成人看護学[2]
呼吸器 第15版

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  • 専門基礎分野との連携を重視し、既習事項を臨床看護に応用することに主眼をおいた編集をしています。
  • 最新の医療機器や看護技術についても積極的に取り入れ、医療現場にすぐに対応できる内容となっています。
  • カラーイラストや写真をふんだんに用いることにより、初学者でもスムーズに学べるように工夫をこらしました。
  • 本書を学ぶための導入として、序章では呼吸器特有の疾患である気管支喘息をもつ患者の事例を取り上げ、全人的な看護をしていくために学ぶべきことはなにかを問いかける内容となっています。
  • 第5章では、臨床でよく遭遇する代表的な疾患について、診療の流れ図と典型的な患者のミニ事例を加えました。
  • ​​​​​​​第6章では、一部の疾患を経過別に記述し、関連する看護技術をイラストや写真をまじえて解説しています。
  • ​​​​​​​第7章で取り上げた事例は、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪と肺がんの胸腔鏡下手術。いずれも看護ケアが予後を大きく左右するものです。これらの看護過程を学習することによって、看護の果たす重要な役割を学び取ることができます。
  • 「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ 系統看護学講座-専門分野
浅野 浩一郎 / 梅村 美代志 / 川村 雅文 / 長谷川 直樹
発行 2019年01月判型:B5頁:400
ISBN 978-4-260-03569-9
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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    2022.11.29

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はしがき

発刊の趣旨
 1967年から1968年にかけて行われた看護学校教育課程の改正に伴って,新しく「成人看護学」という科目が設けられた。
 本教科のねらいとするところは,「看護の基礎理論としての知識・技術・態度を理解し,これを応用することによって,病気をもつ人の世話あるいは健康の維持・増進を実践・指導し,看護の対象であるあらゆる人の,あらゆる状態に対応していくことができる」という,看護の基本的な理念を土台として,「成人」という枠組みの対象に対する看護を学ぶことにある。
 したがって,看護を,従来のように診療における看護といった狭い立場からではなく,保健医療という幅広い視野のなかで健康の保持・増進という視点においてとらえ,一方,疾患をもった患者に対しては,それぞれの患者が最も必要としている援助を行うという看護本来のあり方に立脚して学習しなければならない。
 本書「成人看護学」は,以上のような考え方を基礎として編集されたものである。
 まず「成人看護学総論」においては,成人各期の特徴を学び,対象である成人が,どのような状態のもとで正常から異常へと移行していくのか,またそれを予防し健康を維持していくためには,いかなる方策が必要であるかを学習し,成人の全体像と成人看護の特質をつかむことをねらいとしている。
 以下,「成人看護学」の各巻においては,成人というものの概念を把握したうえで,人間の各臓器に身体的あるいは精神的な障害がおこった場合に,その患者がいかなる状態におかれるかを理解し,そのときの患者のニーズを満たすためにはどのようにすればよいかを,それぞれの系統にそって学習することをねらいとしている。
 したがって,「成人看護学」の学習にあたっては,従来のように診療科別に疾病に関する知識を断片的に習得するのではなく,種々の障害をあわせもつ可能性のある1人ひとりの人間,すなわち看護の対象としての人間のあらゆる変化に対応できる知識・技術・態度を学びとっていただきたい。
 このような意味において,学習者は対象の健康生活上の目標達成のために,より有効な援助ができるような知識・技術を養い,つねに研鑽を続けていかなければならない。
 以上の趣旨のもとに,金子光・小林冨美栄・大塚寛子によって編集された「成人看護学」であるが,日進月歩をとげる医療のなかで,本書が看護学の確立に向けて役だつことを期待するものである。

カリキュラムの改正
 わが国の看護・医療を取り巻く環境は,急速な少子高齢化の進展や,慢性疾患の増加などの疾病構造の変化,医療技術の進歩,看護業務の複雑・多様化,医療安全に関する意識の向上など,大きく変化してきた。それに対応するために,看護教育のカリキュラムは,1967~1968年の改正ののち,1989年に全面的な改正が行われ,1996年には3年課程,1998年には2年課程が改正された。さらに2008年にも大きく改正され,看護基礎教育の充実がはかられるとともに,臨床実践能力の強化が盛り込まれている。

改訂の趣旨
 今回の「成人看護学」の改訂では,カリキュラム改正の意図を吟味するとともに,1999年に発表され,直近では2017年に改定された「看護師国家試験出題基準」の内容をも視野に入れ,内容の刷新・強化をはかった。また,日々変化する実際の臨床に即し,各系統において統合的・発展的な学習がともに可能となるように配慮した。
 序章「この本で学ぶこと」では,事例を用いて,これから学ぶ疾患をかかえた患者の姿を示した。また,本書で扱われている内容およびそれぞれの項目どうしの関係性が一見して把握できるように「本書の構成マップ」を設けている。
 第1章「呼吸器の看護を学ぶにあたって」では,系統別の医療の動向と看護を概観したあと,患者の身体的,心理・社会的特徴を明確にし,看護上の問題とその特質に基づいて,看護の目的と機能が具体的に示されている。
 第2~5章では,疾患とその医学的対応という視点から,看護の展開に必要とされる医学的な基礎知識が選択的に示されている。既習知識の統合化と臨床医学の系統的な学習のために,最新の知見に基づいて解説されている。
 第6章「患者の看護」では,第1~5章の学習に基づいて,経過別,症状別,検査および治療・処置別,疾患別に看護の実際が提示されている。これらを看護過程に基づいて展開することにより,患者の有する問題が論理的・総合的に理解できるように配慮されている。今改訂で新設した「A.疾患をもつ患者の経過と看護」では,事例を用いて患者の姿と看護を経過別に示すとともに,関連する項目を明示し,経過ごとの看護と,疾患の看護などとの関係を整理した。
 第7章「事例による看護過程の展開」では,1~3つの事例を取り上げ,看護過程に基づいて看護の実際を展開している。患者の有するさまざまな問題を提示し,看護の広がりと問題解決の過程を具体的に学習できるようにしている。
 また,巻末には適宜付録を設け,各系統別に必要となる知識を整理し,学習の利便性の向上をはかった。
 今回の改訂によって看護の学習がより効果的に行われ,看護実践能力の向上,ひいては看護の質的向上に資することをせつに望むものである。ご活用いただき,読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。

 2018年11月
 著者ら

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序章 この本で学ぶこと(梅村美代志)
 呼吸器疾患をもつ患者の姿
 本書の構成マップ

第1章 呼吸器の看護を学ぶにあたって(梅村美代志)
 A 医療の動向と看護
  1 肺がん
  2 慢性閉塞性肺疾患
  3 結核
  4 インフルエンザ
 B 患者の特徴
  1 身体的問題
  2 心理的・社会的問題
 C 看護の役割
  1 身体的な問題への援助
  2 心理的・社会的な問題への援助
  3 残存機能の維持と在宅療養への支援

第2章 呼吸器の構造と機能(川村雅文・浅野浩一郎)
 A 呼吸器の構造
  1 肺の構造
  2 気道のクリアランス
  3 気管・気管支の構造
  4 縦隔の構造
  5 肺と胸郭・胸腔・胸膜の関係
  6 横隔膜
 B 呼吸の生理
  1 呼吸調節
  2 換気運動
  3 ガス交換
  4 酸塩基平衡

第3章 症状とその病態生理(長谷川直樹)
 A 自覚症状
  1 咳嗽
  2 喀痰
  3 血痰・喀血
  4 胸痛
  5 呼吸困難
 B 他覚症状
  1 チアノーゼ
  2 ばち指
  3 発熱
  4 呼吸の異常
  5 声の異常
  6 いびき
  7 意識障害

第4章 検査と治療・処置(浅野浩一郎・長谷川直樹・川村雅文)
 A 診察と診断の流れ
  1 問診
  2 身体所見
  3 検査
 B 検査
  1 血液検査
  2 喀痰検査
  3 咽頭ぬぐい液・鼻腔ぬぐい液検査
  4 胸水検査
  5 画像診断
  6 内視鏡検査
  7 生検
  8 呼吸機能検査
  9 睡眠時呼吸モニタリング
 C 治療・処置
  1 吸入療法
  2 酸素療法
  3 人工呼吸療法
  4 呼吸リハビリテーション
  5 気道確保
  6 胸腔ドレナージ
  7 呼吸器外科の手術

第5章 疾患の理解(長谷川直樹・浅野浩一郎・川村雅文)
 A 感染症
  1 かぜと急性気管支炎
  2 インフルエンザ
  3 肺炎
  4 結核
  5 非結核性抗酸菌症
 B 間質性肺疾患
  1 原因不明の間質性肺炎
  2 サルコイドーシス
  3 好酸球性肺疾患
  4 過敏性肺炎
  5 塵肺
  6 膠原病に伴う肺病変(間質性肺炎)
  7 薬剤性肺炎
  8 放射線肺炎
 C 気道疾患
  1 気管支喘息
  2 気管支拡張症
  3 慢性閉塞性肺疾患
 D 肺循環疾患
  1 肺血栓塞栓症
  2 肺高血圧症
 E 呼吸不全
  1 呼吸不全の病態生理
  2 急性呼吸窮迫症候群
  3 肺性心
 F 呼吸調節に関する疾患
  1 過換気症候群
  2 睡眠時無呼吸症候群
 G 肺腫瘍
  1 良性腫瘍
  2 悪性腫瘍
 H 肺・肺血管の形成異常
  1 肺分画症
  2 肺動静脈瘻
 I 胸膜・縦隔・横隔膜の疾患
  1 胸膜の疾患
  2 縦隔の疾患
  3 横隔膜の疾患
 J 肺移植
 K 胸部外傷
  1 肋骨骨折
  2 横隔膜破裂
  3 肺損傷
  4 気管・気管支損傷

第6章 患者の看護(梅村美代志)
 A 疾患をもつ患者の経過と看護
  1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の経過と看護
  2 肺がん患者の経過と看護
 B 症状に対する看護
  1 咳嗽・喀痰のある患者の看護
  2 血痰・喀血のある患者の看護
  3 胸痛のある患者の看護
  4 呼吸困難のある患者の看護
 C 検査を受ける患者の看護
  1 内視鏡検査を受ける患者の看護
  2 肺組織の生検を受ける患者の看護
 D 治療・処置を受ける患者の看護
  1 吸入療法を受ける患者の看護
  2 酸素療法を受ける患者の看護
  3 人工呼吸器を装着する患者の看護
  4 気管切開を受ける患者の看護
  5 胸腔ドレナージを受ける患者の看護
  6 手術を受ける患者の看護
 E 疾患をもつ患者の看護
  1 肺炎患者の看護
  2 結核患者の看護
  3 気管支喘息患者の看護
  4 慢性閉塞性肺疾患患者の看護
  5 肺血栓塞栓症患者の看護
  6 急性呼吸窮迫症候群患者の看護
  7 睡眠時無呼吸症候群患者の看護
  8 肺がん患者の看護
  9 自然気胸患者の看護

第7章 事例による看護過程の展開(梅村美代志)
 A 慢性閉塞性肺疾患の急性増悪により緊急入院した患者の看護
  1 患者についての情報
  2 看護過程の展開
 B 肺がんの胸腔鏡下手術を受ける患者の看護
  1 患者についての情報
  2 看護過程の展開

参考文献
呼吸器領域でよく用いられる略語・記号
索引

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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    2022.11.29