標準小児外科学　第5版

第5版序
編者ら

　1985年に標準小児外科学の初版が上梓されて以来，改訂が重ねられ，今回第5版が刊行されることとなった。その間に22年の歳月が流れ，小児外科医療を取り囲む環境も大きく変化した。画像診断の進歩，出生前診断症例の増加，移植医療の定着，内視鏡下手術などminimally invasive surgeryへの移行，小児悪性腫瘍の遺伝子解析による予後判定など枚挙にいとまがない。
　しかし新生児外科や悪性腫瘍の治療成績に改善がみられる一方で，新たな問題も発生している。出生前診断の普及に伴って極小・超未熟児，染色体異常，多発奇形などの重症例が治療対象に組み込まれ，新生児手術成績には鈍化がみられる。また小児外科医が治療法の選択をめぐって倫理的な判断に迫られる局面も増えてきた。治療によって長期生存を得た悪性腫瘍患者の不妊症や胆道閉鎖症患者の出産など，小児の範疇を越えて成育医療の視点も必要になってきた。一方，社会からは小児救急医療への要請が強まり，小児外科専門医といえども急性腹症，外傷などcommon diseaseへの対応を迫られている。
　今回の大改訂に臨み，編者らは先ず医学生のための教科書であることに重点を置き，コアカリキュラムや国家試験出題基準の項目を網羅しているかどうかを検討し，不足している部分を補足した。また本書は，初版からの伝統を継承して，研修医や小児外科スタッフにとっても役立つようupdateな情報を盛り込んだ。
　今回の主な改訂内容は以下の通りである。
1）疾患の各論の冒頭に「学習のポイント」を設け，理解すべき重要事項を箇条書きに整理した。
2）2色刷りとし，写真，イラストを増やし，ビジュアル面での充実を図った。
3）今後の発展が見込まれる胎児治療の項目を加えた。
4）旧版で欠落していた食道裂孔ヘルニア，胎便性腹膜炎，包茎の項目を補足した。
　本書は，第一線で活躍する小児外科医達の分担執筆で構成されている。編集にあたっては，執筆者の個性的な部分をできるだけ抑え，全体的な統一を図ることに最も腐心した。執筆者とは度重なる意見交換を行い，不躾ながらいろいろと改変をお願いした。しかしながら改めて読み直してみると，執筆者それぞれの個性は光輝いており，不思議と本書を魅力あるものにしている。編集段階での数々のご無礼をお詫びするとともに，改変を快く受け入れていただいた執筆者の方々に感謝の意を表したい。また監修者として数々の貴重なご意見を頂いた岡田　正先生に深甚の意を表したい。
　本書がこれまでの版と同様に，医学生，研修医，小児外科スタッフの教科書ないし参考書として活用されることを切望してやまない。
　2007年4月

第5版序
初版序

1 小児外科概論
2 手術前後の処置
3 出生前診断
4 麻酔および手術中の管理
5 内視鏡下手術
6 顔面・頚部
7 肺・気管・胸壁
8 心・大血管
9 食道
10 横隔膜
11 胃・十二指腸
12 小腸・大腸
13 消化管閉鎖症・狭窄症
14 消化管重複症
15 直腸・肛門
16 肝・胆・膵
17 脾・門脈
18 腹壁・臍および鼠径部
19 小児腫瘍
20 小児外傷
21 結合体
22 泌尿器生殖器
23 脳神経系
24 移植

付録
　1. 乳児（男子）身体発育パーセンタイル曲線
　2. 幼児（男子）身体発育パーセンタイル曲線
　3. 乳児（女子）身体発育パーセンタイル曲線
　4. 幼児（女子）身体発育パーセンタイル曲線
　5. 体重・身長から体表面積を算出する
　6. カウプの指数
　7. 日本人のビタミン所要量
　8. 無機質（ミネラル）所要量
和文索引
欧文索引

本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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