間に多くの先生方の尽力によって改訂が重ねられてきております。すでに本書は医師のみならず保健師や助産師など乳幼児健診にかかわる多職種にとって必携の書となっているかと思います。

 本書の構成の特徴は,乳幼児健診の全てを俯瞰する総論の部分と,月齢年齢別に分けた各論の部分に加えて,育児相談・育児支援の部分が3分の1を占めることにあるかと思います。

 少子化時代の乳幼児健診は,子どもにあまり接した経験がなく子育てに自信のない母親の育児不安を支援する非常に貴重な機会となっています。乳幼児健診の場面での会話は,医療者が母親と子どもの生活について話ができる貴重な時間ですので,生活習慣,栄養,事故防止,スキンケアなど,こうした生活に深く関係する内容についていかに上手に保健指導ができるかが,健診の質を高めることになると思います。特に,育児不安の母親の場合や子ども虐待の可能性が疑われる場合など,配慮を要する対応についても記載されています。

 本書が改訂を続けている理由として,最新の医学的知見に基づいた健診のアップデートの必要性があります。今回の改訂でも,食物アレルギーについての食品除去を最小限にするという変更が記載されており,現場での保健指導にも役立つものと思います。また先天性股関節脱臼の新しい健診方法や,WISC-5が公表され診断基準が変更された発達障害についても,最新の記載となっています。こうした領域は保護者にとっても非常に関心の深いところですので,健診にかかわる多職種の間の最新知識の共有が必要であると思います。

 本書は,それぞれの項目のエッセンスが,わかりやすさを重視してコンパクトにまとめられている実用性と使いやすさが魅力です。多職種によって現場で活用され,本書は健全な次世代の育成に寄与するものと思います。

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